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いつかまた四人で

作者: 来生ナオ

 好きになったのは、高校1年生になったばかりの春のことだった。一重の目元がかっこいい。ミディアムヘアが良く似合う。足が速くて陸上部の女子エース。笑うと花が咲いたみたいにかわいらしくて、みんなに平等に優しい美咲みさきさん。




「あのさ……話したいことがあるの。放課後、時間あるかな? 部活終わるの待ってるから」


 私がそう声をかけると、美咲は不思議そうな顔をしてから、笑って答えた。


「うん、わかった」


 「何の話なの?」とか「改まってどうしたの?」なんてことは聞かない。そういうところも好きだった。




 夜も更けた17時過ぎ。12月も半ばを過ぎた今、この時間になると冷え込みも激しい。時折瞬く古びた電灯が昇降口を寂しく照らす。手袋に包まれた手を握ったり開いたりして待っていると、部活を終えた美咲が走ってきた。


かなでごめん……! 待ったよね、顧問の話が長くてさ」

「ううん。大丈夫だよ」


 カラカラに乾いた口で辛うじて返事をする。美咲に呼ばれるだけでありふれた名前も特別なものになった。緊張に鼓動が高鳴る。


「話は歩きながらでもいい?」

「…………すぐ、済むから。ここでいいかな?」

「……うん。いいけど……どうしたの?」


 美咲が不思議そうに首を傾げながらも了承する。これから私がしようとしていることは、ともすれば関係を壊しかねない。それどころか、私の高校生活自体を危険に晒す。それでも、せっかく仲良くなれた美咲と、このまま疎遠にはなりたくない。


 一度スゥッと息を吸い込んで、意を決して口を開く。


「好き」

「……え?」

「ずっと、ううん、最初から。美咲のことが好きだった。私と……付き合ってください」


 パチっと電灯が瞬き、一瞬あたりが暗くなる。明かりが戻った時、美咲は驚き、困惑した様子で、目を泳がせていた。


 あぁ、ダメだった。半ば予期していた反応だ。これ以上顔を見ていられなくて自然と視線は落ちていく。昇降口の中と外、ちょうど扉を閉めた時の境界線が、まるで私と美咲を隔てる壁のように見えた。


「好き、って…………だって私たち、女同士、で……」

「うん。でも…………言いたかった、から……」


 どうしよう。泣きそうだ。視界がぼやける。どちらかと言えば地味な見た目の私と、クラスでも人気者の美咲。仲良くなれただけでも、奇跡だったのだ。


「…………あ、あのさ! …………私、恋とか愛とかそういうのよくわかんなくって。えっと……付き合ったら、やっぱり、するのかな……? キス、とか」

「私は……したいな」


 当てつけるように、投げやりな気持ちで答えていた。大丈夫。まだ、声は震えてない。


「…………わ、わかった。じゃあ、今、してみよう」

「うん」


 半ば機械的に返事をしてから、耳を疑った。今、してみよう……?


「顔、上げて……?」


 両手で肩を掴まれて驚いて顔を上げれば、目の前に美咲の顔がある。一重の目元、薄い唇、毛穴まで見えそうな距離で、美咲はほんの少し頬を赤らめていた。


「え……今、してみよう……って? キスを?」

「うん。できるか、わかんないし。何もできないのに付き合ったって意味ないでしょ?」


 そうなのだろうか。そういうのは、ゆっくりしていくもので。いや、私はしたいけれど。


「そう……なのかな」

「そうだよ」


 美咲の顔が近づいてきて、避ける間もなく唇が重なった。


「んっ」


 思わず変な声が漏れる。美咲に、触れている。当然ながらものすごい至近距離で、キスしている。部活を終えたばかりの美咲からはふわりと汗の匂いがして、柔らかい唇が押しつけられる。

 永遠にも思えた時間は、しかしほんの数秒だったのだろう。


「……できた」


 唇を離した美咲は、それでも充分に近すぎる距離で、今度こそはっきりと頬を赤く染めていた。


「できた……?」


 状況を処理しきれないまま鸚鵡返しに言葉を発する。


「な、なんか……すごい、ドキドキした。これが……キスかぁ……へへっ、しちゃった。ファーストキス」


 照れたように頬を掻いて笑う美咲に、今更自分の顔が熱くなった。


「あっ……えと……私も……初めて」

「本当? なんか、ごめんね。 初めてが私で」

「いや、その、えと、むしろ嬉しいっていうか」

「じゃあ…………付き合おうか。よろしくお願いします」

「…………あ、はい! こちらこそ……!」


 神妙な様子で頭を下げた美咲に、半ば呆然と頭を下げるので精一杯だった。


 その日は、どうやって帰ったのかよく覚えていない。途中までは美咲と2人で夜道を、手を繋いで歩いた気がする。いつの間にか私は家に着いていて、夜ご飯を食べて、お風呂にも入って、気づけばベッドに横になっていた。もう何度目か、指先で唇をなぞる。美咲の、触れた場所。少し汗ばんだ手の感触、柔らかい唇の感触、つい先ほどの出来事のそれが、よく思い出せなくて、なんだかもったいない。


