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妹の婚約者  作者: 秋元智也
16/33

15話

キスが初めてだった…


それを聞いた時、長谷川は複雑な気持ちになった。

彩に好きな人がいるとわかった時点でこう言う事はもう、何度も慣

れているだろうと思っていた。


だから、負けないようにと勉強して朝、実践した。

長谷川にとっても初めてのキス…ファーストキスだった。


でも…彩も初めてなら、尚更嬉しい。

どうしてだろう?


朝のイラつきが今は、スッキリしている。

それどころか、ドキドキと心臓の音が激しくて煩い気がする。


こんな感情を抱いた事など、人生で一度もなかった。


「これは一体……」


相談したくても、相談できる相手がいない。

いや、一人だけいた。


「明日にでも聞いてみるか…」


拒否られたのに気分がいい。

こんな不思議な事があるのだなと考えながら部屋へと戻っていった

のだった。




朝、食事に降りると逃げるように駆け出すのを引き止める。


「昨日は許したんだ、今日は大人しく選ぶんだ。このままここにい

 る為にキスするか、それとも明日には出ていくか?」

「…っ」


怒った顔も可愛い。

こんな感情を抱くなんて、不思議でならない。

長谷川は自分がどうしてこんな事を思うのかを知りたくなった。


「キス…すればいいだろ…」


震える肩を抱き寄せると、今日は強引にではなく、優しく触れて

みる。

柔らかい唇から暖かさが伝わってくる。


目を瞑っているせいでまつ毛が長いのだと初めて知った。

こんなにまじまじと人の顔なんて見た事なかった。


唇を話すと、逃げるように出て行ってしまった。


「不思議だな…僕は一体どうしたんだろう」


長谷川は自分でも理解できないこの感情の昂りを唯一の友人に

話したのだった。


唖然とする篠原会長に長谷川はなぜかを問いただす。


「この感情はなんだと思いますか?」

「ちょっと待って…整理させて…、まずキスした時、ドキドキ

 したのね?」

「はい…」

「彼女の事を思うと顔が熱くなるのね?」

「はい、なぜか抱きしめたくなっていて…」

「…えーっと、それで彼女の反応はどうなの?」

「それは……」


言葉に詰まった。


「婚約者の子よね?」

「はい」

「前に手を出そうとして拒まれたのよね?」

「はい」

「キスした時はどうだったの?」

「好きにしろといっていたかな…」

「…ん?」

「だから…キスするか、家を出るかって聞いたら…」

「ちょっ、ちょっと待って!」


すぐに篠崎の声がストップをかけた。

それは脅しではないか?


いやいや、おかしいでしょ?

そもそも、好きで婚約者になったのならそれを言うのもおかしい。

親が勝手に決めたと言っていたが何かが違う気がする。


「どう言う経緯で婚約者になったんだっけ?」

「それは…彼女の親が借金の方に娘を…渡したわけで……僕は好か

 れていない?」


自分で口に出して、初めて気づいた。

これは…何かが違う。


「えーっと、嫌だってる子に手を出したって事でいい?」

「それは…嫌がってたのか…」

「脅さなきゃキスさえもできないようじゃ、嫌われてるでしょ?」

「…」

「長谷川くん?」

「夜に…電話相手に愛してるって言ってたんだ…僕の婚約者なのに」

「それってまさか…」


嫉妬したの?

と聞きそうになって、言葉を飲み込んだ。


「直接聞いてみる…」


ポツリと漏らした言葉に、篠崎会長がすぐに止めた。


「そんな簡単なものじゃないわよ?人の感情って。どう?いっその

 事試して見ない?」

「それはどう言う事だ?」

「いいから、いいから。私の言う通りにしてね!」


そう言うと、今日は家に篠原会長を連れて行く事になった。

少し不安はあったが、彩が帰ってくるのを待った。

バイトがあると言っていた。

暗くなって、やっと帰ってくると玄関から音がした。


「本当にやるのか?」

「いいからっ、相手の心が知りたいんでしょ?任せなさいって」


そう言うと、ゆっくり篠原会長の顔が長谷川の目の前まで近づいて

来た。


そして深い口付けすると、ちょうどドアが開いて彩が入って来た。


「あ、こっちにいたの…!!」


目の前に光景に固まると顔を赤くした。


「こんなところで何してるんですか?部屋に行ったらどうですか?」


平然と言うと出て行ってしまった。


「あら?反応が薄いわね?脈なしかしらね?」

「なっ…」


会長の声にすぐに彩を追いかけようとしたが、引き止められた。


「ここは最後までエスコートするものよ?」

「悪ふざけはほどほどにして下さい」

「はいはい。じゃー今日はこれで帰るわ」

「はい。もう来なくていいです」

「そんなつれない事言わないでよ〜」


笑いながら帰るとさっきの彩の反応が気になった。

本当に興味すらないのだろうか?


長谷川にはまだ理解できていなかったのだった。

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