2.入学式
あぁーー!! なんで学院の案内図見なかったんだ私ー!!
入学早々迷子とかヒロインか!! (ヒロインです)
うぅ、困った。どうしよ………。
うずくまっていると、
「あの、どうしました?」
声を掛けられた。
振り向くと、そこには推しであるリリアナとゼクトが………!
「リリー、変なの拾うな」
…………変なの。
いくら興味ないとは言え、酷すぎでは? それと、敬語は何処へ?
「ゼクト、外なのですから」
「はいはい。…………これでよろしいでしょうか?リリアナ様」
わざとらしくしているけど、遊んでるよね。
しかし、これは嬉しい誤算と言うものだ。まさか入学早々推しに会えるとは。
「あの、会場まで一緒にどうですか?」
「変なのを、拾わないで、ください。こんなとこで迷子とか普通に考えてあり得ないでしょう」
「なってるじゃないですか」
リリアナ、素なんだろうけど、ちょっと私のライフが削られてる………。
ゼクトの言葉が正しいんだよなぁ。普通、学院の案内図とか見るし、わざと迷子を装ってるとしか見えないんだろうなぁ。
「把握してないのが悪いんですよ」
「辛辣ですね」
「後輩と仲良くする必要ないですから」
随分と酷い言い様である。
まぁ、ゼクトからしたらメリットなんてないしね。
結局、会場まで連れてってもらった。
ありがたや。ありがたや。
****
…………広っ。
さすが国立、広い。広すぎる。
「………私の席どれだこれ」
「ヤバイ。席分かんない………」
あ、同じ人いた。良かったぁ(何が良いんだ……)。
その人を見てみると、綺麗な薄紫色の髪と瞳の女子生徒。
……………あれ?
この子、もしかして……。
「あ、もしかしてあなたも席分かんないの?」
「あ、はい」
「良かったぁぁ………。私だけじゃなかった。私、ティアナ。ティアナ・ニュエル・ニーチェル。よろしくね」
やっぱり。
彼女は、攻略対象の一人の妹であり、次期宰相、三大公爵家の一人の婚約者。無論、婚約者も攻略対象。
そして、彼女自身も三大公爵家の一人だ。
「アイリス・ディア・カトレアです」
「あ、敬語良いよ! そう言うの苦手なの。気楽にティアナって呼んで?」
うん。かなり軽い。
ティアナは別にゲームで何かする訳ではないけど、公爵家で私は伯爵家。ちょっとね。
「じゃじゃ、適当に座ろ!」
「え、良いの?」
「私、前に行ったら確実にお説教くらうから」
逃げる口実に私を使う訳か。
まぁ、何はともあれ、友達ゲット!
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「んじゃ、Aクラスに割り振られた奴ら、来い」
そんなやる気のない声で先程Aクラスと言われた生徒たちが集まる。もちろん私もAクラス。
リリアナや他の一年生の攻略対象、ティアナもだね。
教室に行くと、成績順に並ぶことになり、私は四番目。
「んじゃ、軽く紹介か。シエル・カシュ・ハゼルト。三年間Aクラスのままなら、ずっと俺が担任の予定だ。俺は上位貴族だの下位貴族だの気にしないし、お前らの名前とかも覚える気なんかは一切ない」
担任になったシエル先生は、やる気無しでだらしなさそうだけど、この国一番の実力者である。
シエル・カシュ・ハゼルト。この国にある公爵家三つと同等の力を持つハゼルト侯爵家の当主。身長は一九五と高め、誕生日は二月一日。
赤銅色の髪に紅色の瞳。
リリアナの伯父で、魔塔と言う場所に所属する選ばれた十二人のうちの一人。
「んじゃ、今日終わりな。明日から授業あっからな~」
あの、自己紹介とかは?
…………あ、無いんですね。
この先生、不安である。