01話:東京に引っ越す事になった
夏休み終盤の朝。俺は地元県の空港前にいた。
俺の名前は上神春樹。とある田舎町で暮らしてる普通の17歳の高校二年生だ。ちなみに男子高校に通っていて女性との交流はかなり少ないので、彼女は一度も出来た事はない。
そして家族構成は母親と俺の二人家族だ。父親は俺が赤ん坊だった頃に亡くなってしまったのでこの世にはいない。
なので今日に至るまで母親がずっと一生懸命に働いてお金を稼いで俺の事を育ててきてくれた。母親には本当に感謝の気持ちしかない。
だから俺はそんな母親のために家事は全て俺が引き受けるようにしていた。子供の頃から料理や洗濯、掃除などの家事を全て俺が引き受けていた。そのおかげで今の俺は家事全般がかなり得意になってる。
そんな感じで俺は母親と共に支え合ってこの田舎町で仲良く二人きりで暮らしていたんだけど、なんとつい最近に母親の仕事成果が会社のお偉いさんから認められて表彰をされたんだ。
そしてその表彰を受けて母親の昇進も決まり、東京本社への異動が決まったのだ。つまりは栄転というやつだ。母親の今までの頑張りが認められるなんて凄く喜ばしい事だよな。
だけど母親はまだこっちの仕事場に業務が残っているとの事なので、俺だけが夏休みが終わる前に一足先に東京に引越す事になった。そして夏休み明けに俺は都内の学校に転校する事になっている。
という事で俺は東京に行ったらしばらくの間は母親と別れて一人暮らしをする事になっているんだ。一人暮らしというのもちょっと憧れがあったのでこれからしばらくは楽しみだよな。
そんなこんなで今日はいよいよ東京に引っ越す日になった。なので俺は地元の空港前にて男子友達と別れの挨拶をしてる所だった。
「いやー、でもマジで残念だなー。春樹が東京に行っちゃうなんてさ。もっとお前と沢山遊びたかったぜ」
「俺だって皆と別れる事になるのは凄く残念だよ。まぁでも婆ちゃん家はこっちだから長期休みの時とか帰ってくると思うよ。だからそん時はまた皆で遊ぼうな」
「あぁ、そうだな! というか逆に俺達が東京に遊びに行く事もあるだろうし、そん時は俺達に東京案内とかしてくれよなー?」
「もちろん。そん時は俺が皆の観光案内をしていくから、いつでも遊びに来てくれよ。皆が東京に遊びに来てくれるのを待ってるからな!」
「おうよ。それじゃあ東京に遊びに行ける事が決まったらすぐに連絡するからな!」
そんな感じで俺は男子校の友達とはいつも通り明るい感じで別れの挨拶をしていっていた。
まぁどうせ長期休みがある時はこっちの田舎町に帰ってくるだろうし、またいつでも皆と会えると思うのでそんな悲観する事もなく明るく別れの挨拶をする事が出来ていた。
「はは、それにしても東京かー。俺は東京なんて行った事ないからわかんないけどすっごい都会なんだろうな。あ、そういや春樹って東京に行くのは今回が初めてなんだっけ?」
「いや、俺は親戚が関東の方に住んでるから、その親戚に会いに行くついでに時々東京観光は行ってたよ」
「あー、そういやそんな事も言ってたな。それでその親戚の中にめっちゃ可愛いお姉ちゃんがいるんだよな? はは、それもめっちゃ羨ましいよなー!」
「そんな話は昔に春樹から聞いた事あるな。確かそのお姉ちゃんが春樹にとっての初恋の人なんだろ?」
「あぁ、そうだよ。親戚の家に行くといつも俺と遊んでくれてた凄く優しくてオシャレで美人なお姉さんだったんだ。まぁ今は向こうは社会人だから会う機会は全然ないんだけど、でも子供だった頃は姉さんと遊ぶのが本当に大好きだったんだよなー」
俺には関東に住んでる親戚の姉さんがいるんだ。そのお姉さんとは夏休みとか冬休みの時とかによく一緒に遊んでもらってたんだよな。
でもそんなお姉さんも今は23~24歳くらいでバリバリの社会人をしてるし、俺と母さんもここ数年は都内に遊びには行ってなかったので、もう親戚の姉さんとは3年近くは会ってないはずだ。確か最後に会ったのは三年前の冬休みに遊びに行って成人式の写真を一緒に撮った時以来かな。
だから東京に引っ越したらまた姉さんと会って一緒にご飯を食べに行ったりとか遊びに出かけられたら嬉しいけど……だけどもう姉さんは今は社会人だからそういう遊んだりとか行くのは難しいだろうな。俺の母さんを見てると社会人は凄く大変だというのはよくわかるしさ。
(ま、でも東京についたら姉さんにもしっかりと挨拶にも行かなきゃだな!)
