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20話  その日がとうとうやって来た(第三者視点)

 ジリリリリリリ パフォーパフォーパフォー



 朝からトイレの個室に腰掛けてスマホをいじっていたら凄い衝撃と同時に館内の防災ベルが鳴り始め、追いかけるようにスマホからアラートも鳴りだす。



 ひゃっ、何?地震?


 慌ててトイレの個室から出ると隣の個室から同じフロアの同期の子が飛び出してきた。


 カタカタと小さく揺れ続けているのはビルではなく自分の足なのだろう、ビルはゆり籠のようにゆっくりと横に揺れていた。

 同期と顔を見合わせ慌てて、しかしヨロヨロと事務室へと向かった。



 フロアへ入る扉は押し曲がった状態で廊下に転がっていた。

 お互いが支え合うように身体を寄せ合って事務所へと入ると、まず目に入ってきたのは血まみれで倒れている人だった。


 大きな窓はガラスが無くなっていて、薙ぎ倒された棚や机に刺さっていた。……、人にも。



 ど、どうしよう。



「ねぇこれ、地震? これさっきの地震?」


「え、あ? どうしよ、誰か…」


「ね、これ地震なの? 地震でこんなになるの」


「た、助けなきゃ、どこに電話、あ、誰か、どうすれば」


「ねえ! これ隕石じゃないの!」


「知らないよ! 何でもいいよ! どしたらいいの、助けてを呼ばなきゃ」


「そんな場合じゃないよ! 隕石でも地震でも津波来るよ! ここ4階だから逃げなきゃ、もっと上に」


「で、でででも、みんなを助けなきゃ」


「無理だから! 助けたかったら好きにしなよ、私は上に逃げる」


「ま、待って、待ってよ、私も……」





 はあはあ、はあ。



「何階、はぁはぁ、もう10階くらいまで来た? ここまで来れば……」


「まだ、7階」



 扉の横の壁に大きく『7F』の文字。

 突然、その非常扉が勢いよく開き、人が飛び出てきた。



「津波だ! 水が上がってくるっ、窓、窓のすぐ下まで来てるぞ!」


「上へあがれえええっ」


 扉から人がどんどんと出てきて非常階段はあっという間に人で溢れた。

 私達は7階から出てきた人に揉まれながら階段を上がる。


 8階の扉からも人が出てくる。

 人を押すように水が8階の廊下から非常階段へと流れ出てくる。



「水だああ」

「早く登れ!」

「水がきたぞおお」



 8階の扉から出てくる水は階段を下へ流れ落ちていくが、あっという間に階段の水位が上がってきて、水は合流し、水位は8階へとジワジワ上がり始めているのが見えた。


 皆押し合いながら上へと上がるが10階、11階と非常階段の扉が開き、人が階段へと溢れ出てくるせいで進みが遅くなる、それと反して水位の上がりはどんどんと早くなっていった。



 水が……、9階まで?

 津波なんて経験した事ない。東京で生まれてずっと暮らして来たけど、今まで一度も無かった。東日本の時も交通が全てストップする大地震だったけれど、ここらは津波の被害は無かった。


 ビルの9階まで来るって……、相当な大地震?もしかしてさっきの衝撃は何とかトラフとか言う地震?


 前後に人に揉まれて階段を登り汗をかいているはずなのに、何故が血が下がるような寒気感じた。

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