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192話 彼方此方で危機発生②

 俺らがエントの水やりから戻ると、1階の居間に支度を終えた全員が揃っていた。



「洞窟ですが、雪美さん達の近くをキープしてもらいました。と言っても、多少歩きますが直線通路で4〜500メートルとの事です。1LDKタイプで4室並びと、2室飛んだ所にもうひとつ」


「キヨカ、ありがとう。政治叔父さん夫婦、良治夫婦、芳樹一家、尚樹夫婦、それと春ちゃんか」


「春さんは一旦、病院拠点の方へ入院されると思いますが、退院後の部屋も押さえておきました」


「そうだな。まずは病院で診てもらって……」


「香、薬だけ出してもらえるとこがあればありがたい。入院まではせんよ」


「もし差し支えなければ病名をお聞きしても?」



 俺が聞けずにいた事をタウさんが聞いてくれた。

 大丈夫だよね?30年生きてこれたんだから、今日明日に死ぬ病気じゃないよな?難病がよくわからないけど、棚橋ドクが治してくれるはずだ!



「ああ、心臓なんですよ。今は無理をしなければ普通に生活出来ます。村でも毎日歩いていましたし」


「春さん、薬切らしてるだろ?災害から病院へは行けんかったしな」


「なるほど。棚橋ドクターに連絡はしておきます」



 大丈夫なんか?

 棚橋ドクターって内科医だったよな?しかもウイルス専門じゃなかったか?

 心臓のどんな病気かわからんけど、…………ウイルス、ではない気がする。


 俺、大人になって全く病院にかかった事なかったからな。心臓って何科なんだ?

 心臓科……とか、だろうか?とにかく棚橋ドクターに任せるしかないか。



「あの、カオさん。カオさんのヒールでは治せないのですか?」


「うん、父さんのヒールは凄いからね!」


「いや、ヒールは怪我は治せても病気は治せんだろ」


「でも、筋肉痛とか腰痛は治せましたよね?」



 キヨカが食い下がってきた。確かに………、だが、痛み専門……、いや、『痛み専門ヒール』って何?


 ゲームを現実に当てはめると混乱するな。考えたら負けなやつだ。

 俺が頭を抱えて唸っているとマルクが俺のマントをくいくいっと引っ張った。



「父さん、魔法がダメならポーションは?」



 おお、その手があったか!上級ポーションならイケる気がする。そう思ったがタウさんから却下をくらった。



「カオるん、ヒールもポーションも効果は一緒のなずです」



 ぬぬぬ、そうだった。てか、ゲーム内でゲームキャラが病気になったりする事はないので、ソレ1択だったんだよなー。


 と、その時、ふと思い浮かんだ事があった。



「あ、アレ、エリクサーどうだろ? イベントで期間限定で入手した事あったよな? かなり前だけどアイテムボックスだから腐ってないよな?」


「エリクサー……、カオるん、持っているのですか?」



 俺は慌ててアイテムボックスを探った(検索した)。



「ある。10本。初回配布の分だ」


「流石はカオるん、何でも取っておくのが今回幸いしましたね」


「タウさんは持ってないのか?」


「皆、あのイベントで使い切りましたよ。エリクサー集めに雑魚狩りをして、ラストの龍退治でエリクサー連打でしたからね」


「あのイベントは高レベル向けだ。エリクサー集めの雑魚も俺にとっては強敵で1匹も倒せなかったからな。龍はカンタマ連打で参加してたが、龍の尻尾でペシャンコになってたからエリクサー使うタイミングがなかった」



 わははと笑う俺をタウさんらは苦笑いだった。


 俺は一本取り出したエリクサーを春ちゃんに差し出した。

 エリクサーは他のポーションと比べて、入れ物の瓶も高価そうな作りだった。

 大きさは酔い止めアンプルくらいかな。


 春ちゃんは俺から受け取ったソレの蓋を外すと、何の迷いもなくクイっと飲み干した。



 次の瞬間、春ちゃんの身体が黄金に輝き、その場に居た俺たちは眩しくて目を瞑った。



「ふぅ」



 春ちゃんのため息で目を開けると、キラキラはなくなり普通の春ちゃんがそこに立っていた。



「…………どうだ?」


「んー……、特に変わりはない。どうなんだろ? いや、いつもより息がしやすい気がする」


「そっか」


「カオるん、春さんにはやはり病院へ入っていただき検査をしてもらった方が良いでしょう」


「そうだな。じゃあまず病院へ、そこに春ちゃんを落として洞窟だな」


「茨城じゃなくて洞窟………?」



 テレポートの直前に尚樹の呟きが聞こえた。





 病院の入口前にテレポートした。人数が多いので外の方が良いと判断したのだ。

 診察棟へ向かい、待っていた看護師さんに春ちゃんを預けた。それからテレポートで洞窟へ。



 皆の驚きに今はゆっくり付き合ってはいられない。この後俺たちは愛知へ向かうのだ。

 俺の親戚を優先してもらったが、タウさんの親戚も心配だ。



 キヨカが彩さんに連絡をしていてくれたので、洞窟では雪姉さん達も待ってくれていた。

 政治叔父さん達と雪姉さん達が再会を喜んでいる間に俺たちは和歌山へとテレポートで戻った。






 後に聞いた話だが、政治叔父さんはなんと『養老の砂漠』へ入ったそうだ。

 検査後に洞窟へ戻った春ちゃんは良治達とLAFのレベル上げに精を出しているそうだ。




 勿論、心臓は完治していたそうだ。

 後に、棚橋ドクターから『エリクサークレクレ』攻撃を受ける事をこの時の俺はまだ知らない。

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