「付き合おうか……」


 美咲に言われた言葉を復唱して、あぁ、付き合えたんだ、恋人になれたんだという実感がじわじわと胸を満たした。


 その日はなかなか寝付けなかったけれど、幸いにも翌日は土曜日だった。電話しようか、いきなりそんなことしたら引かれるだろうかと逡巡しているうちに日曜日も終わり、月曜日。


 どきどきしながら学校へ行くと、昇降口で美咲が友達と話しているのが見えた。美咲と同じ陸上部の凛子りんこ穂波ほなみだ。これから朝練なのだろう。


「あっ、奏。おはよう!」


 気づいた美咲がパタパタと駆け寄ってきた。少し間を空けて凛子と穂波もついてくる。


「あ、ほんとだ。おはよー」


 と、凛子。明るくて元気な、クラスの中心にいるような子だ。背中まで伸びた長いポニーテールと背の高さもあって名前の通り凛とした印象を受ける。


「おはよう、カナちゃん」


 と、サイドテールの髪を揺らして遠慮がちに言ったのは穂波。おとなしくて、口数も少ない。専ら相槌を打っている子だけれど、意外なことに凛子と仲が良い。


「3人ともおはよう……え、えっと……」


 今までどんな風に話していただろう。続く言葉を見つけられずにいると美咲がにっこりと笑って顔を近づけてきた。


「今日もかわいい」


 いきなり耳元で囁かれてボワっと頬が熱くなる。


「ふぇ!?」


 顔を離した美咲がやはり小声で続ける。


「付き合ってることは……ナイショの方がいいのかな」

「あ、うん……」

「りょーかい。じゃあ、私たち朝練だからまた後でね!」


 私は呆然と、グラウンドの方へ向かう美咲を見送ることしかできなかった。


 朝練を終えて教室に戻ってきた美咲は、いつも通りだった。だいたいずっと凛子たちに捕まっていて、なかなか私と話すタイミングはない。残念なような、ほっとしたような、自分でもよくわからないふわふわした気持ちで迎えた昼休み。


「美咲、お昼一緒に食べよう」


 いつも通り凛子が美咲に話しかける声が聞こえてきた。ふわふわした気持ちでついぼんやりしていたが、さっさと教室を出なければいけない。慌てて弁当箱を取り出そうとしたところで、答える美咲の声が聞こえてきた。


「ごめん、今日は奏と約束してるんだ」


 していない。


「……へー、そうなんだ。わかった! また後でね」


 背中に凛子の視線が突き刺さる。 


「奏、屋上行こ?」

「えっ……あ、あぁ、うん!」


 背中に視線を感じつつ教室を後にし、向かった屋上は今日も当たり前のように盛況だった。ベンチは粗方高学年の生徒に取られている。やむなくまだ空いている木陰に向かった。ちょうど良い木の下に座ろうとしたところで美咲がそれを制するように一歩前に出る。


「ちょっと待って」

「え?」


 進み出た美咲がポケットからヒラリと何かを取り出した。


「はい、どうぞ」


 地面に敷かれた可愛らしいピンクのハンカチは、言っては何だが美咲にしては乙女チックなデザインだった。いや、そうじゃなくて。


「いや、いいよ。ハンカチ汚れちゃうでしょ」

「え? でもハンカチ敷かなきゃ奏のスカートが汚れちゃうよ?」

「いや、そんな不思議そうに言われても……今までこんなことしたことなかったじゃん。どうしたの……急に……」


 こんなに優しくされたら、もっと好きになってしまう。そう戸惑っていたら、悪戯っぽい笑顔で美咲が頬を寄せてきた。


「だってさ、彼女は大事にしなきゃ」


 カッと頬が熱くなるが、私も赤面させられてばかりではない。


「そ、それなら私だって、美咲のこと大事にしなきゃじゃん?」

「うん。でもそれは、また今度ね」


 私の言葉をさらりと躱した美咲はもう一枚ハンカチを取り出して隣に敷く。自分用だろう。けれど今まで地面に座るのにハンカチを敷いているところなんて見たことがない。私に気を遣わせないように、だろうか。


「あ、ありがとう……。失礼します」


 明日は私が持ってこよう、と決意して遠慮がちにハンカチの上にお尻を乗せると、隣に美咲も座る。距離が近い。お弁当を食べようと膝の上に取り出す動作で肩が触れ合う。ぶつかる二の腕が柔らかかった。


