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102話 勇者ひとりじゃどうにもならない

 -------------(カオ視点)-------------



 映画や小説に出てくる主人公(勇者)はよくひとりで頑張れるもんだと思う。

 ひとりで救える数なんて限られているよな。


 俺達だって6人じゃ何も出来ない。

 今は仲間の家族にもリアルステータスが表示されたから20人近くに増えた。洞窟拠点の避難民は300人近く居る。


 だが、俺達だけ残った世界にはなりたくない。高齢化が進んでいる若干300名だけの世界なんて嫌だ。

 全人類を救うのは無理だ。どっちにしろ隕石落下、地震、津波、火山噴火で人類はかなり減ってしまった。


 残っている人類が減って行くのを止めたい。しかしたった数十人では限度がある。ありすぎる。


 夕食後の定例会議でその話題になった。



「血盟員をどこまで増やすかですが、闇雲に加入させるのはよろしくないです。この洞窟だけでも300弱はいます。ここの避難者は年齢がかなり高い。いえ、僕らもいい加減高齢者ですけどね」


「ん?でもそこまで高齢じゃないでしょ?親父今幾つだっけ?」


「そうでした。こちら戻る時に10年分若返ったんでしたっけ。今、45歳です」


「そうでしたね。ついもう還暦だと思ってましたが50歳でした。とは言え50歳は若くは無いです」


「身内だから贔屓して見てるわけじゃないけど、父さん50に見えないよ? 動きも力仕事も農協の兄ちゃんに勝ってるよな?」


「まぁゲーム補正がかなり入ってますからね」


「にしても、親父、見た目若返ってない?」


「え!ズルい、ズルいわ!」




「ゴホンっ、話が逸れました。町の人を無作為に血盟に招待してステータスの表示を待つより、ある程度の選択によりステータス保持者を作る必要があります。ステータス表示をさせるだけの者と、今後の活動に協力してもらう者、そこを分けて考えていきましょう」


「そうだな。最初は一家にひとりステータスが出たらチェンジだな」


「消防団や農協の若い人らは積極的に招待したいです」


「そうですね。その辺はカンさんのクランに任せて良いでしょうか?」


「わかりました。自分の裁量でクランに招待していきます。何名までと上限はありますか?」


「ええ、いざと言う時の為に空きは残しておきましょう、それと近場の別の町内へも広げて行ってはどうでしょう」


 茨城県筑波山、カンさんの地元まわりはカンさんがクラン員を増やして物資収集をする事になった。



「北海道はゆうごが頑張っていますが、いかんせん広すぎる。いずれは北海道へ向かうつもりです。が、まずは前回の続き、中部、近畿地方に行きましょうか」


「家族全員で?」


「いえ、そこは各クランで検討してください。ここ拠点に誰かを残すも良し、全員で行動するも良し。各自が持っている装備や武器、それとアイテムもクラン内で貸し出せば、多少遠出も可能でしょう」



