533.龍王
「とりあえず、中入るぞ」
「は? 会いたくねぇんだけど」
「そう言うな。少しだけでも…………はぁ」
ヴァーミリオンが言葉を切り、頭に手を当てる。
「………すごい魔力だね」
「え、感じないけど」
「国境付近ですからね」
なんでそれ感知できる…………そうだこの人たち全員人外だ。
「へぇ、あれが長か。迫力あるな」
「なんでお父さんはナチュラルにリリーちゃんたち側いるの?」
「八割才能」
「残り二割は?」
「努力……って言いたいが慣れだな。シエルたちといると自然と分かる」
つまりハゼルトに気に入られるっていう運なんですね。
「やろうとすれば誰でもできるだろ」
そのできるまでがとてつもなく長そうなのですが。
「てか、一回整理して良い?」
この一時間、いろいろありすぎてなんだけど。
「どうせまとまらないだろ」
「そのうち理解できるしそのときで良いでしょ…」
自分たちが分かるからって!
「時間の無駄」
「効率悪いだろ」
効率厨が……。
「てか、えげつない速度でこっち来てるけど」
「俺は知らん」
いや、そこはヴァーミリオンが何とかしてくれるところでしょ。
「……てか、なんか創造主っぽいのいるような」
「龍王がリフィアの母親なんだから、当たり前でしょ」
「へぇ………ん?」
「あぁ、言ってなかったな」
混乱するだろうなぁ。自分の母親も創造主なんだし。
「ま、混乱してるのは置いといて、さっさと行くぞ」
「え、対応しないの?」
「俺の仕事じゃない」
「えー、私やらないよ?」
「ウェルドとスフィアがやるだろ」
「は!? なんでよ!」
二人とも、大変そう……。
「あら、久しぶりだってのにあなたが迎えじゃないのかしら?」
「……………はぁ」
後ろから声がして、ようやく存在を認識できた。
暖かいのに冷たい魔力。起こっているのが伝わってくる。この人が、
「来るなら連絡寄越せ。じゃねえと俺は対応しない。知ってるだろ、龍王」
「あら、我が子にようやく会えるんですもの。ちょっとくらい見逃しなさいな」
創造主の一角。リフィアさんの母親の龍王。
「あぁ、動いていいわよ。別に行動を制限するつもりなんてないもの」
そっちを向くと、青銀色の髪と瞳を持つ女性と、藍色の髪と瞳を持つ男性。
女性は龍王だから、男性は伴侶、なのかな。
ニコニコしてるけど、笑ってない……。
「それにしても」
チラリとこちらを見られ、
「この子が娘と孫? あらやだめちゃくちゃ可愛い!!」
急に私とリリアナを抱き締めた。
この人、大きいから私たち二人なら抱き締められるのか。
「ちょ、あの……」
この人が創造主? 想像つかないんですけど!