508.選択
「私が、いなかったら、クロくんは生きてたんだよ!」
そう言うと、パチンという乾いた音が響き、数秒後に、ホロウさんに頬を叩かれたのが理解できた。
ホロウさんは、何故か辛そうな顔をして、私を見下ろす。
「あいつが死んだのは皇女のせいじゃない。俺らの、俺の失態だ」
………違う。ホロウさんは、悪くないじゃん。
「皇女とあいつを引き合わせたのも、そうなるよう、全部俺が仕組んだ」
「仕組、んだ………?」
「…………少し、皇女の母親の話をしようか」
ホロウさんはクロくんの入ってる棺の前に腰を降ろし、なんてことなさそうに言う。
「俺は創造主たちと古くから知り合いで、皇女の母親とも旧知の仲なんだよ」
「……私の、お母さん」
「んで、そいつにゾッコンだったのがお前の父親の天帝と、母親の旦那」
…………待って。いろいろと聞きたいことがちょっと。
「………旦那??」
「創造主は男なら魔力を女の胎に込めることで妊娠させることもできる。女なら男の魔力得てだな」
……あぁ、なんか、いろいろ納得がいった。
「天帝は、好いた女が手に入らないから、せめて子どもをと思って、皇女を生ませた」
「……………お母さんの旦那は、どう思ったの」
「自分の子どもとして育てるつもりだったよ」
それを、天帝が拒んだ。
「生まれたって言っても、特殊な種族だったこともあり、皇女は卵の状態だった」
「そこを、天帝が狙った…」
「皇女がいなくなってすぐ母親は俺に言ってきたよ。『子どもを取り返して』ってな」
でも、ホロウさんは魔界の人。天界……それも、天帝のとこまで行くには時間がかかる。
「子どもが生まれるまでには無理と判断して、俺は皇女のとこに知り合いを送った」
「知り合い?」
「いつも一緒にいるだろ」
…………もしかして、ジン?
「あいつに皇女の子守を頼み、無事であることを確認してもらうことで、なんとか現状維持をした」
「………じゃあ、ジンが、精霊たちが私といたのは」
「俺が頼んだ。それとは別に、精霊にとって、皇女は必要性だからだ」
……そっ、かぁ。
「私が、認知されてなかったのは、なんでですか……?」
「……………皇女は神族とは違う。いつしか、その違いで苦しむことになる。だから」
いっそのこと関わらない方が良いと思って、ジンに頼んだのだと言われた。
「メルフィアスたちと会ったことに関しては俺は関与はしてない」
ホロウさんがやったのは、それとあとは、何?
「ゼロニクルと皇女が会ったとき、本来ならあそこに、俺が行くはずだった」
「? ホロウさんは、来てなかった、よね」
「皇女の種族は、愛情を得て初めて成り立つ種族なんだ」
なんで、急に種族の話なの?
「ゼロニクルなら、皇女を生かせると判断した。俺の独断で、結末をねじ曲げることにした」
本来の結末とは異なる結末。
「俺は、何度も未来を変えてる。皇女、皇女は」
何か、大切なモノを見る目を、向けてくる。
「もし、やり直せるとしたら、そうするか?」
やり直し………?
「………お前、どんだけ細工してんの??」
「数えるのだるくて止めた」
いっぱいやってます。全部は書ける気しないけど。
「大戦期……」
書きたいとは思ってるんだよ。他のもさ。ただ、ただね? 語彙力なさすぎて無理。




