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妹の婚約者  作者: 秋元智也
18/33

17話

朝から長谷川が上機嫌なのが分かると、嫌な予感しかない。


「おはよ…」

「あぁ…」

「…」

「…」


会話らしい会話はない。

何が嬉しいのか?

昨日の事なら、爽の方はあまり気分がいいものではない。


「彩は、南陵大学に興味があるのか?」

「ないですね」

「勉強なら僕が教えようか?」

「全く興味すらないです」

「前のオープンキャンパスに来たのか?」

「なんですか?それ…」


珍しく多くの言葉が長谷川から紡がれていた。

が、それをも全部打ち消して見せた。


質問もそこで止まった。

言いたい事はそれで打ち止めだろうか?

なら、もう話すらしたくなかった。


「待ってくれ…彩は僕が好きか?」

「好きだと思えるんですか?そうだったらよっぽどお気楽な事

 ですね?」

「…」

「では、今日は早く出るので…」

「待て!」

「まだ、何か?」


振り向くと抱きしめらていた。

唇に当たる温かい感触も、爽に向けられているわけではない。


離れると、睨みつける。


「もういいですか?」

「あぁ…」


軽く牽制し横を通りすぎる。

爽は自分の食器だけを洗うとすぐに家を出た。

駅でいつものように着替えると学校へと向かうのだった。


授業中も聞いているようで、あまり耳に入っていなかった。


「なぁ〜そう思うだろ?」

「ん?何か言ったか?」

「おいおい、聞いてねーのかよ〜」

「悪かったって〜。なんて言ったんだ?」

「この前の南陵大学のオープンキャンパス行っただろ?あの後

 さ〜生徒会の篠原百合子先輩を見つけたんだって〜、それも 

 男と喫茶店入っててさー。そいつ結構顔いいんだよ。覚えて

 るか?俺らが絡まれた時、来た奴。」

「あぁ…覚えてる」

「そういつだったんだよ。篠原先輩のあの嬉しそうな顔…マジ

 であの男ムカつくだろ?」

「へ〜そうなんだ」

「なんだよ。それだけかよっ」


尚弥はそれが許せないらしい。

まぁ、仲が良くても別に関係ない。

どんな関係だろうが、自分には全く関係のない事なのだ。


「キス…してた」

「誰が?まさか篠原先輩か?」

「うん、その長谷川って男と…」

「長谷川?まさかあの時の男か!マジか〜やっぱりムカつく〜

 〜〜長谷川許すまじ〜〜〜」

「そいつ、別の女にもキスしてたぜ?誰とでもするみたいだな」

「なんだよそれ!なら、篠原先輩が弄ばれてるんじゃねーかよ」


そう捉えるのが普通だろうなと思う。


「そうだな…」

「女事の敵だろ!誰とでもするような最低男なんだろ?俺、今度

 言ってやる!あんな最低男はあなたには似合いませんって」

「そうだな…」


よっぽど見惚れたらしい。

尚弥はまっすぐな性格だから、きっとそのままの意味で取ったの

だろう。


どっちがタラシなのだろう?

あの時、彼女と目が合ったのも事実だ。

あれは俺を試している気がした。


咄嗟に素知らぬふりをしたが、内心それどころではなかった。


(やっぱり婚約者のふりなんかするんじゃなかったかな…)


卒業までの辛抱と思って今は我慢するが、いつまでキスだけで

済むだろう?

それ以上の事を求められれば、自ずとバレるのも束の間だった。


最近は成績を維持するのに精一杯だった。

バイトも少し減らしたが、その分家で勉強時間を増やす。

それ以外にもメイクもだいぶんと上手くなった。


多分外に出ても早々バレない自信はできた。

今はネットで色々と教えてくれるので、便利になったと思う。


毎朝のキスと寝る前のキス以外は、全く何もしてこなかった。

半年が経った。

後半分…そう思った矢先、思わぬ展開になった。


「明日、母が海外から帰ってくるから…それと彩に会いたいって」

「ブフッ!…な、なんで今更?」

「まだ会った事ないでしょ?それで会っておきたいって…多分嫌

 がらせするつもりだと思う。気をつけて…」

「嫌がらせ?それは気に入らないから追い出したいって事?」

「……まぁ、平たく言えば…」

「はぁ……」


なるほど、母親はギャンブルの借金に引き取ったような娘は認めな

いってことか…


そう思うと、あと少しの我慢なのにと上手くやり過ごす方法を考え

ねばという想いに至ったのだった。

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