8話
予想外の反撃に、蹲ると部屋へと戻った。
なにが起きたのか?
嫌がっているようには見えなかった。
が、完全に無防備だったせいでもろに蹴りが入ってしまった。
身悶えるのもカッコ悪いので、部屋のベッドに横になりながら
痛みが引くのを待った。
以前と痛みが引かないので、そのまま寝る事にした。
着替えてシャワーくらいは行きたかったが、今は立てそうにない。
「あの女……」
家に居座り、こっちから歩み寄れば反撃するなんて…
おとなしい子だと聞いていただけに、苛立ちが募る。
寝息を立て始めた頃、何か物音が聞こえて来た気がする。
電気がいきなり付くと、誰かが入って来た気がして目を覚ました。
目が合うと、さっきの蹴り上げた張本人だった。
「おい、なぜ入って来た?」
長谷川は起き上がると睨みつける。
「あ、いや、風呂先に入るかなって…呼びに来たんだけど…」
「…」
全く悪気がないのか、それともさっきのはなかった事にしてほしい
のか、理解に苦しむ。
「ノックはしたからなっ…それにさっきのは正当防衛だからな!そ
っちが先に手を出そうとするから…」
必死に言い訳を連ねるが、長谷川には全く理解しかねる。
そして、大きなため息を漏らした。
「僕は君には興味がない。だが、君は僕に好まれたいんだろう?違
うのか?」
「違っ……わねーけど…そう言うんじゃない…です」
「なら、なんだ?身体の関係があれば堂々とここに入れる。そう思
って来たんじゃないのか?」
「…なっ」
予想外だと言わんばかりの反応だった。
女子はそう言うのを期待しているのではないのか?
「君はなにを望んでここにいるんだ?僕になにを求めているんだ?
抱かれたいなら、なぜ拒むんだ?」
「誰が抱かれたいわけ……お、私はまだ未成年なのよ!普通手を出
すなんておかしいでしょ!」
「未成年…そうだったな」
「そうです!それに…好きでここに来たわけじゃ無いし…」
「なら出て行けばいいだろ?」
「家も無いし…あいつら家を売り飛ばしたせいで戻る場所も…ない
から」
俯くと視線が彷徨う。
「ここに居たいと言うわけか?」
「それは…そうなんだけど…」
「なら、なぜ部屋の入って来た?」
「だから…それは……大丈夫かなって、思って……」
一応は心配していたらしい。
それでも、今まで長谷川に近づいて来た女達とは全く異質な気がした。
肉体関係を迫るでもなく、一緒に居たいとそばによって気もしない。
触れようとすれば逃げるし、あまつさえ攻撃的になる。
そして予想外に痛い。
身長だって、スリッパなのに長谷川とさほど変わらない。
お手伝いさんとも仲良くなったのか、たまに笑い声が聞こえてくる。
食事の種類もなんだか変わって来た気がする。
草薙彩、彼女が来てからと言うもの、食べきれないほどの食事の量も
丁度いい量に変わっていた。
いつも残していたものが、丁度食べ切るといい量というのも不思議だ
った。
残す事に違和感はないが、皿が空になるのは不思議だった。
それが当たり前といえばそうなのだが、今まで疑問に思ったことはな
かった。
誕生日にしか出なかったケーキもたまに出てくるようになった。
それは彩がおつ手伝いさんと一緒に作っているせいだと分かった。
嫌じゃない…そう思えてくる。
彼女は決して淫らな行為はしてこなかった。
肌を極端に出さないと言うか、風呂から上がった後でもちゃんと服を
着込んでいる。
バスローブ姿で部屋をうろつく事は決してなかった。
あの後、篠原会長に話したら、盛大に笑われてしまったのだった。
「何よそれ?」
「だから〜会長があんな事言うから…」
「私のせいにしないでよ〜、それにしても身持ちが硬いのね〜。完全に
処女ね。よかったじゃない?浮気の心配はしなくてよさそうよ?」
「そう言う問題じゃ…もういいです」
「なになに?ちょっと残念だったの?」
それ以来、長谷川はこの話題を決して出さないようにしている。




