202話 筑波学園都市シェルターから①
和歌山と愛知から無事に家族を連れ帰る事が出来た。
『説明』と言う高難易度の試練は、俺はキヨカに、タウさんは有希恵さんへとスライドした。(丸投げしたとも言う)
西側(名古屋)にブックマークが出来た。
これは岡山のゴンちゃんの元に向かう時の助けになる。しかしゴンちゃんからは一向に連絡は来ない。
念のため、俺のスマホ(古い方)も見て貰ったがゴンちゃんからの連絡はなかった。
てか、俺ってゴンちゃんから連絡先もらった覚えがないぞ?異世界からの帰還を決めた後は慌しかったから帰還前にゴンちゃんに連絡出来なかった。
でもタウさんらはゴンちゃんと連絡先を交換したんだよな?
「やはり通信が繋がらないのが原因でしょう」
「カンさんが作ったあの小型基地を持っていっても?」
「せめて、神戸……姫路あたりに置ければ、もしかすると……いや、遠いですね」
「大阪、神戸は津波の被害が酷そうだよなぁ。瀬戸内海もどうなんだろうな」
「行くとしたら船で上側、鳥取か島根上陸での山越えだな。これからの季節は厳しそうだ。火山灰の他に雪もあるだろう」
「濱家さんは確か広島でしたよね。いずれその辺りを訪ねるにしても今は北海道の拠点を優先したいですね」
「そう言えば、この時期にまだ北海道に雪が降らないのは不思議ですね」
やはり世界の気候は狂い始めているのだろうか。……すみません、世界の気候とか言って、よくわかっていないのに偉そうでした。
洞窟拠点で親戚への対応はスルーしつつ、細かいあれこれを済ませた。
春ちゃんと良治達から『ハケンの砂漠』に加入申請が来たので承認をしておいた。良治はナイト放置でセカンドのエルフを育てると言っていた。
良治の孫の朝陽は火エルフだった。男の子だよなぁ。前衛系に憧れるやつだな。良治は土エルフ、春ちゃんは水エルフを作った。まだ8歳の湊斗はドラゴンナイトを作りたがったが、ファーストはエルフにしろと説得をしたそうだ。
マルクは朝の牛久大仏ツアーのガイドを頑張っていた。それとエントの水やりだ。翔太は子供達のリーダーなってるようだ。憲鷹達は最近別の事で忙しいようだ。子供でも高校生くらいの年齢で集まっているらしい。
ミレさんはサーバーの様子の確認、タウさんは拡張した洞窟の部屋造りだ。
タウさんが名古屋から連れてきた職場の部下(?)に、大工スキルを期待しているらしく、夜はゲームのレベル上げ、昼間はタウさんの手伝いをさせているらしい。結構スパルタと聞いた。
そして何故か欠かさずに俺の『整体&大仏ツアー』に全員参加をさせている。因みに、うちの親戚である春ちゃんと良治と芳樹と尚樹も参加している。
大仏の足元で、ラジオ体操のような太極拳のような変なダンスをしている。(生活スキルの練習だそうだ)
芳樹の子の朝陽と湊斗はエントの水やりクラブに入ったそうだ。
アネとゆうごから、北海道の現在稼働している駐屯地には全て話は通したと報告があった。
後は小型基地の完成を待ち、電波が繋がる位置へと置いていくだけだ。
北海道は俺の想像通り(?)に広く、小型基地が15以上は必要だそうだ。カンさん、頑張ってくれ。応援とヒールを送った。
そう言えば、ミレさんの親族はどこに居るんだろう。
カンさんはここ茨城、俺は和歌山から連れてきた。タウさんは愛知から。アネさんは神奈川だ。ゆうごは函館から友達を連れてきた。
ミレさんは埼玉……だよな?
気になったので聞いてみた。今ならカンさん待ちで時間がある。攫いに行くなら飛ぶぞ?
しかしミレさんからは必要ないと返事をもらった。
「俺は妹の芽依と姪っ子の真琴が唯一の親族だな。他はいない。仕事仲間も特に親しくしてなかったしな。元々の埼玉県民でもなかったから地元愛もないな。親の代に田舎から埼玉に上京したらしいんだが、俺と芽依が学生の頃にお袋は亡くなった。親父は居ない方がマシな部類だった。芽依の旦那も俺の元妻も縁が切れて良かったって相手だ」
「そっか、うん、そうか」
ミレさんはさらりと笑いながら話してくれた。ミレさんも大概な人生を乗り越えてきてるんだな。
誰もが幸せな一家ではないって事か。
そうこうしているうちに予定の小型基地が完成して、俺たちは北海道へと旅立った。
『基地』を置く場所はタウさん達が決めた。俺は言われたらブックマークの場所へ、皆を連れて飛ぶだけだ。
『基地』の配置が進む度に、自衛隊の駐屯地からスマホやパソコンへと連絡が入るようになった。
届ける物資以外にミレさんが何処かから調達した複数のパソコンも置いて回る。
駐屯地の自衛隊員がLAFを出来るようにだ。
まずは、エントと敵対しない事、エントが味方になれば魔植への防壁になる。
運良くリアルステータスが出ればアイテムボックスが使える。それにもしかしたら何かのスキルが発生するかもしれない。なので絶対にゲームはしておくべきだ。
テレポートスクロールは無いが、架空ブックマークはし続けた方が良いと伝えた。いつか役立つかもしれない。
それから『生活魔法』、いや、生活スキルの練習な。これは大事。何しろ、茨城の洞窟拠点の避難民の、特に積極的に行ってた子供らがそのスキルを使えるようになっているからだ。
これは毎日行って欲しい。朝のラジオ体操の感覚だ。
俺やマルクがやって見せても、所詮はステータス有りの魔法スキル持ちだと思われてる節がある。
なので、駐屯地から各2名をピックアップして、朝のエントの水やりを見学させた。
小学生から高校生までの子供達が、手を突き出してエントに水をやってるのを見た隊員は雷に打たれたようになっていた。
なんだよ、俺らが見せた時は「へぇ」くらいだったくせに。
「あのっ、動画撮影は可能でしょうかっ!」
「お、おう、どうぞ?」
隊員達は子供らの水やりをスマホで動画に撮って持ち帰っていた。
だから、俺達、現場で生で見せたじゃんよ?手品とでも思ってたんか?