 実はシェルターの自衛隊と情報共有をしているが、救助要求の書き込みがかなり増えているらしい。

 それも切羽詰まった書き込みだ。自衛隊はどの程度動いてくれているのだろう。


 自衛隊がオープンに出来る情報は少ない。それはわかっていた。

 別に偉い人や金持ちだけを守って地下シェルターに篭っていたのではなく、火山灰のせいで動けなかったらしい。火山灰はヘリや飛行機の大敵だそうだ。


 現在、火山灰が落ち着きようやくシェルターから九州、四国に救援に向かうらしい。

 自衛隊はヘリコプターや飛行機があるから海の上の移動もしやすい。


 こちらは地続きの本州を進むしかない。


 前回は北は岩手県辺りまで行った。しかしそこでターンをして関東方面へと戻ったのだった。


 各血盟ごとに別々に進むとしても、茨城の洞窟拠点から徒歩だと時間がかかり過ぎる。

 そこで、俺がブックマークをしてある場所(かなり多い)に全員をエリアテレポートで運び、皆のブックマークを先に済ませる事になった。


 ブックマークさえ有れば、各チームがそこから先へと動きやすい。


 それから俺のブックマークの整理にもなる。ブックマーク先に飛びつつ登録名も全員で揃えていく。



「えっ、ちょっとここ!大型スーパーじゃない! もっと早く来れたら生物ゲット出来たのに」


「あら、ここ。意外と良い物あるわね。なんでこの場所が置き去りなのよ」


「おい、こっち!死にかけてる!カオさん、ヒール頼む!」



 行く先々で何故か怒られている気がする。そのうちゆっくり取りにこようと思ってたけど、ゆっくりする時間がなかったんだよ。






-------------(タウロ視点)-------------



 私とした事が、失敗でした。何故これを後回しにしてしまったのか。

 あの災害でその時に打てる手は打っているつもりでした。私があと10人居たら…と、思っても無理な事ですね。


 それにしてもカオるんのブックマーク先はかなり有用な場所が多いです。


 元の作戦としては、茨城から離れた地のブックマークを全員にしてもらい、そこから足を延ばして救助や物資収集を行っていく予定でした。


 が、カオるんのブックマーク先はかなり多く、物資収集もしやすい、今後は各ブックマークポイントを重点に色々と出来るかも知れません。


 特に災害直後の都内。『日比谷のやまと商事ビル周り』と言っていたカオるんですが、カオるんの方向音痴を舐めていました。


 カオるんはあの災害初日と翌日に、どこまで足を延ばしていたのでしょう。日比谷、銀座はもちろん、マルクが居た丸の内も越えていましたよ。

 なるほど、日比谷を中心に千代田区、中央区、港区、品川まで足を伸ばしたのか。


 ……ん?茨城県内のブックマークの数も凄いな。これは……ミレさんと栃木へ向かい迷子になった時のものか。

 福島、宮城、岩手、新潟、群馬、栃木、埼玉、この辺りは誰かと一緒に物資収集をした時だな。


 千葉、神奈川はブックマーク場所は少ない。アネ救出に向かった時のものか。

 しかし、これだけの数のブックマークだ、1日がかりになりそうだ。




 直ぐに収集に周りたがる面々を押さえて、1日かけてある程度のブックマークを全員にさせた。

 地図を開いてブックマーク地点を記していく。その後に血盟毎に進む方面を割り振った。


 今回も生きている者を優先するので遺体は放置で。

 ゲームの世界ではなくただ災害で荒れた地球だ。モンスターが出るわけではないが、野生化した動物が襲ってくるかもしれない、そこは気をつけて。


 スクロールやポーションも各クランそれなりにあるはず。準備は怠らないように。



「足りなければいってくれ。俺が持ってるのは渡す。消耗品系ならかなりある。高レベルでなければ武器や装備もあるぞ」


「ボスモンスターはいませんので強化してない装備で十分ですよ」


「強くて熊ぐらいか」


「もしかすると動物園やサファリパークから逃げ出した動物がいるかもしれませんね。ライオンとかトラとか…」


「どちらにしても、俺やアネならワンパンだな。カオるんは踏まないようにきをつけろよw」


「ふ、踏まねぇぞ(たぶん)。だが、一応うちのワンコを連れていっていいか?」


「1匹だけ同行して2匹は洞窟へ置いてもらえますか」


「おう」



 移動手段であるが、実はカンさんが馬車を作った。馬車と言っても簡易な箱型のものだ。


 火山灰は降り止んでいたが、その後の雨で道路が酷い状態だったのだ。

 最早車は無理、馬にリアカーを引かせると言っても長時間リアカーに乗るのも苦痛だ。


 そこでカンさんのMCNスキルで馬車を作って貰った。車輪にかなり力を入れたそうだ。ぬかるんだ道は元より、山道も行けるらしい。

 それと私たちが乗り込む箱の部分の車高もかなり高くしてあるので、浅い川や水溜りはそのまま通るのも可能だそうだ。


 馬車は5台。

 チキサバ、タマサバ、オーケ、ツクバ、ハケンだ。


「タマサバ言うなー!!!」



 カオるんが、埼玉の砂漠をタマサバと略すとミレさんが怒るが、言いやすくて良いと思うのだが。



「だって、サイサバだとちょっとなぁ? タマサバのがわかりやすいよな?」


「何でアネのとこはオーケなんだよ!砂漠はどうした」


「オウサバもオケサバも何かなぁ……。アネのとこはもう王家!って感じだからオーケで」


「じゃあカンさんとこに砂漠が付かないのは何でだ!」


「筑波の砂漠、略してツクサバだとさぁ、筑波学園都市のサーバーと混同しちゃってさ、ツクサバが筑波サーバーの略っぽいんだよ。だからもうツクバでいいかなと」


「むむぅ、納得いかん……ような?納得のような?」





 準備も整い出発予定の前夜、カオるんが部屋へ訪ねてきた。



「あの……このタイミングで今更なんだけど、ちょっと相談がある」


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