「奏って綺麗な髪してるよね」


 そう、不意に髪をひとふさ触れられる。


「へっ……あ、そう……かな。ありがと」


 伸ばした黒髪を今日は縛ることなく流していた。日頃から手入れしているのは、美咲に「きれいだね」と言われたかったから。嬉しくてニヤニヤした笑みが浮かびそうになるのを必死で堪えなければならなかった。


「いただきます」と言う美咲に続いて私も「いただきます」を言う。早起きして作ったお弁当も、あわよくば美咲に食べて欲しかったのだ。

 おかずをのろのろと口に運びながらタイミングを窺っていると、同じくタイミングを窺っていたのだろうか、チラリと横に流した目と目が合った。2人して思わず「ふふっ」と笑みが溢れる。


「ねぇ、クリスマス、どうする?」

「クリスマス……そっか、もうすぐだよね」


 25日は今週末の土曜日。24日は2学期の終業式だ。白々しい返事をしながら期待しなかったわけがない。まぁ、恋人同士なら当然……。


「24日でもいいけど……ゆっくりするならやっぱり土曜日のほうがいいよね」


 美咲はそう当たり前のように話を進める。


「うん……そうだね」

「デートプラン考えておくから、空けておいてね?」


 そう言ってニコッと笑う美咲に、胸がいっぱいになった。愛されている、とても大事にされている、そんな実感が私を満たしていく。どうしよう、今、すごく触れたい。抱きしめて、キスをして、「大好きだよ」って言いたい。でも学校でそんなことできないから、代わりに自信作の卵焼きを箸で掴んだ。


「美咲、これ食べてみて。私が焼いたの」


 言いながら美咲のお弁当箱に卵焼きを置く。緊張しながら見守る前で、美咲は「わーありがとう」と卵焼きを口に入れて、破顔した。


「すっごく美味しいよ! ありがとう奏。じゃあ私も。はい、あーん」


 そう言って美咲は自身の弁当から小ぶりなミートボールを取って、そのまま差し出した。これは……間接キスなのでは……?


「あ、あーん」


 若干人目が気になりつつも、間接キスの欲求には抗えずにパクリと箸を咥える。


「どう……かな」


 ミートボールは手作りらしく素朴な味がした。一口で食べられる大きさなのはたまたまなのか、それとも……なんて、期待してしまう。


「美味しい」

「そっか……良かった」


 美咲がほっとした顔をする。


「もしかして、美咲が作ったの?」

「う、うん……普段料理なんてしないからちょっと不安だった。えへへ」

「お、美味しいよ! すっごく!」


 思わず身を乗り出してそう言うと、美咲は少し気圧されたように目を丸くしてからふにゃっと笑った。


「……そっか、ありがと!」




 翌日、そして翌々日も、美咲は私を理由に凛子たちの誘いを断って、私とお昼を食べた。私の方も、僅かに同じになる帰り道で手を繋ぐために美咲の部活が終わるまで教室に居残るようになった。一緒に歩けるのは時間にしてほんの十数分。それでも美咲と手を繋ぐためなら数時間教室に居残って自習するのは苦ではなかったし、たまに窓からグラウンドを走っている美咲を見下ろすのは楽しみですらあった。



「奏」


 そう、凛子に声をかけられたのは木曜日の放課後のことだった。私は美咲を待って教室で自習をしていて、夕焼けが教室を照らし出す。


「…………なに」


 自然と固くなる声で答えながら振り向くと、そこには凛子だけでなく穂波もいる。だが、こちらを睨みつけるように見据える凛子と違い、穂波は戸惑うように目を泳がせていた。


「最近さ、美咲と仲良いよね」

「……前から、友達だったじゃん。私たち」


 言外にあなたたちとも、と匂わせる。


「そうだね。でも、奏の方が付き合い悪くなったんじゃん」

「え? そんなつもりなかったけど。勝手に気を利かせてくれたのは凛子でしょ?」


 凛子の責めるような言葉に、自然と自分の言葉にも棘が混ざった。


「…………ふーん。そっか。けど友達ならさ、なんで独り占めするわけ? わざわざお昼の約束までして。私への嫌がらせ?」

「そういうわけじゃ……」


 私だって言ったのだ。「凛子や穂波と食べなくていいの?」と。けれど美咲は笑って言った。「凛子や穂波とは部活でも会えるし大丈夫だよ」と。


「そういうわけでしょ! 一緒に食べるなら私たちも誘えばいいじゃん。前みたいにさ」


 白々しいことを、と内心で毒づいた。先に私を仲間外れにしたのは凛子たちだ。くだらない、本当にくだらない、理不尽とも言える理由で私は凛子に敵視された。この1年守ってきた『美咲の友達』という立場は、凛子によってあまりにも簡単にグラついた。