聞いた話だが、その後の隊員達の朝の訓練(生活スキル)の力の入りようは凄かったらしい。声だけ聞くと、空手か合気道の訓練かってくらいの勢いだったらしい。
……もっと力を抜いた方が良いと思うぞ?子供達の生活スキル訓練を動画に撮って送ってやった。
フニャフニャとゆるキャラのような力の抜けた踊りをしてたw
が、送ってから後悔した。子供だから可愛いが、あれを自衛隊員が…………。見てはいけないヤツだ。スマン。
道内の自衛隊駐屯地では、お互い連絡が取れるようになり、地上の救助にも熱が入り始める。
獣や魔物化した獣が出た場合、住民の元に自衛隊が駆けつける事が出来るようになってきた。
LAFでエルフキャラを作る事でエントと仲良くなり、エントは魔物植物の侵入を防いでくれる。それぞれの避難民から少数ずつ駐屯地でLAFに触れさせているようだ。グッジョブ!やはり動ける人が多いと助かる。
俺達だけじゃとてもじゃないけど、手が回らない。
エントと仲が良くなる事でたまに枝をもらえる民間人も出てきている。
生活スキルで手から水を出すと高確率で枝を貰えるが、普通の水道水や井戸水だと、そこまでお礼をくれないらしい。
駐屯地ではLAFの説明、エルフ作成の他に生活スキルの映像を見せて、『生活体操』を拡めているそうだ。
まさか…………、あの、ダンス。
俺たちは大雪山を背に、富良野と旭川の間、びえい?びえいって所からトラムシ……トラウシム???北海道は地名が難しいな、その山を背に拠点を造る事になった。(正:美瑛 トムラウシ山)
カンさんちの裏山のように元から洞窟があった場所ではないので、そんなに大きな拠点は造れないそうだ。
ただ、大陸の真ん中であるし後ろには山があり、津波の警戒はいらないだろう。
高さよりも、やはり地下へと展開をするそうだ。
「茨城の洞窟拠点のような巨大なものは無理ですね。とりあえずは何かあった時に身内だけでも避難させたい、そのくらいの広さを複数造って行きたい」
「つまりは小型のシェルターのような感じですね」
「なるほど。そもそも茨城の避難民を全員、俺たちが責任を持って今後も安全確保し続ける義務はないしな。今、避難出来てるだけでも十分な対応だと思うぞ」
「出来れば今後は、国や地方の自治体へお任せしたいですね。まぁ、それが機能していないので私達が手の届く範囲で頑張っていますが」
「道内は駐屯地の自衛隊だけでなく、地上で連絡がついた消防や警察も動いてくれてるみたいです。それだけでなく地元民も」
「凄いよなぁ。北海道って土地がデカいだけでなく人の器もデカいのかな」
「カオるん、言わないであげてください。人は適材適所、出来る人が居て出来ない人も居る。今までやる機会が無かった人も今後は動かざるをえないでしょう」
「殺る機会……」
「まぁ、俺も出来ない事が多いからあまり言えんけど、それでもいいのかな。おんぶに抱っこは良くないけどな……、あ、俺をおぶってくれた人にはちゃんとヒールでお返ししよう」
小型のシェルター拠点は数日で完成した。と言っても頑張ってるのはタウさんとカンさんのふたり、そこにミレさんが何かを設置。
ゆうごとアネは周りの敵を殲滅。最初は俺も付いて行ったがDEとKNのスピードにWIZが着いて行けるわけがない。大人しく留守番だ。
マルクとキヨカの3人で畑を作った。
ここは茨城の洞窟と違い、地面がそれほど硬くない。勿論拠点はカンさんの精霊の力で固めてある。
しかし、地面自体は柔らかい。ので、地下に庭を造って貰った。
天井は崩れないようにして、照明はライト魔法だ。そこにエントさんを一体招き入れたら、地面の下からモコモコと数体が頭を出した。
それほど天井は高くないので、エントは身体の半分以上は地面に潜ったままらしい。
その状態でも魔法の灯りは好きらしい。外はあまり太陽の陽が当たらないからな。そして生活スキルの水やり。
地面に作った畑に野菜を植えてみた。どこかのホムセから獲ってきた種を植えた。育て方がわからなかったので、洞窟拠点の政治叔父さんに聞いてみた。
「連れていけ」
叔父さんから言われたのでタウさんの許可を得て、政治叔父さんに畑を見てもらった。
養老の砂漠のメンバーも何故かついてきた。
暫くはそこで畑の世話をしながらエントから枝を貰い、作業をするそうだ。
……あの、茨城の拠点はいいんですか?
養老の血盟主にそう聞いたが「問題ない」と言われた。まぁ何かあったら念話で連絡をくれればすぐに迎えにくるから。
政治叔父さんはまだリアルステータスは出ていなかったが、養老のメンバーはステータスが表示されていたので、フレンド登録をした。
マルクも育てたい種を政治叔父さんに渡していた。