姉さんは今は実家を離れて都内のアパートで一人暮らしをしているのは聞いている。というか姉さんが今住んでる場所は俺達がこれから住む一軒家と同じ駅らしい。だからいつでも挨拶に行けるので、近い内に挨拶に行こうと思っていった。
「ふぅん、なるほどな。でもよく考えたら春樹の母ちゃんもめっちゃ綺麗な人だもんなー。マジで春樹の身内って凄く綺麗な女の人が多くて羨ましいぜー!」
「あー、確かに確かに! 春樹のお母さんってマジでモデルとか芸能人の仕事をやってても全然驚かないレベルの美人さんだよな! 黒髪のサラサラロングヘアに切れ長の瞳が特徴的な和風美人って感じだよな!」
「あぁ、正直息子の俺から見てもそう思うわ。母さんすっごく美人なんだよなー。絶対に社内とかでモテてるだろうし、息子の俺としてはそろそろ自分の幸せを考えて再婚とかしてくれても全然構わないんだけどなぁ」
「あはは、春樹の母ちゃんは春樹の事が一番大切だから、そんな再婚とかは考えてないんじゃね? いや実は前に春樹の母ちゃんが、俺んちの酒屋さんにお酒を買いに来た時があったんだけどさぁ……」
「え? 正嗣の酒屋に? うん、それで?」
「あぁ、それでその時に俺んちの母ちゃんが世間話で春樹の母ちゃんに再婚とかは考えてないのかって尋ねたんだけどさ、そしたら“私は春樹がいるだけで凄く幸せだから彼氏とか旦那を作るとかは一切考えてないです”って微笑みながら言ってたんだぜ?」
「え? 母さんがそんな事を言ってたのか?」
母さん達がそんな会話をしてたなんて全然知らなかったので俺はビックリとした。母さんは新しく彼氏を作ったりとか再婚とかは一切考えてなかったんだな。
「あぁ、そうなんだよ。そんで本当にそう思っているっていう感じの微笑みだったぜ。だから春樹の事がすっごく大切なんだなーってのが凄く感じたよ」
「あ、そういえば俺も春樹のお母さんの事で今思い出したんだけど……春樹のお母さんって俺とか正嗣とかと会う度にさ、いつも俺達に向かって“春樹と遊んでくれてありがとう”って深々とお辞儀してきてくれるんだよな。本当にめっちゃ凄い人格者というか優しいお母さんだよなー。あはは、本当に良いお母さんで羨ましいよ」
「そ、そっか。まぁ母さんの事を褒められるのは凄く嬉しいけど……で、でもやっぱり母さんの事をそんな褒められるとちょっとこそばゆい感じもするな」
「あはは、確かに家族の事を急に褒められたりすると気恥ずかしい感じになったりするよなー」
正嗣達から母さんの事をベタ褒めされていって若干気恥ずかしくもなったけど、俺は凄く嬉しい気持ちにもなっていっていた。だってやっぱり母さんの事は昔から大好きだしさ。
という事で俺はそんな優しくてカッコ良い母親の事を誰よりも誇らしく思いつつ、それからも俺は正嗣達と他愛無い話で盛り上がっていった。
「あははー……って、あ、そうだ。そういえば春樹って東京では男女共学の高校に転校するんだろ? いやそれマジで羨ましいよなー! 女子との出会いがこれから沢山あるなんて凄く羨ましいぞー!」
「確かに確かに。女子と交流が出来るなんて男子校の俺らからしたら本当に羨ましいなー! あ、彼女とか出来たらちゃんと俺らに報告しろよー? そしたら全力で祝ってやるからさ!」
「はは、そんな簡単に彼女なんて出来ないって。まぁ今まで男子校だったから女子との出会いは多少あるかもしんないけど、それでも彼女を作るなんてかなりハードル高いだろー」
