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193話 彼方此方で危機発生③

 俺たちは一旦和歌山へ戻った。


 山越えで奈良を突っ切るよりも船で三重県の沿岸沿いに伊勢湾をめざそうと言う事になり、和歌山に上陸した地『串本町』へとテレポートした。

 そこからまたフェリーで移動だ。


 左手側に見える三重県の沿岸はかなり削られてしまっていた。



「沿岸部に沿ってあったはずの道は無くなっていましたね」



 カセがデッキの手摺りに寄りかかり呟いていた。

 元の地形は知らないが、すぐそこに見えるのは山がゴリゴリに削られたような崖に面した海だった。



「あれじゃもう、ほぼ奈良県だよな」



 カセとクマはリアルステータスのマップを広げているようだ。宙を見て話していた。



「志摩……無くなってないか?」


「鳥羽も、な」


「いや、あそこ二見神社だ。残ってたのか」


「って事は、少し先が伊勢神宮か」



 伊勢神宮!俺が行きたかった場所だ。ずっと行きたかったけど和歌山方面へ向かうと思うと二の足を踏んでしまって、ずっと行けずに居た。

 世界がこんなんになって、行っておけばよかったと何度か思ったのだ。


 俺は振り返ってタウさんを探した。

 そうか、タウさんは操舵室かも知れん。そう思った時、デッキから中へ入る扉が開き、タウさんが出てきた。



「皆さん、操舵室へ集まっていただけますか?」



 ちょうどいい、皆が操舵室へ集まった。


 フェリーは湾より少し手前で止まっていた。湾の中は小島がごちゃごちゃとしており、ここから精霊ではなく河島が操縦するそうだ。


 フェリーを止めて地図を広げたテーブルに全員が集まった。




「さてと、どこを目指しましょう。上陸場所はどの辺にしますか」


「タウさんは愛知って言ってたけど名古屋だったよな?自宅も実家も名古屋か?」


「ええ、そうです」


「名古屋なら湾の最奥まで突っ込みましょう、そこから上陸ですね」


「愛知も動物園あったよな、確か東山動物園か。野生化もしくは魔物化してるだろうな」


「名古屋は大きな首都だ。人も多いでしょうね。つまりは『餌』も多い」



 そうか、和歌山でパンダゾンビが出たんだ。名古屋でも十分その可能性はあるな。……てか、茨城は大丈夫だろうか。山が多かったからなぁ。熊ゾンビ、鹿ゾンビも出てきそうだな。


 北海道なんてゾンビ大国じゃないか?野生の熊や鹿は人間より多そうだ。

 俺がゾンビに思いを馳せている間に方向が決まったようだった。



「まずは熱田神宮を目指したい。そこに妻の妹一家が居るはずです。それから名古屋城へ。名城公園に避難所があるはずです。災害時はそこを合流点にしていました。公園の近くに妻の実家や建築事務所があり仕事仲間がいました」


「わかりました。では、湾を最奥まで進み、そこから上陸します」



 話が決まりそうになって俺は慌てて口を挟んだ。今言わないと後悔すると思った。

 過去の俺なら口を閉じて我慢していただろう。


 でも、信頼できる仲間なら、それがダメと言われても思っている事は口に出そう。

 却下ならその理由で納得したい。



「タウさん、急ぐのは承知してるが、俺、あそこでブックマークしたい」



 俺が指差した方向を皆が見た。



「伊勢側の沿岸でブックマークをしたい。急ぎの案件が片付いたら伊勢神宮にお参りに行きたいんだ。だから今、このチャンスにブックマークをしておきたい」



「そうですね。私少し気が急いてました」



 タウさんは大きく息を吐き出した後に続けた。



「だいぶ日も傾き始めています。伊勢湾は元々小島が多く入り組んでいます。その上津波で流れこんできた瓦礫も多い。暗い中進むのは愚策です。まずは伊勢側でブックマーク、その後は愛知側に上陸して今夜はそこで野営をしましょう」



 皆が頷いた。

 フェリーは伊勢側へ進めそうなところまで進んだが、途中からボートへ乗り換えた。

 キヨカから渡された薬をバリバリと噛み砕き飲み込んだ。


 着いた場所でブックマーク、フェリーへ帰還して皆を連れて、皆も『伊勢』でブックマークを済ました。

 そしてフェリーへ戻った。


 フェリーは愛知側の上陸出来そうな場所を見つけて接岸した。



「この辺って、伊良子あたりだろうか」



 河島はリアルステータスが無いので紙のマップで確認をしていた。



「いや、豊橋……だな。ここら辺はなくなってるぞ?」



 紙マップとステータスマップを比べていたカセが、紙マップを指差して説明していた。

 それを覗き込んでいたクマが嫌そうな顔をした。



「うわっ、ここにも動物園ありましたよね」


「野生化か魔物化した象やライオンかぁ」


「夜は一旦拠点に戻りますか?」


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