「凛子? 穂波も。何してるの?」


 唐突に聞こえた声に3人が揃って振り返る。教室の入り口から美咲がこちらを覗いていた。いち早く反応したのは凛子だ。


「ちょっと話してただけだよ〜、もう帰るとこ。美咲は?」

「奏がいなかったからまだ教室かなと思って。帰ろ」

「あっ、うん。ごめん今行く。今日は終わるの早かったんだね」


 慌てて勉強道具を片付けて鞄に突っ込む。同じ陸上部のはずの2人がここに来ているのだから、とっくに部活は終わっていたのだろう。


「うん、木曜日は顧問いないから解散早いんだよ」

「そうなんだ」


 凛子と穂波の間を通って美咲の元へと向かおうとして、足を止めた。この流れで教室の戸締まりを押し付けてしまうのは寝覚めが悪い。すると、それを見越したかのように凛子が言った。


「戸締まりはやっとくから、帰っていいよ。2人ともまた明日ね」

「凛子ありがとう、行こう奏」

「え……あ、ありがとう……」


 美咲は凛子たちに一緒に帰ろうとは誘わない。凛子たちも何も言わずに見送る。そのことに少しの優越感と不安を覚えた。


 その日は美咲と手を繋いでいても、どこか心ここに在らずだった。美咲が私を優先してくれていることはこの数日でとても感じていた。それ自体は素直に嬉しいと思う。けれど、凛子や穂波だって美咲にとっては大事な友達のはずだ。なのに少しも悪びれずに私を最優先にする美咲の考えていることが、わからない。




 12月25日。クリスマス当日。


 待ち合わせをしたショッピングモールに行くと、美咲は既に待っていた。今日は制服姿ではない。美咲は赤のセーターにスラリとしたジーンズを合わせて温かそうなグレーのコートを羽織っている。細身の美咲にはよく似合っていた。


「ごめんね、美咲。待った?」

「ううん。私も今来たとこ」


 答えて上から下までじっくりと私の姿を見る。今日は気合を入れてお洒落してきたのだ。白とピンクのチェック柄のニット服に、下は短めのスカートとファー付きブーツ。それにゆったりとした白いコートを羽織ってみた。髪も今日は編み込みだ。


「どう……かな?」

「すっごく可愛いよ。思わず見惚れちゃった、行こっか」


 そのまま右手を取られた。


「え」


 あまりにも自然に取られてしまったことに驚いて声を上げると、美咲はパッと手を離して苦笑する。


「ごめん、つい。誰かに見られたら困るね」

「えっ、あ、うん。そう……だね」


 離れた温もりを少し名残惜しく思うけれど、美咲の言うことはもっともだ。クリスマスということもあってカップルは多い。中には同じ学校の生徒もいるだろう。


 2人でショッピングモールを適当にまわって、フードコートでご飯を食べる。特に買うものがあるわけではないけれど、大好きな美咲と2人で歩けるだけで嬉しい。やっていること自体は友人の時と変わらない。けれどここには凛子も穂波もいない。同じことをしていても、そこにある関係性は確かに違うのが少し不思議だった。


 日も傾いてきてそろそろ解散かな、プレゼントいつ渡そうかなと思い始めた頃。


「そろそろ移動しよう」

「移動って?」

「着いてからのお楽しみ、ね」


 悪戯っぽく美咲が笑う。


 すっかり日も落ちた時間。バスに揺られて美咲と共にたどり着いたのは、どこかの植物園だった。この時節はイルミネーションをやっているらしい。色とりどりの灯りが夜闇を彩る。光のトンネルを行き交うのはカップルや家族連ればかりだ。


「すごい、綺麗。近くにこんな場所あったんだね」


 私が感嘆の声を上げると美咲は満足げに笑った。


「でしょ? 意外とみんな知らないんだよね。行こ? トンネル抜けた先に美味しいカフェがあるんだ」


 言って先導するように歩き出した美咲の手を追いかけて取った。驚いて振り返った美咲に、得意げに笑いかけようとして、少し照れてしまった。


「こ、ここなら、平気だよ。みんなイルミネーション見てるし」


 我ながら決まらないなぁ、と思うけれど美咲は嬉しそうに笑って手を握り返してくれる。


 美咲と並んで光のトンネルを歩く間、まるで夢の中にでもいるようなふわふわとした心地がした。これが現実だなんていまだに信じられない。今の私たちは友人同士に見えているのだろうか。それとも恋人に見えるだろうか。あるいは、姉妹かもしれない。