すると今度は俺がこれから通う事になる男女共学の高校の話で盛り上がっていった。
俺達は今までずっと男子校で生活してきたから誰も彼女はいないんだ。だから俺が男女共学の高校に行くのを正嗣達が羨む気持ちは凄くわかる。
まぁでも男女共学の高校に行くからといって彼女が出来るかと言ったらそれは全く別の話なので、俺は笑いながらそんな簡単に彼女なんて出来ないと否定していった。
すると正嗣達も俺と同じように笑いながらこんな事を言ってきた。
「はは、そんな事ないだろー。だって春樹って母ちゃんと同じで顔立ち整ってるし、性格も優しくてめっちゃ良いヤツじゃん。さらに家事全般も凄く得意だなんて、もうこんなの好かれるポイントの塊だろー! いやマジで春樹が女の子だったら俺達皆で春樹の事取り合ってたぜー?」
「あはは、確かに確かに! 春樹の作る飯っていつもめっちゃ旨いし、制服のボタンが取れたらいつも縫ってくれるもんな。そう考えると春樹って女子力が本当に高いよなー。あーあ、もしも春樹が女の子だったら俺達は皆春樹と付き合ってたのになー」
「あはは、何だよそれ。お前ら男共から告白なんてされても全然嬉しくないからな! 告白されるんだったら絶対に女子の方が良いわ!」
「「あはは、そりゃあそうだ!」」
そんな変な馬鹿話をしながら俺達は一緒に笑っていった。するとその時……。
―― ぴんぽんぱんぽーん……♪
『まもなく東京行きの便のご案内を開始します。チェックインを済ませた方は手荷物検査場までお越しください』
「おっと、俺の乗る飛行機の案内がきたか……よし、それじゃあそろそろ行くわ」
「あぁ、わかった。それじゃあ東京でも元気でな。何か困った事があったらいつでも連絡しろよ」
「それとこっちに帰ってくる時はちゃんと連絡しろよな。あと俺達も東京に行く事があったら言うからさ。だからまた遊ぼうぜ!」
「あぁ、わかった。それじゃあまたな、皆!」
「「おう、またな!」」
そう言ってまた会おうと約束を交わしていってから俺は友達と空港で別れていった。そして俺はそれからすぐに手荷物検査を済ましていき、東京行きの飛行機に搭乗していった。
そして俺は飛行機の指定座席に座って窓の外を眺めながら、先ほどの友達とのやり取りを思い出していった。
「はは、本当にこの町に住んでる友達は皆良い人達ばっかりだったよな。まぁ最後にめっちゃ変な事を言われたけどさ」
―― もしも春樹が女の子だったら俺達は皆春樹と付き合ってたのになー
最後に正嗣達からそんな変な事を言われたのを思い出してちょっとだけ吹き出してしまった。流石に男子友達からモテモテになってハーレムBL展開になるなんて嫌だからな。
まぁもちろん家事が上手かったり優しいから俺みたいなのと付き合いたいって友達が言ってくれるのは嬉しいっちゃ嬉しいけど……でもそういうのは男子友達からじゃなくて女子友達に言って貰いたい言葉だよな。
でも俺は今までずっと男子校だったから、そんな嬉しい言葉を投げかけてくれる女子友達なんて一人もいないんだけどさ、はぁ……。
「まぁでもこれからは共学の学校に通う事になるんだし、何かこれから女の子と新しい出会いとかがあったら嬉しいよなー……って、あ、この飛行機ってテレビも見れるんだな。何か面白い番組とかやってるかな?」
その時、俺は自分の座席にタブレットが備え付けられている事に気が付いた。
