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200話 こっちでも迫る危機⑤

 --------(タウロ視点)--------



『おじさんっ、おじさんおじさん助けて!母さんが死んじゃう!』



 スマホから義甥っ子の晃の切羽詰まった声が聞こえた。



「晃くん、落ち着きなさい。何があったか説明を出来るか?」



 スマホの向こうで義甥の晃の泣き出した声が聞こえた。



「もしもし? 晃くん? 橙子さんは居ないのか?大輔さんは?」


『もしもし!創一さんかっ、晃、スマホをこっちに…』

『おじさんっ、おじさん、母さんがゾンビに噛まれた! それで血が止まんない、どうしよ、助けて!』

『晃、スマホを貸しなさい。もしもし、創一さん?大輔です。今どこからですか? こっちは危険だ、こっちに来ないようにしてく…』

『ヤダっ!ダメ! おじさん、助けて!母さんが死んじゃう』


「わかった、わかったから落ち着いて。晃くん、大輔さん、こちらは今名城の自宅まで来ています。直ぐにそちらに向かいます。今はどこに居ますか?名城公園の避難所ですか?それともお義父さんの会社に?」


『家に居る!』

『晃、黙りなさい、創一さん、こっちは危険です。信じられないかも知れませんがゾンビのようなバケモンがいる』



 私の愛知の自宅は名城公園のそばだった。そこに自宅と建築事務所があった。


 その自宅からそれほど遠くない所に妻の父が住んでいる屋敷がある。お義母さんは既に鬼籍で、大きな屋敷はお義父さんの他は住み込みの家政婦さんと仕事関係の部下である若者達が下宿していた。


 妻の妹一家は、ここから7〜8キロの所にある熱田神社の近くに住んでいた。

 その近くには義父の会社やらマンションがあった。


 そして以前から、災害時には名城公園で落ち合う手筈になっていた。なのでこの災害が始まり、避難所もしくはここから近い義父の家へ皆が集まっていると思ったのだ。


 まさか義妹の橙子さん一家がまだ熱田の方に居るとは思わなかった。


 フェリーで愛知県の豊橋辺りに上陸してそこで一晩過ごした後、私達は名古屋を目指して移動した。

 車で進むのを諦めて馬での移動になった。メンバーは私、カオるん、マルク君、ミレさんの四人だ。残りは途中の大型スーパーで待機していた。



 ゲームアイテムの馬のおかげか、思ったより早くに名古屋入り出来た。

 自宅前に到着してブックマークをした後、カオるんに残ったメンバーを連れて来てもらった。


 その間に妻の妹の橙子さんに連絡をとった。ミレさんが持ってきた小型基地は本当に便利だ。

 愛知県内に居る橙子さんのスマホに繋がった。


 が、スマホに出たのは義甥の晃で、しかも混乱した状態であった。近くに父親の大輔さんが居たのか揉めている声がしてから大輔さんへと変わった。


 どうやら橙子さんがゾンビ犬に噛まれたのか、酷い怪我を負ったようだ。

 今のスマホでのやり取りを聞いていた仲間達は直ぐに状況を飲み込んだようだった。



「俺たちはここで待機してます。タウロさん達は馬で急いでください」


「タウさん、急ごう。妹さんちはここからどんくらいだ?」


「はい、ありがとうございます。ここからですと8キロ弱です。車ですと20分くらいでしょうか」


「馬でもそんくらいか。カオるん、ポニー太はしまってマルクと相乗りしろ、その方が速い」


「おう、そうだな。マルク、頼む」


「わかった!父さん」


「加瀬さん達は私の家の中で待機をしていただけますか?外に居るよりは安全だと思います。隕石直前から今まで放置でしたのでかなり埃っぽいですが」




--------(カオ視点)--------



 タウさんは玄関の鍵を開けてカセ達を中へ招き入れていた。


 それにしてもオシャレな家だ。何て言うんだっけか、建売住宅じゃないやつ……デザイナーズマンション、いや、マンションじゃないか。流石、名古屋は都会だ。


 そう言えばタウさんの職業は大工だった。もしかして自分で建てたのか?

 何て事を考えていたらタウさんが出てきてすぐに出発になった。


 先頭はタウさん、その後にマルクと俺、しんがりがミレさんだ。結構なスピードで荒れた街中を走った。

 タウさんから念話が飛んできた。



『カオるん、ミレさん、マルクくん。今から向かう先はゾンビ犬がいるようです。十分に注意をしてください。それからカオるん、義妹家族がゾンビ犬に襲われたようです』


『うん、わかってる。着いたら直ぐにヒールだな』


『ええ、それと、人間がゾンビ犬に噛まれた時の影響がどう出るのか、わかっていません。ゲームでは……いえ、LAFにはゾンビ犬はいませんでしたし、闇の荒地やダンジョンでアンデッドの攻撃を受けてもアンデッド化する事はありませんでした』


『もしも…、その、アンデッド化してたら、ターンアンデッドしていいんか?』


『そうですね。その時は申し訳ありませんがお願いします。ただその前に、派遣魔法を試していただけますか?』


『ん?派遣魔法?』


『ああ、あれか。カオるん、あっちの世界で隣の国にアンデッド退治に行っただろ?あん時使った魔法だ』


『ああ、浄化だな……ええと、あった。"清掃"だった』


『ええ、その清掃を使ってもらい、効果を確認出来れば……』


『感染してないといいね、タウロおじさん』


『そうですね、マルク君。それが一番です』



 タウさんが馬のスピードを落としたと思ったら、一軒の家の前で止まった。

 馬、速いな、もう着いたのか。


 降りて、それぞれが馬を収納した。右上のマップに赤が見えたのでマップを広げた。

 タウさんやミレさんもマップを見ているようだ。



「結構、広範囲にいるな。魔植なのかゾンビ犬なのか」


「ええ、でも動きは緩慢のようですね」


「この家の中にはいないみたい。黄色が四つ」


「と言う事は、まだアンデッド化はしていない、のか、それともゾンビ犬に噛まれても感染はないのか。とりあえず急ぎましょう。出血が酷いと言っていました」

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