「奏」


 不意に美咲に話しかけられた。


「うん?」

「なんていうか、すっっごく綺麗! なんでだろ」


 言いながら美咲はイルミネーションを振り仰ぐ。曖昧な問いかけは、しかし私にもわかった気がした。美咲の視線を追うように私も空を仰ぐ。


「私も、こんなにイルミネーションを綺麗だと思ったのは初めて。たぶん…………美咲が、いるから、かも……」


 言葉にすると一層照れ臭い。


「ふふ、そっかぁ。私も……そう、なのかなぁ」


 トンネルを抜けて、花畑の中を歩く。点々と光るのは、電飾で彩られた光るオブジェだ。道の先には、木で組まれた建物が見える。美咲の言っていたカフェだろうか。


「あのさ……美咲」

「ん、なに?」


 ごくりと、唾を飲んだ。今日、聞こうと思っていたのだ。


「美咲はさ、私のこと……好き?」


 この1週間ずっと考えていた。美咲が私と付き合い始めたのは、私が告白したから。ただ、それだけ。美咲は異性愛者なのかもしれない。なのに、私に付き合って、そのせいで凛子たちとギクシャクしてしまうのは、私としても望むところではなかった。


「…………その答えはさ、もう少し、待ってもらえるかな」

「えっ? け、けど……」


 驚いて美咲を振り返った。その言い方だと、「好きになるかもしれない」とも受け取れる。そんな言い方をされたら、期待してしまう。


「上手く、言えない気がするから」


 するりと、繋いでいた手が解ける。


「…………わかった。でも、私のことそんなに優先しなくていいからね。凛子たちとも……っん」


 言葉が遮られたのは、唇に何かが押し当てられたからだ。ぬるっとペタついた感触は……。


「クリスマスプレゼント」

「……リップクリーム?」


 美咲に唇に押し当てられたリップを受け取る。


「ん。凛子たちのことはさ、奏は気にしなくていいよ。私の問題だし…………誰と付き合うかは、私が決める」


 付け足されるように言われた言葉は、どこか冷めた響きで私の耳に届いた。


「……あ。あり、がとう。あっ、私も。はい、プレゼント」

「わぁ! ありがとう! 開けていい?」


 私が慌てて取り出したプレゼントを受け取った美咲は、もういつも通りだった。


「うん、どうぞ」


 小ぶりな紙袋から出てきたのは小さな花飾りがあしらわれた髪留めだ。


「ふふ、かわいい」

「走ってる時、前髪邪魔そうだったからさ。留められるのあったらいいんじゃないかな、と思って」

「うん! 欲しかったんだ。ありがとう!」


 早速美咲が自分の髪に付けようとするも、慣れていないのか付けたり外したりで髪が乱れていた。


「ふふ、貸して。付けてあげる」

「んー、お願い。私不器用なんだよね……」


 受け取った髪留めを付ける。初めて触れた美咲の髪はサラリとしていて、近づいた時にちょっとだけいい匂いがした。


「はい、できた」

「ありがとう。似合ってる?」

「うん。とっても」

「へへ、やったぁ」


 嬉しそうに手鏡を取り出す美咲を見ながら、それをどこか白々しく感じてしまう自分が嫌だった。まるで、喜び方のお手本を見ているみたいだ。


 

 それから、美咲とは時折電話で話すようになり、たまに2人で出かけて、冬休みの課題も一緒にやった。同姓同士だと家に呼ぶのに家族の目を気にしなくていいとはいえ、それでも気恥ずかしくて結局いつも外で会う。


 冬休みはあっという間に過ぎていき、年も明けた1月3日。私たちは2人で初詣に来ていた。


「奏、あけおめ〜」


 私を見とめるやパッと笑顔になる美咲が愛らしい。


「明けましておめでとう。美咲」


 少し迷ったけれど、やはり気恥ずかしさがあって着物ではなく普段着だ。美咲も同じでホッとする。クリスマスの時と同じグレーのコートとジーンズ姿。私もまた、迷いに迷った末代わり映えのない服で来てしまった。クリスマスデートと変わったのはニット服の色くらいか。ただそれも、コートの前を閉め切ってしまっているからほとんど見えない。


 三ヶ日とあって人でごった返した神社で何とかお参りを済ませて、一息つく。


「すごい人だね〜」

「うん、ほんと。美咲は何お願いしたの?」

「えー、こういうの言ったら叶わなくなるって言うじゃん。ナイショ」


 人差し指を唇にあててふふっと笑う。


「じゃー、私もナイショ」

「……来年さ、教えてよ。今年何お願いしたか」


 それは、来年も一緒にいてくれると思っていいのか。


「う、うん……来年、ね」

「あ、美咲ちゃん!」


 唐突にそんな声が響いた。美咲と共に振り返るとそこにいたのは凛子と穂波だ。穂波は振袖姿である。花柄の浴衣にアップにした髪は普段おとなしそうな穂波にしては少し派手にも思えるが、よく似合っていた。


