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120話 あの人はいま④

 タウさんに言われた人達を運び、その後なんだかんだと救援活動をしているうちに夕方になった


 翔太や憲鷹の約束の時間に間に合うように隣町へと向かった。無事にそれぞれとの邂逅を済ませた。まずはゲームを進める事とゲーム内で秘密を話す約束をした。


 別れ際、翔太は伯父さんに引き留められて、本家へ合流したいという話をされた。カンさんには念話で即連絡、歓迎された。明日迎えに行くから荷物をまとめるよう伝えてくれと頼まれた。


 キヨカの同僚さんの所へは明日の朝に向かう約束になった。アネさんを迎えに行った所しかブックマークが無かったからだ。

 お互いの中間点で落ち合うにしても今日はもう日が暮れるので危険だ。暗闇でボックリを避けれる自信がない。


 そうしてその日はおわった。忙しない1日だった。



 よく朝早くに神奈川の相模原へ向かう事に。一旦丹沢山のブックマークのある所へテレポートをして、そこから相模原へと馬車で向かう。

 キヨカは繋がり辛いスマホで同僚と連絡を取り合い、なんとか合流地点へと到着した。



「全員、ブクマー。『さがみはら』でな。ひらがなでいいぞ」


「ほーい」

「はい」

「はい」

「したー」



 キヨカの同僚の高沢さん?は、意味が解らず目を白黒させていた。キヨカとは対照的に随分と背の低い女性だった。しかし大きな目をキョロキョロさせてキヨカ見つけると笑顔で駆け寄ってキヨカの両手を掴んだ。


「きょーかちゃぁん!良かった無事で。横浜は完全に水没だったからちゃんと逃げられたか心配してたのー」



 キヨカと同じ職場、同僚ではあるが結構年下と聞いていた。しかし先輩後輩と言うよりもまるで幼馴染のような言動だな。



「高沢も元気そうで良かった。高沢の事だから絶対無事って思ってたけどね」



 何かイメージと違うな。俺の勝手なイメージだが、どちらかと言うとキヨカが全国をフットワーク軽く飛び回り、高沢は自宅に篭って料理のブログとかをあげていそうだ。


 軽い自己紹介の時に料理は全く出来ない、ほぼ外食という事を言ってた。



「料理はキョーカちゃんが絶品ですよぉ。こっちに戻るたびに私よく食べさせてもらってた」



 キヨカは美人なだけでなく料理まで上手いのか。天は二物を与えないと言うが、ふたつどころかキヨカには十以上与えているんじゃないか?




「とりあえず洞窟に戻るぞ。話はそこでだ」



 高沢さんとキヨカの周りに集まりエリアテレポートで帰還した。



 いつも『ハケン』が集う小会議室が使用中だった。



「どうするか、何処かで腰を落ち着けて話したいな」


「カオさん、LAF地下どうですか?」


「そうだよ、ついでにそこで新人のログインと強化合宿もしようぜ」


「そうだな、昨日連れてきた翔太の従兄弟と、憲鷹の先輩も誘って連れて行くか」


「今、剣王子に連絡したら、部屋は空いてるそうです」



 キヨカは地下シェルターのLAF社員の剣王子に早速連絡を入れたようだ。気が効く、ありがたいな。

 翔太と憲鷹はスマホで連絡をしていた。まだ従兄弟らにはリアルステータスは出ていないからな。


 さほど待たずに洞窟の通路をやって来るふたりが見えた。

 翔太の伯父一家は今朝方カンさんが迎えに行った。その時に呼ばれて俺はエリアテレポートで一気に運んだ。


 カンさんの兄さん一家が、目を剥いて驚いていたが説明はカンさんがするだろう。

 憲鷹の先輩はひとり洞窟入りした。そのうち家族も呼びたいと言っているが、本人にステータスが出ていないのでまだ様子見だ。

 ふたりとも昨夜ゲームにはログイン、『ハケン』に加入済みだ。



 田中亮治(翔太の従兄弟)と桜井拓巳(憲鷹の先輩)は、いずれカンさんの『ツクバ』に入るだろうが、現在はカンさんが病院建設で忙しいのでとりあえず『ハケン』に入ってもらった。勿論、キヨカの同僚の高沢彩もだ。


