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178話 叔母を訪ねて⑤

 俺が思い出した住所を元に、その近くの避難所を訪ねる事になった。

 キャンピングカーでは通るのに苦労する道幅の住宅街で、車を2台に分かれて乗り換えた。



 程なくして避難所に到着した。

 ここは大学を避難所にしたようだった。しかし火山灰の多さから建物の中に避難しているのか、外に出ている者は少ない。


 入口らしき場所で人を捜している旨を伝えた。

 しかし、残念ながらこの避難所の名簿に叔母の名前は無かった。諦めて避難所を出ようとしたが、マルクが受付の男性に食い下がっていた。



「どうしても見つけたい人なの! 知ってる人が居ないか聞いてもらえませんか? お願いします! お父さんの叔母さんなの、この近所に住んでたんだって」



 いや、住んでいたのは25年以上前だからな。居なくて不思議はない。

 マルクを連れだそうと受付へ向かうと、男性がパソコンで何かを確認しながらマルクへ言った。



「もしかしたら……、ええと、叔母さんの旦那さんの名前もわかるかい?」



 マルクがこちらを振り返った。……叔母さんの旦那さんの名前、確か何か太った名前……。



「太し……ふ、福士、そうだ。福士さんだ。ふくふくした名前だと思ったんだ」


「ああ、やっぱり。有りましたよ。ご家族でシェルターに入られました」


「シェルター? シェルターがあるんですか?」



 戻りかけていたタウさんらも振り返った。



「ええ、隕石落下の直後ですね。シェルターが解放されました。入られた方の名簿はパソコンで管理しています。お宅さんらのように訊ねてみえる親族も多いですから。現在シェルターは満室で、地上の大学が避難所になってます。入口を説明しますのでそちらで伺ってください」





 絶対に会えるわけがない、と思っていた雪美叔母さんの居場所が判ってしまった。


 タウさんらは、叔母の居場所が判明した驚きと、一般に公開しているシェルターがある事に驚いていた。

 入口の場所を聞いた時にタウさんは他のシェルターの存在についても質問していた。


 何と、八王子には大小4ヶ所のシェルターがあったそうだ。それ以外で1番大きなシェルターは建設が始まったばかりで、今回の隕石や火山噴火には間に合わなかったそうだ。


 ズルいやつばかりじゃないんだ、と、少しだけホッとした。


 手紙では27年ぶり、実際に会うのは15歳が最後だったので34年ぶり、だ。

 34年ぶりの叔母、関係が切れたのに、ノコノコと訪ねて良いものか。



「カオるん、ここまで来たら観念しなさい」


「そうですね、莉緒だったら、カオるん、いつもでもモチャモチャしない!と怒ってますね」


「大丈夫だよ?父さん。僕も一緒に戦うからね?」



 タウさんとキヨカの言う事ももっともだ。いや、マルク君?何と戦うの?

 そう思いつつ俺は繋いでいたマルクの手をぎゅっと握った。マルクもぎゅうっと握り返してくれた。



 シェルターの入口は避難所から近かった。歩いて5分ほどで到着した。

 入口は公園の隅にコンクリートの公衆トイレくらいのサイズの建物で、鉄の扉が閉まっていた。


 扉の横にインターホンのような物があり、タウさんがボタンを押して話していた。

 少しすると、鉄の扉が開いた。


 前後に開く前開きでも内開きでもない、横にスライドする横開きでもない。勿論上にも上がらない。

 そう、分厚い鉄扉は、下へと降りて開いたのだ。


 インターホンから中に入って進むように指示された。入ると後ろの鉄扉が上に上がりしまっていったが、通路には照明があったので真っ暗にはならなかった。


 通路の少し先に、警備室窓がありそこから顔を出した男性がこちらに向かって右手を指した。



「あの扉を解除しましたので入ってください。そこが面会室になってます」



 な、なんか刑務所?いや、刑務所に行った事ないから解らないが、海外ドラマとかで出てきそうだ。



「帰る時に声をかけてもらえればまた解錠しますので」



「なるほど、勝手に出入り出来ないのですね。怪しい者が入り込まなくて良いかも知れませんが、何かあった時の脱出は大変そうですね」


「俺達にはカオさんがいるからテレポートで脱出出来ますよね?」



 え、何?脱出するような事件が発生するの?ナラも海外ドラマの見過ぎじゃないか?



「一応ここもブックマークしておきましょう」


「ここで?」


「いえ、面会室に入ったらトイレの場所を聞いてトイレでブックマークをしてください。河島さんと烏川さんもステータスがなくともブックマークを唱えてください」



 俺達は面会室へ進んだ。

 俺が想像していた海外の刑務所の面会室とは全く違っていた。想像よりずっと広く綺麗だった。

 面会中なのか、数家族がそれぞれテーブルを囲んだりソファーに座って話していた。


 奥の扉に横に腰掛けていた男性にトイレを聞いて、各自ブックマークをしに行った。


 トイレから戻りながら、さっきの人に面会の相手を呼び出してもらうのだろうかと話して部屋に戻ると、こちらを見ている中高年の夫婦が居た。

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