「あ、凛子。あけおめ〜」

「あけおめ、奏も」

「うん。明けましておめでとう」

「2人とも、明けましておめでとう」


 凛子も美咲も和やかだが、なんとなく穂波の表情が固い気がした。


「なんだ、奏と来てたんだね。奏が一緒でも私は気にしなかったのに」

「んー、でも凛子より先に奏と2人で約束してたから。勝手にメンバー増やせないし。ごめんね、どっかで埋め合わせるからさ」


 表面上は和やかに、けれどそこに確かにピリッとした空気が流れる。どうやら、凛子にも初詣に誘われていたらしい。


「そっか、別に大丈夫だよ。私たちもう帰るとこだからさ。また、学校でね」

「うん、またね」


 去って行く凛子と穂波を見送って、恐る恐る美咲の顔を窺った。その笑顔の下に隠されたものは窺い知れない。


「……私は、良かったのに。凛子たちがいても」

「えー、私は奏とデートしたかったよ? そこに他の子いたら邪魔でしょ」


 まただ。邪魔、と言った響きが、妙に冷たい気がした。


「美咲は……凛子とか穂波と、友達じゃないの?」


 私の問いに美咲はパチクリと目を瞬かせる。


「友達……って、なんだろうね。私は……友達って思ってたよ。凛子も、穂波も、奏も」

「うん……私も、思ってた」


 みんな、友達だと。けれど、あまりにもあっさりと、凛子は私を見限った。


「さ、おみくじ引きに行こ」


 気を取り直すようにそう言った美咲は、やっぱりいつも通りで、私だけがどこかモヤモヤとしていた。



 冬休みが終わって3学期。

 教室はいっそ奇妙なほどに平和だった。美咲が私とお昼休みを一緒に過ごすのは変わらないまま、凛子との微妙な関係は表面上は解消されたかに思えた。私がいなければ3人は普通に話しているし、授業で必要とあれば4人でグループを組むこともあって、そういう時も特段私が仲間はずれにされるようなことはない。

 しかし、それは本当に "表面" でしかなかったのだろう。


「ねぇ、あの子だよ。カナデって」


 そんな囁き声が、廊下を歩いていた時に聞こえて来たのは1月も末。密やかなその言葉は私に聞こえることを意図していないのだろうが、自分の名前というものは不思議なことに耳につく。


「クリスマスにホテルから……」

「……パパ活? とか……」

「見た人がいるって」


 そんな噂話が囁かれ始めたのはいつからだったのか。自分の噂話というのは、当人にはなかなか入ってこないものだ。

 けれど、正直なところあまり気にしてはいなかった。噂だけで実害がない、というのもある。しかしそれは、私がようやく関係が改善されつつある凛子を疑いたくないだけだったのかもしれない。



 事態が動いたのは、2月の14日のことだった。


「なぁ、これ、俺の靴箱に入れたのお前?」


 そう、不意に声をかけて来たのはクラスメイトの男子だ。私はいつもの通り放課後の教室に一人居残っていて、そろそろ美咲の部活も終わる頃だろうと片付け始めた折だった。


「何のこと?」


 振り返ると、その男子は片手で持っていた紙片をひらりと投げて寄越した。机の上にパサリと落ちたそれは手紙の封筒だ。まったく心当たりがなくて、問いかけるようにその男子を見返す。


「読んでみ?」


 促されて封筒を開けると、中には一枚の便箋が入っている。開いて目を通せば、そこには信じ難い文字列が並んでいた。私からすれば、言葉にするのもおぞましい文章。


「なに……これ……」


 声が震えた。文末にはっきりと書かれた私の名前。否定も、擁護もできない、容赦のない悪意がその一通の手紙から感じられた。見えない毒に、触れている手が穢されるような感覚がして、思わず手紙を取り落とした。

 そこに書かれていた内容は、要約するとこんな感じだ。


『あんた、結構好みだしヤってやってもいいよ? 私経験豊富だからさ笑 めっちゃ気持ちよくしてあげる♡』


 私の反応に、その男子も察したらしかった。


「やっぱ、お前じゃねーんだ?」

「違う! 私、こんな……!」

「まぁ、そうだとは思ってたけど。俺が何も話してねーのに、噂になってたし」

「噂……?」

「うん、ひでぇことする奴もいるもんだな。お前誰かの恨みでも」

「ごめん! 戸締まりよろしく!」


 私はガタンと席を立つと、鞄に荷物を突っ込んで教室を飛び出した。胸騒ぎがする。目を逸らしていた。実害がないから。美咲の態度は変わらないし、凛子や穂波も何も触れなかったから。


 でもそんなの、おかしかったのだ。


 二段飛ばしで階段を駆け降りて、靴を突っかけるように履き替えて、グラウンドの方へ駆けた。ここまで美咲と会わなかった。もうとっくに、部活は終わっているはずなのに。裏手にあるグラウンドへ行くために校舎の角を曲がろうとした時だった。


