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妹の婚約者  作者: 秋元智也
14/33

13話

バーで篠原会長に勧められるままに飲んでいたせいで、頭がくらくら

する。


「飲みすぎた……」


初めての場所でこんな失態をおかすとは…一生の不覚。

頭では分かっていても身体がうまく動かない。

会計は?

とも思ったが、今の自分ではうまく呂律が回っているかすら危うい。


「長谷川先輩、どうしたんですか?一緒に飲みましょ〜よ!」

「帰る…」

「えーでも、ふらふらじゃないですか〜休んでいきましょ?この近く

 にいいホテルあるんですよ〜」


誰か分からないが香水の匂いがキツい。

鼻にぷーんと付いて臭い。


外まで来ると、すぐに戻ると行って鞄を取りに戻っていった。

道路に向かって手を挙げると、タクシーが目の前で止まった。


すぐに乗り込むと家の住所を言って背もたれに身体を預けた。

家に着くと、少し安心したせいか目の前にいた彩に抱きついていた。


くんくんっ…


石鹸の匂い。


「やっぱり…可愛いな」


口からはいつも思っている事が飛び出ていた。

興味がないと言ってはいたが、気にならないわけはない。


媚びない、この彩に最近は少しばかり惹かれつつあったからだ。


「おい、酒くせっ‥この酔っ払いが!!」


何か怒っている気がする。

でも、どうでもいい。

彼女の柔らかに感触に抱き締められたい気分だった。


ハッと目が覚めるとベッドの上に寝かされていた。

長谷川慎司一生の不覚。

横に手を伸ばすと水が置いてある。


喉の渇きを潤す為にがぶ飲みすると、だいぶんは意識がはっきりして

来た。


自分の部屋…ではない。

一階の客間だと気づくと、そこまで運んだのが彩しかいない事に気づく。


「あれ…何か口走ったか?」


少し不安になりながらも二階へと上がる。

彩の部屋の前を通り過ぎようとすると中から声がしていた。

誰かと楽しげに話しているようだった。


「そうか…」


それもそうだろう。

友人の一人や二人、いてもおかしくない。

長谷川のように、全員を拒絶している訳ではないのだ。


「…………うん、分かってるって」


実に楽しそうだ。

気楽に話せる相手なのだろう。


「うん、愛してるよ」

「…」


一瞬、耳を疑った。

今、彩は何を言ったのかと。

一体誰に向けて言った言葉であろうか?


婚約者以外の男に、普通は言わないのではないか?

では、彩が長谷川を拒んだ理由は…すでに好きな人がいたから?

そう考えると納得がいく。


『まだ未成年だから…』


彩はそう言っていた。

が、本当は好きな人が別にいるから…だったら、長谷川を拒む理由

になる。


なら、なぜその人のところに行かないのか?

嫌なら逃げればいい。


長谷川家が監禁しているわけでもないのだ。

そういえば親が借金していると言っていた。

となれば、そのかたにここへ来たと言う事だろうか?


では、なぜ長谷川を拒否したのか?

分からない事だらけだった。


やって信じられる人が出来たと思ったのに…

まさかの裏切り行為だった。


「僕の婚約者なのに…」


婚約者になる事を了承したのだから、それに答える義務があるだろう。

それは、この家の主たりえる慎司に従うという事でもあるはずだった。


いつのまにかイラつき、部屋に戻るといてもたってもいられなかった。


「どうしてこんなにイライラするんだ…どうして…」


自分の感情なのに、一番自分が分からない。

こんな感情始めてだった。


いつもは誰が何を言おうが気にもしなかった。

それなのに…さっきの彩の言葉が頭から離れない。


『うん…愛してるよ…』


誰に言ったんだ?

電話の相手は一体誰なんだ?

彩とはどういう関係なのだろう?


その日は疲れていたはずなのに、朝まで眠れなかったのだった。

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