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妹の婚約者  作者: 秋元智也
13/33

12話

長谷川の父親、成政が帰ってやっと平穏が訪れた気がする。


あの日から長谷川慎司の様子がおかしい気がするが、お互い干渉

しないと決めたからには、なにもしない。


それが一番だった。

成政には好印象を与えたし、問題はないはずだった。


バイト代も順調に溜まって来ている。

学費は長谷川家から現金を貰って振り込みに行っている。


一応男子高校生で登録してあるので、そこは自分でやると言い張った。

学費だけでも出してくれるのはありがたかった。


あと一年。

せめて高校を卒業さえすれば働きに行けばいい。

そこまで我慢すれば、すぐにでも家を出ていける。


女装もしなくていい。

草薙爽という、自分を取り戻せるのだ。


そうなれば、きっと彼らとはもう縁も切れる。

何もなかったように毎日が流れていくだろう


それが一番いいのだ。

長谷川慎司は何をどうしようが、女性に、いや、人間に興味がないの

だろう。


それは、どんなに月日が経っても変わる事はないのだろうから…


家に帰る前に着替えると仕草も女性らしく。

だいぶんと慣れてきた気がする。


家では素のまま話していたが、それも少しは直し始めた。


風呂から出ると、ちょうどこの家の主人が帰って来た。

珍しく遅い。


「おかえりなさい」

「まだ起きてたのか?」

「お風呂入れるけど…」

「あぁ…可愛いな…」


いきなり目の前で言われた言葉に、一瞬固まった。


「は?」

「彩は可愛い。僕のお嫁さん…」

「おい、酒臭っ…どんだけ飲んだんだよ!」


いきなり抱きつかれると、反応に遅れた。

そのまま倒れ込むように眠ったのか、爽は押し倒されるところだっ

たのだと理解した。


男の力なら、抱き上げる事も不可能ではない。

が、それをしたら疑問を抱かれかねない。


考えた末に一階の客間へと運び入れた。

ベッドもきちんとされており。掃除も行き届いている。

いつでも使えるようにとはこの事だろう。


ベッドに寝かせると、サイドテーブルに水を持ってくる。

眠ったままなら、顔はいい。

あの態度と口調さえなければ、モテモテで、女性も選びたい放題だ

ったろうに…


「残念イケメンだな……」


一人呟くと部屋をでた。

これ以上は干渉しない。

それが約束でもあったからだ。


眠った長谷川に布団をかけると二階に自室へと戻った。

すると、丁度電話が鳴り響いて来た。


「はい、もしもし…」

『お兄ちゃん!大丈夫なの?』

「久しぶりだな…こっちは大丈夫だから、しっかり勉強しとけよ」

『それどころじゃないんじゃ…だってあの人達お兄ちゃんを売ったん

 でしょ!』

「まぁ〜な、でも快適に過ごしてるから平気だぞ?」

『何呑気な事言ってるのよ!バレたらどうするの?』

「まぁ、その時はその時だ。逃げるさ」


彩が心配でかけて来たようだった。

親からでも聞いたのだろうか?


やっぱり俺の妹だ、しっかりしている。

俺みたいに日本からも、親からも逃げられないのとは大違いだ。


「あと一年だから…そしたら…」

『分かったわ…私だけ逃げてごめんね』

「気にすんなって、俺は平気だから」

『うん…大好きだよ、お兄ちゃん』

「うん、愛してるよ。」


そう言うと電話を切った。

本当に大好きなのは家族で唯一、妹の彩だけといえるだろう。


スマホを切るとベッドへと寝転がる。

彩の為と身代わりを引き受けたけど、いっそ投げ出して逃げても

よかったのだろうかと考える事もあった。


でも、学歴が中卒と高卒とでは就職に大きく影響する。

爽は頭いい方ではないが、それでも平均値ではある。


親が親なら大学もと言いたいところだが、それは望めない。

自分に出来ることは、早く大人になって自分で稼ぐ事。


もう二度と親に干渉されないところへ行く事だけだった。

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