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146話 北から東へ①

 病院の駐車場横の外のベンチでスターガッコスのドリンクやスイーツを楽しみながら、久しぶりにゆっくりした。


 この近辺を回っていた精霊が戻ってきたので、病院を中心に再度上空の雲を吹き飛ばしてもらった。



「精霊の話に戻りますが、やはり精霊との意思疎通はかなり細かい事まで可能でした。言葉はカタコトなんですがね。私の精霊は『火』なので、今のところ精霊の力の使い道はこれといって思い浮かびません。魔物植物相手には火力が高すぎます。どう使って行くか現在考え中ですね。カンさんのところはどうですか?」


「はい、それなのですが、かなり良い方向へ進める事ができそうです」


「と言うと、土関係で?」


「ええ、私のアースドスキン、あれの上位版になるのでしょうか、広範囲でしかもかなりの長時間の強化が可能のようです。実は自宅で試している最中です。私のスキンは12時間が限度でしたが、精霊魔法はどうも時間という概念がないかも知れません」


「と言うと無制限で?」


「うーん、私の聞き方が悪かったのか、そこらはちょっと不明です。何時間継続するかに、答えがもらえませんでした」


「避難民にアーススキンをかけるって事か?」


「いえ、人ではなく洞窟拠点にかけてもらいます。と言うか筑波山ごとガードが可能なようです」


「え、ねぇねぇ、山ごとスキンかけると、魔物植物とかが入って来ないって事?ゾンビ犬も?」


「どうなんでしょう」


「カンさんちにアースドスキンかけた後は魔物植物入ってこないよな?」


「でもそれは、エントが居るからかも知れませんね、それと石を置いていますし」


「筑波山もエントが居れば入って来ないんじゃないか?」


「とりあえず、かけてもらって様子見ですかね。そうなると尚更、この病院拠点も山に繋げたいですね」


「山へ向けてのトンネル掘りは頓挫してるんだよな?」


「それなんですけど、精霊の土魔法でトンネルが掘れそうなんですl


「何だって!」

「それは凄い」

「カンさん、土の精霊ってマジ凄いなぁ」


「いえいえ、風の精霊も凄いですよ。それに火の精霊もこの先どんな魔法で役立ってくれるか期待できますね」


「俺は精霊はいないけどDEのスキルを磨こう!いつ何が役立つかわからんからな」


「ミレさんはもしかするとリアル職業のスキルが現れるかもしれませんね。私やカンさん、カオるんのような」


「DIKやMCN、HKNかぁ。あれが表示されるルールがわからん」


「私は時間が大きく関わっていた気がします。それと異世界ではあちらで使えるスキルかどうか」


「なるほど、俺はシステムエンジニアの期間は長かったが、異世界にシステムが無かった」


「でもこちらにはある。そして今まで地球になかったアレコレが出始めている。生活魔法やエント、そしてエントを使った製品。もしかしたら……」


「そうか、だが、何かが足りないのか。リアルステータスには表示されない……」



「地球はこれから変わっていくのかも知れませんね」



 そうだな。と言うかすでに変わり始めた地球、そこで生きる俺たちも変わっていかねば。



「さて、今後の話です。カンさんの精霊で、拠点の制作と強化はだいぶ捗りそうです。私は第三拠点として北海道を考えています」



 凄いなタウさん、もう次の拠点まで考えていたのか。



「理由は、北海道がこちらに比べて気候が安定しているように感じました。とは言え、こんな世の中です。いつどこで何が起こるかわかりません。ここ茨城とは離れた場所にも拠点を造っておく事を考えました」