「あんたがやったんでしょ!!」


 そう、怒鳴り声が聞こえて来て急停止した。角から除けば、美咲の背中が見える。


「酷いよ、美咲。私たち友達じゃん。そんなことするわけ」


 答える声は凛子だ。もう1人、穂波もいる。


「うるさい! この後に及んで、見苦しい……。全部……わかってるんだから!」


 私は、驚きのあまり立ちすくんでいた。いつでもにこやかで、誰に対しても平等に優しい美咲が、声を荒げているところを初めて見た。


「何よ……全部って」

「全部だよ。ここ最近の噂も、今日の……酷い手紙も。出どころは全部調べた。間違いない。なんでバレないと思ったの? 手紙も見せて貰ったから間違いない。アレ、穂波の筆跡だよね?」


 美咲の声を聞きながら、ゆっくりと一歩を踏み出していた。角度が変わって、凛子と穂波の姿も見える。穂波は俯いていて顔がわからないけれど、凛子は、まるでペリペリと音がするように、美咲が言葉を重ねるほどに笑顔が剥がれて、代わりに悔しげに睨みつける表情が露わになっていく。彼女からは私が見えたはずだが、一瞥した視線はすぐに美咲に戻された。


「……そっか。そこまで、わかってるんだ。わかってて、仲良くしてたんだ? なんでよ……なんで奏なの? 美咲の一番の友達は私でしょう!? 奏なんて、お情けで仲間に入れてあげてるだけじゃない!」


