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妹の婚約者  作者: 秋元智也
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14話

電話を切った爽は、まさか聞かれていた事など何も知らずに眠り

についていた。


朝、目が覚めるとキッチンへと降りていく。

朝食は簡単に作ると丁度、長谷川慎司降りて来た。


「おはよう〜、食べるか?」

「あぁ…」


なぜかご機嫌斜めな気がする。

コーヒーを淹れると簡単な朝食を作って一緒に席に着く。


いつものようにお手伝いさんが来る事が減った気がする。

それは爽が大体覚えているので、簡単なものは作って置けるからだった。


朝だけ来て朝食を作って、再び帰って、二人が出て行ってからまた来ると

いう二度手間を省くようにと爽が提案した事で、随分と楽になったと言っ

ていた。


多分自分からは言い出せなかったのだろう。


「昨日はよく眠れた?」

「あぁ…」

「いつのまにか二階の部屋に戻ってたのね?」

「そうだな」


返事が単調すぎてつまらない。

元々話す方ではないのは知っていたが、これ程とは。

全く会話が続かない。


昨日のあれはなんだったのだろう?


いきなり可愛いと言われて、少し動揺したが、すぐに打ち消した。

多分、酔って他の人と間違えたのだろう…と。


「食べ終わったらそこに置いといて…片付けておくから…」

「あぁ…」


席を立つと着替えに行く。

と言っても女子の制服にだ。

後で駅前で自分の制服に着替える予定だ。


ウイッグも外さなきゃと考えると軽く化粧もする。

今は男子でも日焼けのために化粧をする時代だ。


多少していても気にもならない。


着替え終わると、キッチンの片付けをして食器をしまう。

あとは出かけるだけと、振り返ると目の前に長谷川慎司が立っていた。


「わぁっ!…びっくりした〜」

「待て…動くなっ…彩、お前は僕の婚約者なんだ…そうだな?」

「あ…うん、そうだけど?」

「なら、いいよな?」

「は?何がっ?」


いきなりで動揺していた。

壁に押さえつけられると、唇に温かい感触が押し当てられた。


バチーンッ!


思いっきり引っ叩いていた。


「なっ…なにすっ…」

「なぜキスもできない?僕の婚約者なのに?」

「干渉しないんじゃなかったのかよ!」


いきなりで、理解できていなかった。

長谷川の頬に痛みが走る。


「今日から必ずキスする…それがお互い干渉しない条件だ」

「なっ…」


それだけ言うと、足早に出て行ってしまった。

呆然とする爽には、一体何が起きたのだろうと頭が今も混乱していた。


まさか、ファーストキスが男同士なんて思いもしなかったのだった。


「毎日って…嘘だろ…」


その日は、ずっと考えてしまっていた。

別に婚約者だから、そう言う事をしなきゃ行けないわけではない。

なのに、なぜ今更そんな事を言って来たのだろう?


前までは、何も言わなかったし、お互いに干渉する事もなかったはずだ。


昨日の事と何か関係があるのだろうか?

いくら考えても分からなかった。


「爽、何か悩みか?」

「いや…別に…」


まさかキスされた理由が分からないなんて、言えるわけがなかった。

バイトもミスばかりで、流石に早めに帰らされたのだった。


家に帰るのが憂鬱だった。

今朝の言葉が頭をよぎる。

どう言うつもりだったのか、問いただすかどうかを迷いながら歩いてい

ると、いつのまにかついてしまった。


玄関を入るとそ〜と中に入る。

誰もいないうちにと食事を済ませると食器を洗い、二階へと上がろうと

して足を止めた。


「帰って来てたのか?」

「あ…、う、うん……」


非常に気まずい。

こう言う時はどうやって話を誤魔化そうかと考えている間に長谷川が降

りてきていた。


「今朝言ったの覚えてるか?」

「ちょっ…前はこんな事しなかっただろ?だからさっ…」

「婚約者に触れて何が悪いんだ?少なからず僕は顔はいいんだろ?女子の

 ウケもいいらしいが?」

「そうじゃないっ……だから、初めてなんだ…」

「…」

「キスが初めてなんだよ!ばかっ!」


言い終わらないうちに鞄を振り回すと二階へ駆け上がった。

呆然と眺める長谷川を置いて部屋へと飛び込んだのだった。


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