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13話:鳴海姉さんに会いに行くと

 とある休みの昼下がり。


―― ピンポーン♪


「姉さーん、来たよー」

「あ、うん……ちょっと待ってねー……」


 今日は都内に引越してきたお祝いに姉さんが晩御飯を奢ってくれると言ったので、俺は早速姉さんが住んでるアパートにやって来た。


―― ガチャッ!


「お待たせ、ハル君……はぁ……」

「うん、お邪魔しますー。って、あれ? 姉さんどうしたの? 何だかドンヨリとしてない? 大丈夫? 何かあったの?」

「え? あ、あぁ……うん、まぁその……ね」


 アパートのドアを開けてくれた姉さんは何だか酷くドンヨリとしていた。普通に心配だったので俺は姉さんに大丈夫かと尋ねていくと、姉さんはため息を付きながらドンヨリとしてる理由を答えてくれた。


「まぁその……また友達が結婚するらしくてね……もうこの1~2年の間に皆どんどんと結婚しちゃってるんだ……」

「え? あ、そうだったんだ? やっぱり社会人になると皆どんどんと結婚していくものなんだね」

「うん、そうだね……だから私一人だけ取り残されてる感が凄く感じちゃってね……あはは……はぁ……」


 姉さんは体育座りをしながらショボンとしていっていた。この一連の会話で姉さんがドンヨリとしてた理由が何となくわかった。


「あ、あぁ、そういう事か。まぁ大丈夫だよ。姉さんにだってすぐに良い人が見つかるよ。だからそんなションボリとしないでよ」

「ふふ、慰めてくれてありがと、ハル君……。でも私は毎日仕事で忙しいし、男の人との出会いなんて一切ないし、たまにある休みは外に出る気力も無くて家にずっと引きこもっちゃってるし……あはは、もう私はこのまま一人でひっそりと朽ちていくんだろうなぁ……」

「ね、姉さん……」


 姉さんは自虐気味に笑いながらそんな事を言い始めていった。というかこんなにもドンヨリとしてる姉さんを見るのは生まれて初めてだった。


 だって姉さんは昔はいつも明るくて優しくて素敵な姉さんだったからさ。そしてそんな優しくて素敵な姉さんの事が子供の頃からずっと大好きだったんだ。そんな姉さんがこんなにドンヨリとしているのは何というか見ていて辛いものがある。


(うーん、何とかして姉さんには元気になって貰いたいんだけど……あ、そうだ)


 俺はその時にとある事を思い付いた。この世界は貞操逆転世界なんだよな。そして元の現実世界で“男性”が“女性”にして貰えたら嬉しい事なんて余裕で沢山思い付く。という事で俺は……。


「そうだ、姉さんはいつも仕事ばかりで肩とか腰とか凝ってるでしょ? だからさ……今から俺が姉さんの身体をマッサージをしてあげるよ!」

「え……って、えぇっ!?」


 という事で俺はそんな提案をしていってみた。元の世界で言えば社会人のお兄さんにJKがマッサージしてあげると言われてる感じのシチュエーションだ。そんなの鳴海姉さんとしても嬉しいシチュエーションだろ。


 まぁでもちょっと前に霧崎先輩からあんまり女性に対してベタベタと触ったりしたら襲われるかもよって忠告されたけど……でも鳴海姉さんだったら全然襲われても問題ないというか、むしろ姉さんとならえっちぃ事に発展してもむしろ嬉しいので大丈夫だ。


(だってそもそも鳴海姉さんは子供の頃から大好きな初恋の相手だしな)


 という事で俺はそう思いながら姉さんにマッサージの提案してみたんだけど……すると案の定、姉さんは顔を思いっきり真っ赤にしながらあたふたとしだしていった。


「い、いや、な、何を言ってるのハル君!? そ、そんな事を男子高校生にさせちゃうなんてその……は、犯罪だよ!?」

「いやいや、別に犯罪じゃないでしょ? 姉さんの事をマッサージするだけなんだからさ。という事で疲れてる姉さんのために全身くまなくマッサージしてあげるよ!」

「えぇっ!? ぜ、全身くまなくっ!?」


 俺がそう言っていくと鳴海姉さんはぷしゅーっと顔を一気に真っ赤にしてきた。やっぱりこの世界だとこういうのが効果抜群のようだ。


「え、えっと、い、いや、駄目だよっ! 男子高校生が成人女性の身体をくまなくなんて触ったら駄目なんだよ!」

「え? どうして? 鳴海姉さんとは今まで17年間ずっと仲良くしてきた間柄なんだから全然問題ないでしょ? それなのに駄目だなんて……あ、もしかして俺の事が嫌いとかなのかな……?」

「えっ!? あ、い、いやそういう事じゃなくて!! そ、それはその……じゃ、じゃあ、肩だけ! 肩だけお願いします!」

「え? 肩だけで良いの? 全然全身マッサージしてあげるけど?」

「い、いや、そ、それはその……男子高校生にそんな事をさせちゃうと私のHPが0になるというかなんというか……」


 鳴海姉さんは顔を真っ赤にしながらそう言ってきた。これ以上は姉さんも恥ずかしがって受け入れなくなりそうなのでここら辺で妥協する事にした。


「うん、わかったよ。それじゃあまぁ、姉さんの肩だけマッサージしてあげるよ。という事で一旦背中の方を向けていってくれるかな?」

「う、うん。わかった。それじゃあ、お願いします……」

「うん、わかっ――」


 そう言って姉さんは俺の方に背中を向けていってくれた。なので俺はそのまま姉さんの肩を優しく揉んでいこうとしたんだけど……。


―― ゴリッ!


