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143話 北の大地で仲間が集合①

 思ったよりもスムーズに札幌駅に到着した。


 途中、魔物植物やゾンビ犬に襲われる事もなかった。火山灰が少し厄介だったが、それも本州ほどではない。北海道の山は噴火していないのだろうか。


 それに気のせいか、茨城よりだいぶ暖かく感じる。

 駅前で馬車を降りてサモンを地龍からライカンに交代する。タウさんから常に付けておくように言われていた。


 馬車の車内が狭いのでしまっていたイッヌも呼び出してマルクとキヨカに付けた。

 タウさんは馬車を収納していた。


 駅前の広いロータリーには灰被ったバスが何台が停まっていた。背後には駅の大きな建物や、その横にビルも見える。だが、人は歩いていない。どこかに避難しているのか。


 車が何台か歩道に乗り上げていたが、特に地震や津波の影響は見られない。ただ、人が居ない。



「この辺は皆さんどこかに避難済みなのでしょうか」


「そうだなー、人っ子ひとり居ないな」



 ライカンが俺を庇うように俺の前に出た、それとほぼ同時に、マルクとキヨカに側に居たペルペルとエンカが唸り始めた。

 タウさんらが警戒の体制を取る。俺もフォーススタッフ(杖)とマジックブック(盾)を手に取った。


 ロータリーの周りに植わっていた針葉樹と思った樹々は、どうやら魔物植物だったようだ。

 ジワリジワリとこちらに近づいてくる。



「父さん!カラ魔ツが居る!」



 カラ魔ツ! ボックリを投げてくるやつだな。



「ファイア!」



 俺はこちらにじわじわと近づくやつにファイアを放った。


 ボボボっ


 腕、いや、火のついた木の枝を上下に振りながら、ソイツは倒れた。



「父さん、それじゃない、カラ魔ツはその後ろ」


「カオるん、それは松じゃないです、ヒノキですよ」



 え、えっ?でも歩いてたよな? 

 じゃ、これ、何なの?報連相を使った。



『ヒノキサイプレス:檜木に寄生して魔物化した。火に弱い』


 あ、良かった、こいつも魔物だ。それにしてもなんだよ、ヒノキサイプレスって、ただのヒノキじゃないのかよ。

 パインツリーと言いサイプレスと言い、ここは日本だ!格好つけんなよ!


 俺はその謎の怒りをカラ魔ツに向けて火を放った。



「ふん、ヒノキは早くに倒さないと黄色いアレを出すからな。お前はこれからは『否の木』で十分だ!」



 俺の報連相を共有していた皆は複雑な顔をしていた。


「お父さん、これは否の木?」


「そうだ、コイツは否の木だ」



 俺はふと思いついてサモンをライカンからゴーレムに変更した。動きの遅い木にはスローなゴレで十分だ。



「ゴレ1号、あそこら辺の魔物をぶっ倒してこい!」



 ゴーレムにそう命じた。ゆっくりと動くゴーレムとモッソリと動く魔物植物の戦い。力の強さはゴーレムの勝ちだ。

 ただ時間のかかる戦いに、俺たちは他からの攻撃に備える。


 ちなみにサモンをゴーレムに変えた理由は、否の木の魔物がもしも『花粉攻撃』を繰り出してきた場合、ライカンやイッヌのように鼻の良い生き物には辛いからだ。

 絶対にくしゃみ鼻水が止まらなくなる。アイツは恐ろしい魔物だ。(想像だが)



 ロータリー周りに居た魔物をゴーレムが倒し終わるのをみて、駅の建物の方へと移動する。

 建物の中の方が安全だ。うん、周りに壁がある方が安心する。広い場所でゾンビ犬に囲まれたくない。



 タウさんは中継点の山本経由でゆうごと連絡を取っているようだ。

 ゆうごは着々と札幌駅に近づいているらしい。勿論魔物植物の事、火に弱い事も伝えている。



「駅の中央口に居る事は伝えてあります。もう到着するそうです。迎えに出ましょう」



 足の遅いゴーレムからライカンに戻した。そして外が見える位置へ移動する。



 ロータリーの向こうに煙が上がるのが見えた。煙……砂埃、ではなく火山灰埃が、それを巻き上げてこちらへ向かっている馬が見えた。


 馬の上にふたり、ゆうごと、恐らく大地か。



「おおーい! こっちだあ! ゆうごー」

「ゆうごくーん!こっちですー」



 皆、大きく手を振ってこちらへと誘導する。

 気がついたのかさらにスピードが上がり、真っ直ぐにここへと突っ込んでくる。

 馬を停める為に手綱を引いたのか、馬は前足を大きく上へと跳ね上げた。


 そこから転げ落ちるように降りたゆうごが駆け寄ってくる。1番手前に居たタウさんへと飛びついた。

 そして、ゆうごは子供のように大きな声で泣き始めた。



「うわぁぁぁぁあ、 うわぁん、あん」



 ずっと耐えていた色んな物が溢れてきたように滝のように涙を流した。タウさんもゆうごをきつく抱き寄せて泣いていた。

 俺も、カンさんも、ミレさんも涙や鼻水を出しながら、ゆうごとタウさんに抱きつく。


 遅れて馬から降りた大地も泣きながら寄ってくる。

 勿論マルクもキヨカも、そして人前で泣いたのを見た事がないアネさえも顔をぐしゃぐしゃにしていた。


 みんなで団子になった。


 イッヌも俺らの腰あたりに鼻を突っ込んでウオーンウオーンと鳴いている。ライカンも一緒に……ちょっと待て、お前だけは周りの警戒をしていてくれよ。


 貰い泣きなのか、仲間に入れなかった悔し泣きかはわからんが、ライカンが遠吠えをしていた。すまんな。後で高級ベーコンをオヤツでやるからな。



 そうして、感動の再会が落ち着き、一旦駅の中へと入った。


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