51 エピローグ
福原瞬さんへ
初めまして。私は斎藤伊織といいます。
石田瑠璃子と斎藤海斗の一人娘です。
あなたにはお会いすることが難しいとのことでしたので、こうして手紙を書きました。
両親は、自動車事故で一緒に亡くなりました。私が十六歳の時でした。
幸い、叔母がよくしてくれたので、私は大学に進学することができました。
十分な金額の保険金もありましたしね。私は今、大学生活を謳歌しています。
両親の遺品整理の時に見つけたのが、「血の鏡」という本でした。
ページの間には、母からの手紙が入っていました。どうやら私が二十歳になったらこの本を渡そうと考えていたようです。
本の中では仮名になっていた二人が、自分たちのことだとその手紙には書かれていました。
あなたが母と行っていたことや、父と関係していたことについては、正直申しますと衝撃がぬぐえません。嘘であって欲しいと何度も思いました。
とても仲の良い両親でした。私は一身に愛情を受けて育ちました。
彼らの過去に、こんなことがあっただなんて、未だに信じられない思いなんです。
事件についての記録も調べました。あなたの起こした事件については、残虐で、身勝手で、許せない思いはあります。
けれど、私は「伊織」と名付けられました。
その意味について、私は深く考えました。父からも母からも、名付けのきちんとした理由を聞いたことがなかったんです。
瞬さん。私はあなたを理解したい。
ルリちゃん、も海斗、も亡くなった今、それができるのは私だけなんだと思うんです。
あなたのことが好きになりました。不思議なことですね。
実際にお会いしたこともなく、声を聞いたことすらないのに。
あなたが今、かなり悪い状態にあるとは聞いています。文字を読むのも困難だと。
なので、今回はこのくらいで終えますね。
また手紙を書きます。
いつかお会いできるのを夢見て。
斎藤伊織
了




