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21話:急に姉さんから電話が来る

 霧崎先輩とそんな約束を交わしたその日の放課後。


 今日は部活が無い日だったので、俺は一人でノンビリと歩きながら自宅へと帰っている所だった。


「それにしても貞操逆転世界に転移してから結構日が経ってるけど、今の所は全然問題無く普通に過ごせているよなー。というか貞操逆転世界と言っても結構普通な世界なんだよなー」


 俺はそんな独り言を呟きながらノンビリと自宅に向かって歩いていた。


 最初の頃は漫画とかゲームみたいな知識も相まって貞操逆転世界というのはもっとエロい世界観を想像してたんだけど、でも実際には全然そんな事もなく元の現実世界とあんまり変わらない普通な世界観だった。


 もちろん元の現実世界と比べたら陽キャでイケイケな女子の割合は圧倒的に多いし、肉食系の女子も圧倒的に多いんだけど……でもだからと言って女子全員が彼氏を作って遊んでるという訳でもないしな。


 例えばこの貞操逆転世界で知り合った天城さんや綾瀬には彼氏はいないし、霧崎先輩もつい最近彼氏と別れてフリーになったしな。だから彼氏がいない女子も普通に多い感じだ。


「というかそんな貞操逆転世界とは関係なく、あの三人にはそれぞれ気になる所があるんだよなぁ……」


 天城さんは家庭の事情が色々と大変そうだし、後輩の綾瀬は自己肯定感が凄く低いのが気になるし、霧崎先輩は元カレに酷い振られ方をして凄く落ち込んでいるし……何だかあの三人はそれぞれ大変な状態になってるような感じだ。


「まぁ貞操逆転世界といっても、元の現実世界の人達と変わらず皆それぞれで色々な問題を抱えながら生きてるんだろうな」


 俺はこの数ヶ月間の出来事を思い出しながらそんな事を呟いていった。どんな世界線であっても人間ってのは生きていく上では色々と困難な目にあうもんだよな。


 だけど仲の良い友達が大変な状況に陥ってたり辛い表情をしてたりするのは普通に嫌なんだ。だから俺はこれからも皆の話を聞いていって助けになれる事があれば幾らでも手助けをしたいと思っていた。まぁやっぱり人と人ってのは助け合って生きていくものだしさ。


―― プルルルッ……プルルルッ……


「って、あれ? 電話だ」


 そんな事を思っていると急にスマホから着信音が鳴りだした。俺はスマホを取り出して電話の主を見てみると、それは鳴海姉さんからだった。


 鳴海姉さんとは再会してからはちょくちょくLIMEでやり取りをしていた。そして鳴海姉さんは天城さんや霧崎先輩とかとは違って元の現実世界の時から知っている女性だ。


 まぁ元の現実世界の姉さんと比べたら性格がちょっとだけズボラというかだらしない感じになっているんだけど、でも今の俺が一人暮らしの状態になっているのを心配してちょくちょくLIMEでメッセージを送ってきてくれるので、やっぱり優しい姉さんなのには変わりなかった。


 という事で俺はそんな優しい姉さんの事を思い出しながら早速電話を取って話を始めていった。


「もしもーし? 鳴海姉さん? どうしたの?」

『あ、ハ、ハル君! こんな夕方に電話しちゃってごめん! あ、あのさ、出来ればでいいんだけど……今から私のアパートに行って、そこの机に置いてある電気代とか水道代とかの請求書をまとめてコンビニで払ってきて貰えないかな……?』

「……へ? ど、どういう事?」

『い、いや実はその……そ、それらの公共料金の支払い期日が今日までなんだ……今日中に払わないと私の部屋の電気とか水道とか全部止まっちゃうの……』

「は、はぁ!? 何それヤバイじゃん!?」


 電話内容はまさかの公共料金のコンビニ払いのお願いだった。


 姉さんのアパートの鍵はもしもの事があった時のためにスペアキーを俺が預かっていたから、姉さん不在中でも俺は姉さんのアパートに行く事は出来るんだ。でもまさか公共料金の支払いのためにそのスペアキーを使う事になるとは思わなかったけど。