 新しいメンバーが増える度におじさん脳の俺は名前(と顔)を覚えるのに四苦八苦だ。


 翔太の従兄弟が、亮治。

 憲鷹の先輩が、拓巳。

 キヨカの同僚が、彩。


 覚えるのが苦手な事が顔に出してしまったのか、俺を見たキヨカから提案があった。



「お互いの名前を覚えるまで、なるべく会話する時は名前を出しましょう?」


「どういう事?」


「マルク君、話す時相手の名前を言うの」


「キョーカちゃん、それ、いいですね。カオさんいいですか?」


「ア、アヤさん、俺も良いと思う。キヨカ、そうしてもらえると助かる」


「なるほど、キヨカさん、わかった。ねっ、ケンちゃん」


「おう、翔太。わかりました。カオさん、キヨカさん」


「焦ったぜ、自分の名を名乗るのかと思いました。キヨカさん」


「拓巳先輩、それって変ですよw」


「そうだな、憲鷹」



 うんうん、何度も会話で名前が出て来ると覚えやすいな。

 そして俺達は地下LAFへと飛んだ。


 そしてゲーム部屋でLAFを始める。拓巳と亮治は昨夜ID取得済み、キャラも作成済みだ。

 キヨカが彩さんに説明をしている。



「ところで、三人はどの職を選んだんだ」


「俺はウィザードにしましたよ、カオさん」


「拓巳さん、ウィズにしたんだ。俺もですよ」


「亮治もか。彩さんは?」


「私もウィザードにしましたー。ゲームとして楽しむなら前衛職かなって思ったけど、リアルの話を色々聞いちゃうとウィズ一択かなーって」


「そう、そうなんですよ、彩さん。俺も憲鷹から聞いた話でとりあえずウィザードを極めようと思ったんです」


「拓巳さん、俺もそれ考えました。リアルでステータスが出て、もしも選んだゲームキャラの職が反映されるならウィザードしかないぞと」


「そうでしょー、亮治君。でも3人一緒で良かったー。キョーカちゃんの話だとウィズのクエスト、凄く大変そうなの。ひとりでは乗り切れないわぁ」



 3人ともウィズを選んだのか。狩り場やクエストも一緒に出来るからある意味良い選択だ。



「いいなぁ、俺もウィズにすればよかったかな」


「翔太はエルフだったよな」


「そうだよ、ケンちゃん。ケンちゃんはナイトでしょ?」


「ハケンの砂漠で私だけナイト……いいんですけど、いいんですけど少しだけ寂しいです。カオさん……」


「ホントだー。現在のハケンの砂漠はキョーカちゃん以外はウィズだねぇ」



 キヨカがナイトで有り難い面もあるが、確かにこれでは保育士(KN)ひとりに保育園児(WIZ)5人か。ふむ、どうしたもんか。



 そうだ!



「マルクもキヨカも現在レベルは45超えたんだよな?」


「うん、超えたよ? 父さん。あ、カオ父さん」


「はい、今47です、カオさん」



 47!早いな。流石はナイト職。



「だったらセカンドを作らないか? キヨカはWIZを、マルクはエルフにするか」


「する! 父さんと一緒のエルフにする!」


「はい! 私もウィズを作りたいです!」


「翔太も憲鷹も45超えてるよな? セカンドにウィズを作らんか?」



 翔太と憲鷹も面白そうに顔を見合わせていた。



「それ、いいな。クエストの時ウィズが楽しそうだったんだよなぁ」


「翔ちゃん、全然楽しくないよ! アレ凄く難しかったよ!」


「ごめんごめん、マルク。でも僕もアレやってみたかったんだ」


「俺もソレ思ってたぜ。翔太」


「じゃあふたりともセカンドにウィズを作ろう。ゲームでは俺がセカンドのエルフにチェンジするから、マルクの様子を見ながらウィズの護衛も出来る」



 そう言ったものの、ちょっとだけ不安はある。

 地下LAFに残ってモニターチェックしてた剣王子に声かけてみた。



「手が空いた時でいいんだけど、新人のボディガードをお願い出来ないか?」



 そうお願いしたら二つ返事でオッケーをもらえた。

 初心者の島に集まった6人のウィズとエルフの俺とマルクの初心者エルフ、ボディガードのナイトの剣王子。


 ゲーム内で俺と剣王子以外の6人でPTを組み、島のモンスターを倒しまくった。勿論踏んづけて襲ってきた猪一家も返り討ちだ。


 ひとりじゃないって楽しいんだな。ワイワイ言いながら皆のレベルがどんどんと上がっていく。あっという間にレベル15のクエストになった。


 1人で進めていたあの頃を思い出す。そんなに早くレベルは上がらなかった。何度も死んでいたのもあるが、獣や魔物もこんなにコンスタンスに湧かなかった気がする。


 剣王子に聞いてみると、何のことはない、プレイヤーの数でモンスターの湧きが調整されているそうだ。



 俺はマルクを連れてエルフのクエストに向かった。その間、ウィズ軍団は剣王子がクエストのフォローをしてくれている。まぁ15クエストはそこまで大変ではない。終わったら次の大陸に集合してまた一緒に回る。



 凄いなぁ、このまま頑張ったら30クエストまで行けるんじゃないか?



 そう思っていた時、タウさんからまたしても『緊急』の招集がかかった。

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