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妹の婚約者  作者: 秋元智也
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9話

『明日は父が来るから、そのように支度しておけ』


朝に言われた言葉を考えると、それはどう考えても長谷川慎司の父親

あの大手企業の社長である、長谷川成政の事だろう。


いきなり家に来ると言われても、何をすればいいか思いつかない。

掃除や料理はおつ手伝いさんが全部やってくれるし、あえてやれる事

などほとんどない。両親が来るといわないと言う事は、父親だけなの

だろうか?


どんな性格なのだとか、好き嫌いはとか、何も事前連絡はない。

どうしろとか何も言われて無いので、何をすべきかわからない。


朝は会話らしい会話もなかった。

あの一言だけ、言われてフリーズしている間に大学へと行ってしまっ

た。


頭を悩ませる事ばかりだった。


「はぁ〜…もうやだ…」

「なんだよ〜朝からため息か?」

「尚弥かぁ〜、お前はいいよな〜」

「ん?あぁ、また両親がやらかしたか?」

「まぁ、そんなところだ…」


まさか言えない。

勝手に婚約者ができて彩の代わりにその婚約者と一緒に暮らしている

など、口が裂けても言えない。


(やっぱり相手の両親に会うなら気に入られるようにしなきゃだよな…

 でも、思いっきりこの前の事で怒らせてるんだよな〜…)


ため息も吐きたくなる。

いきなり壁ドンからのキスを迫られれば誰でも反撃するだろ?


自分の言い聞かせたが、追い出されはしなかったのだから、よかった

と言うべきなのだろうか?


あの後、部屋に勝手に入った挙句、風呂に呼びに来たと誤魔化したが

沈黙が耐えられなくて部屋に戻った。


一応、風呂から出たと部屋に言いに来たので、そこまで怒ってはいな

かったと判断してよかったのだろうか?


全く考えが読めない。

女性に興味が無いふりして、いきなりだったから、よけいにむっつり

なのだろうと判断した。


彩に相応しいか判断すると思っていたが、実際暮らしてみて、分かっ

た事はクズ男だという事だった。


「そうなんだよな〜、やっぱりこのままじゃダメだよな〜」


彩にあんなクズとの生活なんてさせられない。

ここは俺がしっかりせねば!


授業中もずっとそのことばかりを考えていたせいで、何も手に付かな

かった。


「草薙くーん、今日カラオケ行かない?」

「いや。バイトだから。」


即答すると、尚弥に手を振って学校を出る。


普通に遊びたい。

普通の暮らしを手に入れたい。


今なら叶えられるかもしれないけど、いつかはあそこを出るとなると

先立つものがいるのも事実だ。


稼げる時に稼がねばっ!


長谷川成政に何か渡して好感度を上げるか?

いや、金持ちに何を渡せばいい?

逆に安物を渡しては失礼だろ?


いくら考えても何も浮かばなかった。


バイトを早めに退けて家に帰るとすぐにシャワーを浴びて着替えた。

今日は女性らしいロングスカートに身を包み、清楚っぽいイメージを

植え付ける。


せっせと料理を作るお手伝いさんを手伝いながら、特別な日に食べる

と言っていたケーキを一緒に作った。


「これは旦那様もお好きですよ?」

「そうなんですか?」

「はい、きっとお喜びになると思います」

「そうだといいです」


最近は前以上に仲良くなったお手伝いさんと、一緒に話す事が楽しい

と感じるようになった。

料理は元々好きだったし、知らない事を知るのは楽しい。


長谷川慎司が帰ってくると、一瞬立ち止まった。

いつもならスルーするところをまじまじと眺めてきていた。


「なんだよ、おかえり〜」

「ただいま…」

「なんだよ…」

「…」


聞いた爽が悪いのか?

全く反応に困る。


いつもの事と無視して作業に戻った。

全く雰囲気の違う爽の姿に見惚れていたとは思いもしなかった。


もちろん、慎司すら自分の感情が理解できていなかった。

家にと突然入り込んできた女はてっきり自分に好かれる為に来たの

だと思ったが、そうじゃ無いらしい。


全く見向きもせずに、逆に手を出して欲しいのかと思えば逃げる。

父親からは進展状況を聞かれたが、何も答えられなかった。


手すら握れていないのだから。

どうしたらいいか分からないのだ。


帰って来てみればいつものような短パン姿ではなく、清楚系な落ち

着いた女性の振る舞いで、ぶっきらぼうな言い方だけが気に触る。



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