「え……って、えっ!? 姉さんの肩物凄く凝り過ぎじゃん!?」

「え? そ、そうかな?」

「うん、めっちゃゴリって言ったよ!? ね、姉さん辛くないの!?」

「うーん、まぁちょっとしんどいけど、でももう慣れちゃったからなぁ……」


 姉さんはそこまで辛そうな表情は見せずにそんな事を言ってきた。でもこれあまりにも凝り過ぎてて絶対に辛いやつじゃん……。


 という事で最初は姉さんにラッキースケベ的なイベントを提供しようと俺は思ったんだけど、でも姉さんの肩凝りが異常過ぎたので、俺はそんな事を考えるのは止めて姉さんを癒す事だけを考えて全力で肩を揉みほぐし始めていった。


―― もみもみ……もみもみ……


 すると次第に姉さんは俺の肩揉みを受けいれていって、気持ちよさそうな表情をしながらこう言ってきた。


「ん……あ、あぁ……ハル君は肩を揉むのすっごく上手だね……」

「まぁそりゃあいつも母さんのマッサージをしてあげてたしね。母さんも身体中バキバキに凝ってたからね」

「あ、そっか。湊さんも毎日仕事で大変だもんね……」

「まぁね。でも母さんは現場仕事が好きだから毎日イキイキとしながら働いてたけどね。姉さんはどう? 今のやってる仕事は楽しいかな?」

「えっ……? あ、う、うん、そうだね……毎日楽しいよ……」

「ん? どうしたの姉さん?」


 俺は何の気なしにそんな事を尋ねていったら、ふと姉さんはまた表情が曇りだしていった。


「……え? どうしたのって?」

「いや姉さん、今表情がすっごく暗かったよ? だから仕事で何かあったのかなって思ってさ」

「え……? あ、い、いや、全然そんな事ないよー! 全然暗い表情になんてなってないよ! 多分ハル君の気のせいだよ!」

「そ、そうかな? まぁ姉さんがそう言うのなら別に良いんだけど」


 俺がそう尋ねていくと姉さんは首をぶんぶんと左右に振りながら何でもないと言ってきた。どう見ても何か問題がありそうな感じがしたんだけど……まぁでも姉さんがそういうのなら今は気にしないでおいとくか。


「い、いやでも話は変わるけどさ、湊さんのマッサージをいつもしてあげてるなんて、ハル君はやっぱりお母さん思いの優しい男の子だね」

「まぁそりゃあ家族に対しては誰だって優しくするもんでしょ。そもそも家族が嫌いな人なんて普通にいないだろうしさ」

「ふふ、そっかそっかー。うん、やっぱりハル君は優しくて良い子だね。こんなにもお母さんを大切に思ってくれてる優しい高校生に育ってくれてさ……ふふ、親戚の私としても凄く嬉しい限りだよ」

「はは、そりゃあどうも。でも俺は母さんだけじゃなくて鳴海姉さんの事だってちゃんと大切に思ってるからね? だって鳴海姉さんも俺にとって物凄く大事な家族の一人なんだからさ」

「ふぇっ? だ、大事な家族? 私も?」

「あはは、当たり前でしょ。そもそも赤ちゃんだった俺のオムツを何度も取り替えてくれたり、離乳食作って食べさせてくれたり、一緒にお昼寝とかお風呂に入ってくれてた鳴海姉さんが俺の大事な家族じゃなかったら絶対におかしいでしょ?」


 俺は笑いながらそう言っていった。俺が赤ちゃんの頃から鳴海姉さんは俺の事を何度も優しくお世話をしてきてくれてたんだ。


「あ、う、うん……確かにそんな事もあったね。ふふ、それにしても何だか赤ちゃんだった頃のハル君が懐かしいな……」

「あはは、俺もすっごく懐かしいよ。まぁという事でさ、姉さんは俺にとって凄く大事な家族なんだよ。だから何かあったらいつでも俺に言ってよ? 俺はどんな事があっても大事な家族である姉さんの味方だからさ。ね?」

「ハル君……」


 という事で俺は笑みを浮かべながら姉さんにそう言っていった。今の言葉は俺の本心からの言葉だった。


 だって多分だけどやっぱり姉さんは何かしんどそうな事になっている気がするんだ。でも姉さんって昔から感情を爆発させたりせずに我慢するタイプの人だった。


 だから俺はもしも何かあった時のために事前にこう伝えておく事にしたんだ。何かあっても絶対に信じられる味方が近くにいるという事を伝えておくのも大事だと思ったからさ。


「……うん、ありがと、ハル君。多分色々と心配してくれてるんだよね。でも大丈夫だよ。ほら、私って昔から頑丈さだけが取り柄だからさ」

「……そっか。確かに姉さんは頑丈には定評があるよね。まぁだけどもしも何かあったら俺にいつでも言ってよ? 鳴海姉さんの弟として何でも話は聞くからさ!」

「うん、そう言ってくれて本当にありがとう、ハル君。ふふ、こんな姉思いの弟がいて私は幸せだよ」

「はは、そっか。それなら良かったよ」


 すると姉さんは俺の伝えたかった意図を理解した上でそう言ってきてくれた。


 明らかに姉さんには何かしらの問題を抱えてるような感じはしたけど……まぁでも今の姉さんには俺という味方がいるという事をちゃんと伝える事が出来ただけでも良しとしておこう。


 ま、これで今後は一人で抱え込まないようにしてくれるといいな。


 という事でその後も俺は姉さんの肩を優しく揉み続けていって、他愛無い話をしながら姉弟仲良くノンビリと過ごしていった。

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