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妹の婚約者  作者: 秋元智也
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4話


帰ってきて早々に言われた言葉が…


『居心地悪いなら帰ってこなくてもいいんだぞ?』


同居人からの第一声だ。

爽だって好きでここにいるわけではない。

が、帰る家もなければ、お金だってない。

バイトで稼げる分はしれていて、学費だってかかる。


そんな中で、ここをも追い出されたら流石に困る。

それ以上に男ものの服も処分されてしまっているので、私服は女装

しかないのだ。


冗談じゃない。ここで出ていくわけにはいかない。


「いえ、こちらにお世話になるとなった以上は、我慢しますわ」

「ふん…遅く帰ってきて門が開閉する音が煩いんだ。もっと早く帰っ

 て来い。」

「それは…お言葉ですが、バイトしないと食費や学費が…」

「それなら出してやる。これでいいだろ?」


ブラックカードを机に置くと、それを使えとばかりに見下された気が

する。


上限なく使えるカードらしいが、何を買ったかとかが全部筒抜けにな

ってしまう。

これだけは使えないと思った。


バイトの時間を早めて、土日だけマックスで入る事にした。

一緒に暮らしていても会うのは朝くらいだ。

大学生と聞いていたが、どんな大学生活をしているのだろう?


家ではあんな横暴な態度なのだ。

大学でも同じなのだろうか?


少し興味が湧いてくる。


高校三年にもなると、大学にオープンキャンパスを見にいく事も増える。


「爽〜、どこ見にいく?そういえば南陵で今度オープンキャンパスあるん

 だけど、そこで芸能人くるってさ〜行こうぜ〜」

「南陵?…いいな」


南陵とえば、長谷川慎司の通っている大学だった。

ちょうど見にいけるチャンスだった。


ここで相手の弱みを握るのもいい。

自分を追い出されない程度には何ををつかんでおくのもいいだろう。

学生服にウイッグも化粧もしていないければ、彩とは思われないだろう。


「俺もいくわ」

「そうこなくっちゃっな!」


その日はバイトを遅らせて、南陵大学へといくことにしたのだった。

南陵大学は成績も優秀だが、それ以上に金持ちの家柄の人が多く。

なんらかのコネを作る目的で入る人も多いと言う。

その逆に、金持ち連中には、別の目的があった。

自分を支える、優秀な片腕を探す為に入る生徒も多いらしい。

どっちにも利益をもたらす関係という訳だった。


「ここの生徒に認められれば将来が安泰なんだぜ?」

「でもさ〜そう言う奴らって結構性格に難ありだろ?」


それも、あいつのように…

爽は同居人の事を思い浮かべると、うんざりする。


やっぱりどんなにお金があっても、あんな奴と一緒なんてごめんだ。

そう考えると呑気そうな尚弥が羨ましく思う。



やっと週末になると、南陵のオープンキャンパスへときていた。

やっぱり広いのもあるが、金持ちが多いだけあって、やることがなんで

も派手だった。


出店っぽいのは出ているが、全部が無料で配られている。


「なぁなぁ、爽〜あっちの屋台も無料だってよ!マジかよ!ここ来てーな」

「そんなんで決めるなって、それにここの偏差値って結構…」


「やぁ。君たちは見学か何かかな?」


いきなり声をかけられて振り向くと高そうなブランドに身を包んだ青年が

立っていた。

腕にはめた時計も、靴も、服さえも、爽が見てもわかるくらいに有名ブラ

ンドで着飾っている。


「はい。ですが…場違いかなって…」

「いや、そんな事はないよ。俺はここの二年生で林田誠。君可愛いね?

 ここに簡単に入れる方法教えてあげよっか?」

「えっ…」

「そんなのあるんですか!?」


食いついたのは隣の尚弥の方だった。


「君には難しいかもしれないけどね…君、名前は?」

「あの…大丈夫なんで…」

「この店行ってみて、ここは南陵の理事が通うお店なんだけど…君みた

 いな子なら、きっと気に入って入れてくれるよ?」

「結構です!」


あからさまに怪しい店だとわかる。

いくらお金がないと言っても、そんなバカにされる覚えはない。


「それとも、実践で教えてあげてもいいよ?」

「いいって言ってるじゃないですか!尚弥行こうぜ」

「おう…」


怪しげな雰囲気に急いでその場をさろうとしたが、すぐに腕を掴まれた。


「まだ見て回ってないだろ?俺が案内してやるって」

「だからっ、結構ですって!」


「おい、何をやっている?」


振り払おうとした時に、聞き慣れた声がして振り返った。

嫌な予感は的中するもので、そこにいたのは同居人の長谷川慎司だった。


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