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妹の婚約者  作者: 秋元智也
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18話

長谷川沙世の来日にはテレビのニュースで取り上げられたほど

の騒ぎになっていた。

そこまで大手の化粧品メーカーの社長とは影響力が大きいのだ 

ろうか?

クラスの女子も浮き足だっていた。


「ねーそんなにその長谷川沙世って人有名なの?」

「草薙くん、知らないの?ちょー有名に決まってるじゃん!この

 前のドラマにも主演で演じてた女優さんが使ってたあの透明感

 のある肌、あれって長谷川社長のところの化粧品を使ったから

 だって一躍話題になったのよ!透明艶肌ってやつ!」


女子は自分の鞄から出すと見せてくれた。

そう言えば最近新調した化粧品屋にもこれを勧められたっけ?


同じものを持っている事を思い出すと納得した。

ただ、化粧落としが面倒だと思っていたくらいで、そこまで気に

もしていなかった。


「へ〜そうなんだな…」

「男子も肌が綺麗に見えるのはいいと思う…けど…?」

「どうかした?」

「いえ、草薙くんも化粧してる?」

「どうして?」

「いえ、なんでもないです」


顔を近づけてにっこりと笑うと、女子の方から離れていった。

みんな顔を赤くして離れる姿が見ものだった。


たまに告白してくるけど、何も分かってないヤツなんかと付き合

う気などない。


その日の夜は急いで家に帰った。

あの女社長である、長谷川沙世が家に来るのだ。


その日はお手伝いさんも、少し遅くまでいる。

長谷川慎司もその日ばかりは早く帰ってくるらしかった。


「ただいま〜」

「おかえりささい…彩さま、早く着替えて来てください。もうす

 ぐ奥様がいらっしゃいますよ」

「え、もう?」

「彼の方は時間には煩い方なので」

「そうなんですね、分かりました」


部屋に向かうとすぐに着替えてくる。

髪も束ねた方がいいのだろうか?


いつもはそのままだったが、今日は三つ編みにすると横に流した。

少しは清楚っぽく見えた方がいいのだろうか?

そんな事を考えつつ、透明艶肌という名のファンデを付ける。


やっぱり少しナチュラル過ぎるだろうか?

いや、つけ過ぎよりはいいだろう。


軽くメイクにピンクっぽい口紅をつける。

自然に見える色を選んだのはくどさを感じないようにだった。


すると、玄関が開く音がして、お手伝いさんが慌ただしく走って

いった。


「いらっしゃいませ、奥様」

「あら、お出迎えありがとう。それより慎司はどこかしら?」

「まだ、お帰りになっておりません」

「じゃ〜うちに入り込んだネズミはどこにいるのかしら?」

「それは…彩さまなら二階に…」


言い終わらないうちに爽は笑顔を見せながら降りていく。


「お母様、お帰りなさいませ」

「あなたにお母さんだなんて言われたくないわ。どうせ、慎司にも

 好かれていないのでしょ?」

「それはどうかしら?それに、私、お母様が開発したこの透明艶肌

 気に入って使ってますのよ?」


化粧品メーカーの社長と言われるだけあってか、自分の商品を褒め

られて嫌な人はいないだろうと考えての作戦だった。


「それに、友人もみんな使ってますのよ。本当に素敵な商品ですわ」

「そう…ネズミの分際で人間の化粧品を使ってるの?穢らわしいわ」

「そんな事、言わないで欲しいです。悲しくなってしまいますわ」


演技も少し大袈裟なくらいの方がいいのだろうか?

反応を見る限り、嫌われているのがよく分かったからだ。


「奥様、食事の準備が整っておりますゆえ」

「そうね、お腹空いちゃったわ。」


そう言って席に着くと食事が目の前に用意されていく。

もちろん爽も席に着いたのだが、その瞬間皿ごと床にぼとぼとっと

落ちてゆく。


「なっ…なにを…」

「あなたは床で食べるべきでしょ?なぜ、同じ椅子に座ってるの?」

「なっ……」


一瞬、目を疑った。

せっかく作って貰った食事をこぼすなど許せなかったからだ。


食べれるだけでもありがたいと思うのに、それをわざと落とすなんて…


「なぜ、食べないの?跪いて顔を地面につけて食べなさいと言ってるの

 よ?それが嫌なら出て行きなさい」

「…ッ……」


父親は認めていたが、母親の方は断固と反対だったのだろう。

屈辱的な想いをぐっと堪えると床に膝を折ったのだった。

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