シロと黒い百合
9話:名前の知らない緑の人
「おやおや、どうしたんですか?こんなところに人間さんがいるとは。」
鋭い眼光を向けられた私は背筋に冷たいものが走った
「あぁ。ごめんなさい、怖がらせるつもりはなかったんですよ。ただ、獣人の校舎方に人間さんが来るのが珍しくて」
「いえ…すこし歩いてきて」
あぁそうか見たことのない景色だったのは獣人側の校舎だったからか。
獣人の校舎は人間の校舎とは少し古く、所々にひびが入っている
そしてこの人からの視線が痛い
「今は授業中なのでは?」
「水仙先生なので…」
「あぁ、あの人ですか」
緑の人は頭を手で押さえ、あきれたような顔をしていた。
「あの人は頭と顔はいいのですが、性格がよくわからない変人なんですよね」
「分かります」
「分かってくれますか。」
よくわかる。もの凄く分かる。
あの人を一言で言うなら変人、二言で言うなら頭のネジが数本抜けている変人だ。
水仙先生はいい人なのだ。多分。
でもあの人の『変人』のインパクトが大きすぎて、『いい人』がかき消されている。
実際、あの人が家庭教師の時、勉強を教えている時は優しく先生だったが、休憩をしている時などは私の中の『普通』が毎回ねじ伏せられていた。
「私も被害者の一人なので…」
「あなたもですか!」
最初の時に私に向けた鋭く冷たい目とは打って変わって、きらきらとした目で名前の知らない緑の人は私の手を強く握った。