「……って、あれ? でも今日中ならまだ自分で支払いに行けるんじゃないの? まだ夕方だしコンビニ払いならまだ時間的にも余裕あるんじゃない?」

『い、いや、それはその……本当なら今はもう会社から帰れる時間のはずだったんだけど、でも急遽上司に今から始まる会議に参加しろって言われちゃってさ……だから今日は帰るのかなり遅くなるだろうから……それでハル君にコンビニ払いを私の代わりにお願いできないかなって……』

「あ、あぁ、なるほどね。まぁ姉さんは仕事が毎日忙しいのは俺も知ってるけど。でもそもそもの話なんだけどさ、公共料金の支払い期日が今日までって……何でそれまでに余裕を持って支払っておかなかったの?」

『うっ……そ、それはその……今日になるまで私の部屋の郵便受けを全く見てなかったから……』

「え……って、えぇ!? も、もう! 流石にそれはズボラ過ぎだって! 高校生だった頃の姉さんはもう少しピシっとしてたよ! 何してんの姉さん!」


 何だか姉さんが想像してた以上にズボラ過ぎる性格になっていたので、俺はちゃんとそう言って叱っていった。


『う……ご、ごめんハル君……で、でも言い訳って訳でもないんだけど……毎日仕事が忙しすぎてさ……それで仕事から帰ってきても酷く疲れてるせいで毎日何も考えられずにいつもすぐに眠っちゃってたんだ……だからそのせいで……アパートの郵便受けを見る事をいつも忘れちゃってたんだ……』

「って、あ……姉さん……」


 俺がそんな注意していくと鳴海姉さんは凄く悲しそうな声色でそう返事を返してきた。


 確かに今までの鳴海姉さんの話を聞いている限り、姉さんはかなり大変な職場で働いているようだ。それに結構な頻度で終電までサビ残をさせられてるって聞いたし。終電まで帰れない日が多いなんて本当に大変そうな仕事だよな。


(それによく考えてみたら……そういえば姉さんも本当に大変そうな状態なんだよな……)


 姉さんは毎日仕事が忙しすぎて凄くボロボロな状態になっていた。休みとかも全然無くて友達と遊びに行ったりとか彼氏を作ったりも全然出来ないって言ってたっけ。


 だけど俺にとって一番大切な家族である姉さんがそんなボロボロな姿になって大変な目に遭ってるなんて本当に嫌だよな。なので……。


「うん、わかったよ。それじゃあ公共料金は俺が払っておくから、姉さんは安心して仕事頑張ってね」

『あ、ありがとうハル君。そしてほんとうにごめんね……お姉ちゃんなのにこんな迷惑ばっかりかけちゃってさ……』

「ううん、全然良いよ。むしろ姉さんなんだから俺には幾らでも迷惑かけてくれて良いよ。あ、それとさ、せっかくだし今日は仕事を頑張ってる姉さんのために晩御飯を作っておいてあげるよ!」

『え? ば、晩御飯をハル君が作るの? と、というかハル君ってご飯なんて作れるの?』

「うん、もちろんだよ。田舎に住んでた頃はいつも母さんが仕事で忙しかったから俺が毎日ご飯を作ってたんだよ。だから今日は姉さんのために晩御飯を作ってあげるよ!」

『え、そ、それは嬉しいけど……でも私、今日いつ帰れるかわからないんだよ……?』

「うん、大丈夫大丈夫。それじゃあ温め直して食べても美味しい料理を作っておくよ。あ、でも帰る時間はちゃんと事前に教えといてね? それに合わせて俺も料理を作り始めるからさ」

『ハ、ハル君……うん、わかった! ありがとう、ハル君! それじゃあなるべく早く仕事を終わらして帰るようにするね!』

「うん、わかった。それじゃあ仕事頑張ってね、鳴海姉さん」

『うん、ありがと!』


 そう言って鳴海姉さんとの会話は終了していった。


 という事で俺はこれから今すぐに鳴海姉さんのアパートに向かってコンビニ払いを済ませていき、それから鳴海姉さんのために晩御飯を作っていく事になった。よし、それじゃあ今日は姉さんの好きな物を作ってあげようっと!

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