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妹の婚約者  作者: 秋元智也
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1話

暗い部屋に帰って来てはいつものように冷蔵庫を眺める。

入っているのはわずかに残された豆腐とネギ。

冷凍庫に凍らせた肉が少し。


調味料はまだ残っている。

草薙爽は高校三年になったばかりだった。


家族は父母と、アメリカに留学中の妹の彩がいる。


父も母も同じ職場での結婚で、同じ趣味を持っていた。

それはギャンブル依存症だ。


お互いに結婚して子供ができたら辞めると言っていたらしいが、今

もそれは続いている。


借金取りに追われた事など、何度もあった。

それが嫌で妹は奨学金をもらいながら勉強していたが、一時誘拐さ

れかけた時があった。

爽が駆け付けなかったらそのまま車で攫われて、帰らぬ人となって

いたかと思うと怖くなる。


それ以来、妹の彩は留学を推し進め、すぐに家を出て行ってしまった。

兄の爽も一緒にと言われたが、そこまで英語が流暢には話せないので

辞退した。


男の爽には、彩ほど危険はないとタカを括っていたと言うのもある。


丼ものにすると、米の上に乗せて食事を済ませた。

もっと材料さえあれば…


いつも思うが、料理をしない母親にはどうしようもない。

ビール以外はおつまみしかない。


密かにやっているバイトで食事代を稼ぐしかないこんな家、早く出た

い。


「ただいま〜〜〜爽ちゃーん。帰ったわよ〜」

「おーい、居ないのかー」


母親と父親はどっちも酔っているのか、あまり関わりたくない。

部屋に篭ると布団を被った。


すると部屋にまで二人して入って来た。

鍵がないのが悔やまれる。


「爽ちゃーん。見てみて〜、かわいでしょ〜」

「おいおい、もう寝てるのか〜」


「何なんだよ!酔っ払い!どこにそんな金があったんだよ!金がある

 なら食事くらい作れよ!」

「え〜〜〜いいじゃない〜、私の稼いだお金よ?どう使ったっていい

 でしょ?」

「そうだぞ〜、爽だってバイトしてんだろ?だったらそれで買って食

 べればいいだろ?」

「…な、なんでそれを…」

「担任から聞いちゃったんだよなー」

「ねー」


つまらない事をちくる担任にもうんざりする。


「そうそう、今日ね〜借金があまりに膨れ上がっちゃって〜出禁に

 なっちゃった〜」

「は?」

「これ、みてみろーかわいいだろ?来てみろよ?」


渡されたのは女性ものの服と下着だった。

これを渡して着ろと?どういう神経してるんだ?


「俺は男だけど?」

「彩に似合うと思って買って来ちゃった〜」

「そうよ〜、彩ちゃんは明日から婚約者と一緒に住むのよ〜」


「はぁぁぁぁーーー?」


二人の言うことに、依然ついていけないが、ただわかることは…

彩に勝手に婚約者を決めて来たという事だった。


「ふざけんなっ!彩は今アメリカだって知ってるだろ?」

「知ってるわよ〜、だから〜代わりに爽ちゃんが行くのよ〜。彩が

 帰ってくるまでに相手の心を掴んでおくのよ〜。じゃないと、私

 達、借金地獄になちゃっうの〜〜〜」

「そうだぞ〜、着替えはこれなっ!制服はこっち。支度金にって貰

 ったお金全部使っちゃったから、あとはなんとかしてくれよな!」


父の最後の言葉にハッとなる。

支度金?使ったって…?


勝手に買って来て、勝手に決めて、勝手過ぎるにも程がある。

もし、彩がこれを聞いたらどう思うだろう?


渡された住所とカードキーは爽の手元で明日からの苦労を思い起こす

ようだった。

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