56.ハゼルトの始まり
「本来言っちゃダメなんですが」
「特例特例」
「お二人は権力に物を言わせ過ぎです」
立ち話もあれだからと、部屋に入り、リリアナと対面する形で座る。
「…………まぁ、身内しか居ませんし、良いですか」
私は血縁関係皆無だけどね。ほら、庇護下だから。関係者。
「まず、ハゼルトについてどこまで知ってます?」
「一番初めに魔法を得た一族であり、魔法において屈指の実力を持つ。死の森を『聖域』としていて、実際に昔は他種族と暮らしていた。………だったか?」
「その知識があれば問題ありませんね」
そう言って、リリアナが語ったのは、ハゼルトと他種族の関わり。
昔。ハゼルトがまだ死の森に暮らしていた時代。
森にはハゼルトの者たちと精霊や魔物、数人の悪魔が共存していた。
いつの日からか、そこに神様と天使、そして暮らしていた悪魔とは別の悪魔が二人、やってきていた。その四人はそこで暮らす訳ではなく、たまに来ては帰って行った。
それが何年も続いた。
しかし、ある日を境に四人は来なくなってしまった。
ずっと待っていると、神様が一人でやってきた。
服はボロボロで、身体のあちこちから黒い血が流れていた。
神様は、悲しそうな顔をして、「もう来れない」「自分はもう死ぬだろう」と言った。
神様の姿から、森の住民は分かったのだ。
この人は、もうすぐ堕ちてしまうのだと。
神が穢れ、闇に堕ちることは赦されない。
神様は、天使と一人の悪魔に森のことを頼み、それ以来、姿を見せることは無くなった。
「これは、ハゼルトの書庫にある本を一部抜粋した内容です」
すごい暗い内容なんですけど………。
「ハゼルトは悪魔や精霊と契約を結び、神と悪魔への信仰、関わりを持ちました。いつからか、直系の者だけが契約を結ぶようになり、今は伯父様たちで止まっています」
「止まっている……? リリアナはしていないのか?」
話の内容を聞く限り、リリアナも直系だし、してそうだけど……。
「………私は、できないんですよ」
「え……」
「正確には、私の『契約者』が亡くなっているため、契約が行えない状態です」
契約した後に亡くなったなら、行えているはず。なら、亡くなった後に契約したってこと? それって可能なの?
「私自身、いくつか疑問に思い調べましたが、何も見つかりませんでした。そのため、私は完全に契約を行えていません」
「………待て。それと俺に話していないことに、何の関係が」
ユラエスの疑問は当然のもの。
だからこそ、リリアナの発言は不明だ。




