29.不安
リリアナ視点となります。
さてさて、面倒が重なりました。
一つ目は、隣国の再従兄弟である王太子殿下と第二王子殿下の留学。
これは前々から予定されていたものではあるので、この中では対処は楽です。
二つ目は、先日現れたと言う聖女。
何故このタイミングなのか。本当に聖女なのかも分かりません。あまり疑いたくはないですが、偽者の可能性を考えなければいけないんですよねぇ。
三つ目は、アイリス様。
彼女が逆行人になった。と言うことは、やはり素質があるのでしょう。もう少し警備を増やした方が良いかもです。
今、一番の問題は聖女様。
もしも、偽者であるのならば、
「…………確実に私に回ってきますよねぇ」
「んー、何々?」
…………この人は。
今は夜。それも私の部屋です。
ゼクトは許可していて、しっかり返事を待つから良いですが、伯父様と言い第四様と言い彼と言い、何故勝手に入って来るのか。
「まぁた押し付けられた?」
「それとは別件ですよ」
「ふぅん。珍しい」
あれ? 彼の中で私ってどう思われてるんですかね?
確かに伯父様たちに頼まれて断れずに良くやってはいますけど。
「それで、今回は何」
「聖女様とアイリス様です」
「アイリス…………。あー、不確定要素か」
言い方が酷いですね。合ってはいますけど。
アイリス様は、こちらにとって一番の危険要素を持ちます。
彼女が私の予想通りの方であれば、保護対象。
彼女が私の予想とは外れ、別の可能性であれば、最悪抹殺。
どちらも良いとは言えませんね。
「あれにそんな悩む価値あるの?」
つまらなさそうにそう言ってきますが、どうにかしないといけない案件ですよ。
今までのように処理できません。
「………まぁ。そんなに難しく考えなくて良いよ」
ポン、と私の頭を軽く叩き、ベランダに行きます。
月の光に照らされた彼の髪色は、先祖返りとされている白銀色。
私のような、紛い物ではなく。
正真正銘、その一族の、かつての始祖と同じ。
「命よりも大切なお前のためにならなんだってやるって、前にも言ったろ?」
彼は私に罪悪感を持ち、私は彼に罪悪感を持っています。
本来の未来とは異なる現在。
外れてしまった現在を。
変わってしまった未来を。
元に戻すことは、できるでしょうか。
本来生きていたはずの者。
本来死んでいたはずの者。
「リリー、俺はしばらくじぃさんの所に行く。こっちに居ると、王太子ら辺が気付きそうだしな」
「………そうですね。あそこならば、皆が守ってくれますから」
「あれ? そこは俺が守る側じゃねぇの??」
え、守られる側では?
「強いのは分かってますが、過信し過ぎると足元を掬われますよ」
「手厳しいなぁ」
「信頼してるからこそですよ」
彼を信頼しているからこそ、心配しているのですから。
彼が強いのは、私が一番知っています。
「………大丈夫だよ。知ってるだろ」
そう言って、ベランダから飛び降りる。
大丈夫。彼がそう言うのなら、そうなのでしょう。
私も、やることをやらないとですね。