「そうか、そうだなぁ。関東と北海道か」


「西や南はどうですか?」


「あっちの情報が今ひとつ入ってこないよな」


「九州あたりは厳しいと、前に自衛隊の人が話していましたね」


「ああ、救助に行ってると言ってたな」


「濱家さんらに一度話を聞いてもいいですね」


「まずは、ここから筑波山へのトンネル、そしてトンネルの先の筑波山の中に洞窟拠点2.5を作成。そして第三として北海道へ」



 第1拠点が、茨城のカンさんちの近くの筑波山の洞窟。

 第2拠点が、この病院。

 第2.5拠点が、病院からトンネルで繋ぐ筑波山に洞窟。

 そして、第3拠点が、北海道か。



「北海道のどの辺に造るんだ?」


「いえ、まだそこまでは考えていません」


「北海道は広いからなぁ」


「カオるん、他にブックマーク隠してないか?」


「えっ、いや、無い。本当に無い。アレが最後です」



 皆の目が俺に集中する。本当にもう無いです、ごめんなさい。



「ゆうご君、大地君、出来れば北海道の探索に君らも参加してほしいです。勿論強制ではありません。北海道に詳しい大人も募集するつもりではいます」


「行きます!」



 大地が真っ先に大きな声で答えた。ゆうごも慌てたように手を挙げた。



「勿論、僕も参加します! でもその前に、ゲームにインしてエルフを少しあげたい。あっちじゃ全然繋がらなかったから!」



「そうですね。北海道からの避難組に、希望者から順にLAFへ案内しますので、エルフ作成やレベル上げを行ってもらいます」


「LAFが茨城にあったなんて驚きです。東京の何処かだろうと思ってました。直ぐにでも行きたいなぁ」


「その前にゆうご君と大地君をブックマークに連れて行きましょう。カオるんお願い出来ますか?」


「おう、いいぜ?」


「ブックマーク?」


「ええ、主要な場所は、全員共通のブックマークにしています。マルク君、キヨカさん、漏れが無いようにお願いします」


「はい」

「はい!」


「タウさん、僕と大地の他に山本と柴田も…、あ、ふたりに聞いてからですがもし連れて行って良ければ今、念話で聞きます」



 柴田……?友達か?どこかで聞いた覚えが………あ。



「タウさん、シバタ、どうなったか聞いてるか? LAFに置いてきたままだ」


「ああ、北海太郎くん」


「えっ? 柴田ってLAFにいるんですか? えっ何で?」



 タウさんが北海太郎のキャラ名変更希望の話をゆうご達にしていた。

 ステータスのフレンド一覧を見ると『北海太郎』の名前は消えていた。

 おおぅ、南無三。チェンジ不可だったか。


 ゆうごも北海に連絡が取れないようだが、山本には連絡が付いた。即OKをもらったそうだ。

 大学のサークルでも、ゆうご、大地、山本、柴田の4人は仲が良かったようだ。


 俺はゆうごと大地、マルクとキヨカを連れて病院の避難棟へとテレポートをした。そこで待っていた山本を連れてLAFへと飛んだ。



 LAFでは、元北海太郎(現、柴田芳臣)がゲーム室の隅っこで、懸命にレベル上げをしていた。

 ゆうご達に気がつくと、すぐに立ち上がり再会を大喜びしていた。


 4人で並んでゲームを始めたが、直ぐにキヨカが止めに入り、ブックマークに行く事を伝えた。

 それはそれで大喜びだった。


 北海道でも何度かテレポートはしたが、スクロールが限られた中での緊急の移動だった。

 リアルテレポートを楽しむ場合ではなかったのだ。


 キヨカの指示で漏れなくブックマークを進めて行く。


 ゆうご、大地、山本、柴田の4人はリアルステータス持ちだ、という事は勿論アイテムボックスもある。

 ゆうご以外はほぼ空っぽのアイテムボックスだ。入っているのは函館の自宅の荷物くらいだ。


 俺はブックマークの案内をしながら、まだ物資が残っている店舗を見つけると4人に収納をさせた。

 ただし、あまり時間をかけるとブックマークの旅が終わらなくなるしタウさんに怒られる。


 なので、1回に付き5分の制限時間を設けた。5分で取れるだけ。ただブックマークをしていくだけだと飽きてしまうが、たまに『5分取り放題』があるので4人は充分楽しんでいた。

 何故かマルクもキヨカも参加している。一応、ライカンとペルペルとエンカが居るので危険は無いだろう。


 それにしてもブックマークが多すぎる。

 最新の北海道上陸のブックマークになると、大学生らは少しだけ泣いていた。うん、そうだよな。



 出発前にタウさんに聞いた。



「あのさ……、都内とか富士山の方とか、どうする?そこは省くか?」



 少し考え込んだ後にタウさんはハッキリと口にした。



「危険を感じたら即帰還、移動をお願いします。ただ、そうですね、富士山に近い場所は、今回は除いてください。それ以外は、本人達に選ばせてください。ただし4人のブックマークは共通にしてください。キヨカさん、それでお願いします」



 キヨカは危なそうな場所は外して、遺体が多いところは隠さずに彼らに話している。彼らは出来るだけ俺たちと共通にしたいと、頑張ってブックマークをしている。



 そうしてブックマーク(及び、こっそり物資収集)を終えて、LAFではなく病院へと連れて戻った。

 病院の避難棟では、LAFに行くメンバーが待ち構えていた。1日3回朝昼晩のテレポート輸送だ。今回は夕方出発組で、当然向こうでの泊まりになる。


 函館で救助した時はヨレヨレに見えた人達だったが、若者は復活が早いのかかなり元気が復活していた。

 地元民や家族は暫くゆっくりするようだ。


 やる気満々の大学生達を連れてLAFへと運んだ。当然、ゆうご達もその中に居る。

 どうやら今夜はエルフキャラのレベル上げをするようだった。


 マルクも参加したがったが、俺はタウさんに呼ばれていたので一緒に戻ってきた。

 タウさんから『盟主集合』の号令がかかったのだ。


 ゆうごは涙目だった。


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