どうやらこの飛行機は一人一台タブレットが備え付けられており、Wi-Fiも完備されているので空の上でもテレビやネットニュースなどが見れるようになっているようだ。
なので俺は暇つぶしにその備え付けのタブレットを操作してテレビ画面を開いていってみた。そして適当にテレビ番組をザッピングしていると……。
『……もうすぐ夏休みも終わりですね! という事で今日の占いコーナーはなんと特別版! 夏休み明けの九月の運勢がまるわかり、史上最強の星座占いのコーナーです! 恋や勉学に悩んでる学生の子達はこの占いを参考にしてみてね!』
「……ふぅん? 星座占いか」
テレビ番組を適当にザッピングしていると、キッズ向けの番組が開いた。そして今から星座占いのコーナーが始まる所のようだ。
ちょうど今日から東京で暮らす事になるし、これからの運勢を見るのも面白そうだなと思ったので、俺はそのままキッズ向けの番組を開いて自分の運勢を見ていく事にした。
「さてさて、それじゃあ俺のてんびん座の運勢はどんな感じかな……おっ!」
『それでは続いてはてんびん座の学生の皆の運勢です。てんびん座の夏休み明けの運勢は……なんと1位です!』
「おっ、マジか。それは普通に嬉しいな。ちなみに夏休み明けのてんびん座はどんな運勢になっていくのかな?」
『てんびん座の学生の皆はもうやる事なす事全てが上手く行く事に一ヶ月となりそう! もしかしたら新しい出会いなどが沢山あるかも!? このチャンスを逃さぬようにしっかりと頑張っていきましょう! 時には大胆に行動するのも良い事に繋がるかも!』
「ほうほう、やる事なす事全て行くのかー……って、あはは。流石にそれは言い過ぎじゃないかな?」
どうやら星座占いの結果だと夏休み明けの俺の運勢はとても良いらしい。やる事なす事全て上手く行くだなんてちょっと言い過ぎな気もするけど、でも良い事を沢山言われる分には俺も嬉しいから別にいいや。
「それにしても新しい出会いか。はは、それじゃあ可愛い女の子と沢山出会えたら最高だなぁ……って、あ、あれ……何だか……急に眠くなってきたな……ふぁあ……」
俺はそんな事を呟いていると何故か急に強い眠気に襲われていってしまい……そのまま俺は大きな欠伸をしていった。そして気が付いたら……俺はそれからすぐに深い眠りに落ちていってしまった……。
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―― ピンポンパンポーン♪
「ん……あ、あれ……?」
俺は飛行機のアナウンス音が聞こえて目を覚ましていった。どうやら俺はいつの間にか深い眠りについてしまったようだ。どれくらい寝ちゃってたんだろう?
『まもなく当飛行機は羽田空港に到着致します。シートベルトを着用し、お座席のリクライニングは元の位置に戻すように……』
「あ、もうすぐ到着なのか」
その飛行機からのアナウンスはもうすぐ東京に着くというアナウンスだった。という事は一時間以上は眠っていたようだ。
(こんなにも長時間寝ちゃってたなんて……うーん、もしかして結構疲れてたのかな?)
俺はそんな事を思って軽く背伸びをしていきながらも、もうすぐ東京に到着するという事にワクワクとしながら座席のリクライニングを元の位置に戻していった。
という事で俺はこれから大都会の東京で暮らす事になるんだ。それじゃあこれから始まる東京での新生活を全力で楽しんでいくぞ!




