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197話 こっちでも迫る危機②

 東京へ行った伯父さん達と、連絡は途絶えたままだった。



 街は復旧どころか、酷くなる一方だ。俺は家と、時々倉庫へ行くくらいだ。



「外は危険だからひとりでは行くな、行くなら俺も一緒に行く」



 そう言って父さんとふたり、爺ちゃんの会社の倉庫へ物資を取りに行く。

 最近は道路に火山灰が積もり始めて車では行けなくなった。歩きでも5分程度の場所なので問題はない。



「お父さんのとこに合流した方がいいかしら……」



 最近めっきり近所から人が減った。皆、食べ物を求めて避難所へ移動しているらしい。

 けれど避難所も物が不足し始めて、結局、避難所を梯子する人が増えているそうだ。


「そうだなぁ、自治体の配給も止まった。この先、どうするか……」


「暴漢や強盗も増えているみたいで怖いわね」


「やはりお義父さん達と合流するか」


「歩いていけるかしら……」



 俺はその時リビングに居た。梓が自室に篭ってるからリビングに居れる。

 祖父ちゃんの倉庫、会社はここから徒歩5分、火山灰で歩きにくくても10分あればつける。



「歩いて10分もかからないじゃん」


「あそこはお祖父ちゃんの会社で、お祖父ちゃんの家は名城公園の方よ」



 そうなんだ?あの会社の横にあるマンション、そこの祖父ちゃんちに遊びに行った覚えが………、あ、でもそうか、正月に親戚が集まるデカイ家は名城公園の方だった。



「お父さんの居る家は、名城公園のそばのおうちで、こっち、熱田神宮にあるのはお父さんの建設会社や倉庫、それと社員寮のマンションね。最近はマンションをよく利用していたから晃は勘違いしたのね」


「創一さんの建築事務所は今どうなってるんだ?そっちも連絡はつかないままだな」


「伯父さんの会社は祖父ちゃんとことは別なの? 婿入りしたのに?」


「ああ、婿入りしても創一さんは自分の建築事務所を立ち上げたんだ。あの人は本当に只者じゃないよな。お義父さんの会社の専務をしながら自分の会社もやりくりしている。それで晃を遊びに連れ出してもくれていたからなぁ」



 ええと、うちが熱田神宮の近くで、ここから近いとこにあるのが祖父ちゃんの会社と倉庫とマンション。

 名城公園の近くが、祖父ちゃんの家と伯父さんの家と叔父さんの事務所……と。


 それで祖父ちゃんちで合流するには、ここ熱田神宮から名城公園まで歩いて行かないといけない。

 ここから名城公園まで7〜8キロあったよな?徒歩は無理じゃないか?



「2時間以上かかりそうねぇ。お父さんのところへ行くのは無理かしら」



 母さんがそう呟いた時、リビングへ梓が飛び込んで来た。



「ねえねえ!スマホが通じる! 電波が通じるよ? 復旧が始まったんだね!」



 俺は慌ててリビングを出て部屋へと退散した。梓が俺を見つけるとまた難癖つけるにきまってるからな。


 俺は直ぐにパソコンを立ち上げた。繋がらなくなって諦めて最近はずっと閉じていた。


 本当だ。Wi-Fiが立ってる。……が、知らないフリーWi-Fiだ。いつも使ってるうちのは『未接続』のままだ。

 いつも見ていたネットを開くと、繋がる事に気がついた人達の書き込みが凄かった。


 救助を求めるスレがどんどんと立っていく。

 どれを見ても「助けて」「食べ物がない」「死にそう」が殆どだ。

 そうだよな、みんな同じ状況だよな。


 その中で変わったスレタイトルがいくつか目に止まった。


『木が歩いてる』

『ゾンビ犬現る』

『ゾンビ出た』


 うん、世紀末に出そうな話題だ。けど、この大災害って世紀末なのか?意外と普通に人間は生き残ってるよな?まぁ救助待ちなので、救助が来なかったらアウトなんだけど。


 スレもバカにしたり笑い飛ばす書き込みが多かった。それと『こんな時に不謹慎だ!』と怒る書き込みも多い。

 そうだよなぁ、と思いながら見ていると、『歩く木』スレと『ゾンビ』スレがどんどんと増えていく。


 俺は、何かゾワっとした。

 この2年、ゾンビに備える準備をしてきたが、正直、本気ではなかった。

 普通でない世の中を想像して、いち早くそれに備える自分を楽しんでいた気がする。


 本当にくるとは思ってはいなかったよな?俺。


 目の前のパソコンを見る。どんどんと書き込みが増える。

 俺は、部屋の窓(雨戸)がキチンとしまっているのを確認した。


 他の部屋の戸締まりを確認しに行かねばと思った。

 2階は俺の部屋以外は客間がふたつとトイレだ。とりあえず客間の雨戸が閉まっているのを確認し、トイレの窓の鍵もしっかり閉めた。


 それから自分の部屋へ戻り、部屋の照明を消してからそっと窓を開けて、雨戸をほんの少し開き外が見える隙間を作った。


 そこからは木が見えた。が、ずっとうちにある柿の木だ。毎年柿が沢山なるのだが、今年は実がならなかった。寒すぎる夏のせいか火山灰のせいなのか。だが、あれはうちの柿の木だ。『歩く木』ではない。


 一応、隙間から見える範囲のうちの前の通りに、ゾンビ……ゾンビ犬?は居ない。うん、居ないな。



 1階の戸締まりにも行きたい。でも今は梓が居るよな……。リビングに入らなければ大丈夫だろうか。

 1階は、両親の部屋と梓の部屋、リビングとくっついたキッチン、それとトイレとバスルームだ。


 とりあえず、リビングと梓の部屋以外の戸締まりを確認してこよう。

 ゾンビ犬に入り込まれたら、階段とか普通に登ってこられそうだからな。

 俺は静かに1階へと降りて、両親の部屋とバスルーム、トイレの窓の鍵をしっかり閉めた。


 梓の部屋は、無理だ。入った事が知れれば、『JITOOH』が大暴れする。


 仕方なく2階の自室へ戻った。

 その後もパソコンでネットを続けた。そうだ!叔父さんにメールをしよう。俺はスマホは持っていない。なので、パソコンから叔父さんのスマホへメールを送った。


 良かった!伯父さんから返信が来た!

 何と伯父さんは今、愛知県内に居るらしい。豊橋あたりだと書いてあった。

 あ、母さん達もスマホで連絡をしたみたいだ。


 それから『とにかく家から出るな』とあった。

 もしかして伯父さんは、ゾンビ犬や歩く木の事を何か知っているんだろうか。直接電話したい。

 でも母さんにスマホを借りるにはリビングに行かないとならない。梓が部屋へ帰るまでは我慢だ。


 俺がネットのスレを読みながらベッドでうとうとしていたら、外から変な呻き声が聞こえて目が覚めた。


 夢じゃないよな?確かに聞こえたよな?

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