 遂に本性を表した凛子の怒鳴り声に、息を呑んだ。お情け……私は凛子に、情けをかけられていた。友達と思っていたのは、私だけだった。


「……ほ、本当に凛子がやったの……?」


 思わず尋ねた私に、美咲が弾かれたように振り返った。私の存在に初めて気づいたらしい。


「奏……」

「美咲も知ってたの? 全部?」


 美咲は決まり悪そうに目を逸らす。


「ごめん……奏を、傷つけたくなくて」

「なにそれ。私だって……当事者じゃん」


 私の知らない場所で、彼女らだけが戦っていた。私だけが、何も知らなかった。気づかないふりをしてきた。

 気まずい沈黙を破ったのは、凛子の舌打ちだった。


「奏、美咲に何吹き込んだの? 文句があるなら、私に直接言えばいいじゃん。それを」

「違う! 奏は何も言ってない。凛子こそ、文句があるなら直接言いなよ。わざわざ手の込んだ手紙まで穂波に書かせて。どうせ凛子がやらせたんでしょ!?」

「違う!!」


 美咲の糾弾に叫んだのは凛子……ではなく、これまで黙っていた穂波だった。口数が少なく、普段の会話でも専ら相槌を打っているだけの穂波が、珍しく声を上げた。


「ほなみん……?」


 凛子までが驚いた顔をして穂波を見やる。しかし穂波はそんな周囲の反応は意に介さぬ様子で続けた。


「違う、全部、私がやった。手紙も、私が考えて書いた。だから……凛ちゃんは、悪くない」


 それは、明らかな擁護だった。


「穂波、こんな奴のこと庇うわけ?」


 穂波は震えそうになっている手をぎゅっと握りしめて、正面から美咲を見返した。


「こんな奴じゃない。そっちこそ、証拠もないのに凛ちゃんのこと悪く言わないで」

「穂波は、こんなことする人じゃないでしょ」

「そんなの、なんで美咲ちゃんにわかるの? 私は、こんなことする子だよ。美咲ちゃんが言ったんでしょ、筆跡が私だって」


 穂波は一歩も引かない構えだった。睨み合うみたいに、二人の視線が衝突する。凛子も戸惑うように穂波を見ていた。

 その空気の中で、口を開くのには勇気が必要だった。


「……もう、やめよ。誰がやったのでもいいよ。もうしないなら、それでいいし。だから」

「だめだよ奏。奏が許しても私は許さないから。人の尊厳を傷つけておいて、何のお咎めもなしなんて、そんなわけないでしょ」


 美咲の声は驚くほどに冷え切っていた。いつものふわふわしてて優しい、あの美咲じゃないみたいだ。


「なら、何するの?」


 穂波も淡々と言う。そこにはいつもの引っ込み思案なところなんて少しもなかった。


「奏に謝って。地面に頭擦り付けて。尊厳を踏み躙ったんだから、それくらいしてもらわないと」

「……そんなことで、許してくれるの? やっぱり美咲ちゃんは優しいね」


 地面に膝をつこうとした穂波を、唐突に凛子が突き飛ばした。どさっと穂波が倒れる。


「ッそんなこと、してくれなくていい! 穂波は、私に巻き込まれただけでしょ。それとも何? 哀れんでんの? 美咲に、友達に裏切られた私が可哀想って」

「違」

「違くないでしょ! なんで……なんでよ。なんで私ばっかり。美咲は、私の友達なのに」

「凛ちゃんだって、私の友達だもん! 友達庇うのは当たり前でしょ!」


 今や凛子と穂波が睨み合っていた。二人とも涙目になっている。

 こんなこと、望んでいなかった。どこで間違えたんだろうと思う。凛子の気に触る言葉を私が言ったからなのだろうか。そこから私たちの関係は全部狂ったのだろうか。


「……美咲。帰ろう」

「けど」

「帰ろう! 帰るの! これは、私がされたことなんだから、許すかどうかは私が決める。美咲が……口出さないで」

「…………わかった」

「あ、うん……」


 こんなに、強い言葉を美咲に言ったのは初めてだった。初めてで、戸惑って、怖かった。嫌われたらどうしようと思った。

 それでも、美咲はいつも通りに私の手を握って言った。


「帰りにどっか寄ろう。話したいこと、あるから」

「……うん、わかった」


 美咲と一緒に寄ったのは小さな公園だった。なんとなくお店で話すのは憚られたのだと思う。ベンチに並んで座って、美咲は話し始めた。


「まずは、ごめん」

「えっ、な、何が……?」


 別れ話かもしれない。そんな不安が頭をもたげた。嫌だ。それなら、友達のままでもいいから。美咲と話せなくなる方が嫌だから。


「黙ってたこと。奏を、傷つけるかなって思って。それに……たぶん私のせいだから。私が、どっちつかずな態度で、みんなと仲良くしようとして。なのに、うまくいかなくて。ただ……四人でいたかっただけなのに」

「わ、私、も。私も、四人でいたかった。告白だって、する気なかった。でも、このまま疎遠になりたくないから。だから」

「うん……クリスマスに聞いてくれたことの答え、たくさん待たせてごめんね」

「ッ……ううん。気にしないで」


 やっぱりそうだ。別れ話だ。待っててと言わらてから、一日もそれを忘れたことはない。そのことを言わなかったのは、私を切り捨てられるのが怖かったからだ。このままそんなこと忘れて、ただなあなあで付き合ってくれればいいなんて思っていた。


「私ね、奏のこと、恋愛として好きなのかわかんなかった。でも、付き合ってから好きになるかもとか思ってた。でも……今なら言える。奏」

「ッ……うん」


 判決を待つ罪人の気持ちって、こんな感じなんだろうか。


「私は、奏が大事。奏が好き。奏のことが、好き。この気持ちが、恋なのかはわかんない。でもね、一緒にいて胸があったかくて、嬉しくて、それに……凛子のことがものすごく腹立たしかったの。奏も言ったみたいに、あれは奏のことで、私が怒るのは筋違いなのに。私が、許せなかった。それが、嬉しかった」

「嬉しかった……?」

「うん。私以外の誰かのために、こんなに怒ったの初めてだよ。だからね奏、遅くなってごめんだけど、改めて。私と付き合ってください」


 頭の中で鐘が鳴り響いた。白鳩たちがパタパタと飛び立った。嬉しくて、泣きそうで、信じられなくて、そのことがちょっとだけ、凛子と穂波に申し訳なかった。


「あ、当たり前じゃん。そんなの、わ、私……ずっと、好きで。でも、叶うわけないと思ってて。私、何にもできなくて」

「そんなことないよ。私たちきっと、奏がいなきゃ友達やれてなかった。大人しい穂波の声を聞いて、たまに主張が強くなる凛子を宥めて、みんなの妥協点を見つけて……楽しかった。ありがとう、奏」


 見ていてくれた、そのことがすごく嬉しかった。美咲はすごくすごく素敵な人で、私なんかにはもったいない。


「美咲。大好き」

「ふふっ、私も……大好き」


 美咲は照れたみたいに頬を染めていて、それがすごく可愛かった。そっと近づいて来た美咲の顔に、私も目を閉じて僅かに顔を近づけた。


 重なった唇は、柔らかくて温かかった。



 翌日から、凛子と穂波と話すことはなくなった。彼らが美咲をお昼に誘うこともなくなった。私の嫌な噂もぴたりと聞かなくなった。聞いたところでは、二人とも部活を辞めたらしい。


 二人が今、何を思って過ごしてるのかはわからない。休み時間に二人でいるところも見ない。でもたまに、一緒に帰っているらしいからそんなに仲は悪くないんだろう。


 いつか全部が過ぎ去って、何もかも時効になって、互いに互いを許せた後で、また四人で話せたらいいのにと、私はこっそりそう思っている。それは歪な関係だったかもしれないけど、一緒に笑い合ったあの時間が全部嘘だったなんて、そんなことはないはずだから。

 

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