272.終戦
前半リリアナ、後半 第一魔術師視点となります。
「まぁ、どうせ魔法撃つだけだけど」
確か作った武器の中に魔法を込められる銃があったはず。
「……これでいっか」
銃口が長めのものを取り出す。弾は無くても使えるらしい。魔法を込めれば勝手に弾になるという原理がよく分からないもの。分解して調べてみたいけど止めろって言われたからやってない。
「………お前、人形持ってないのに制御できるのか?」
「する必要ないでしょ」
撃つ魔法は二つ。火と風。
最初に広範囲の火属性の魔法を、少し遅れて風属性の魔法をやると、想像以上の範囲が燃え上がった。
「やけに激しいな」
「火は風を受けると強くなるでしょ。その原理」
着弾点にいたのは五分の一は消し炭になったかな。もう何ヵ所かやれば終わるか?
「どうせなら別のも……っ」
広範囲なだけあって魔力消費が激しい。泉で回復するにしても、一気に来られると危ないな。
「………確か、こんなだっけか」
泉が原因なら別の方法で魔力を回復してしまえば良い。いつだかに見た魔法。大戦期と呼ばれる時代において、一人の悪魔が使用したもの。
「死者を動力にできるのは楽だよねぇ」
『死した魔力』。指定した者の魔力を回復させるために、死者を魔法によって魔力へと変換するもの。よくこんなのを思い付くと感心するよ。私でもこんなのやんない。
「………なんで黒魔術を知ってるんだ」
「魔術師が持ってきてた本に載ってた」
魔術なんだ。魔法だと思ってた。大部分は魔法だけど細部まで見ると魔術なのかな。
「本来禁忌指定されてるものだぞ」
「魔術師たちだし」
どうせだ。これ以外も試してみよう。
気配や姿を消す魔法を解いて下に降りる。
今まで何気に空にいたけど、どうなってるんだろ。
「子ども!?」
「これ、ナイフでいけるか?」
……あー、いや。別に私自身が持たなくて良いんだったっけな。グローブを手に嵌めて武器をほぼ全て出す。
「遊んでよ」
そう言えば、国など関係なく襲いかかってきた。
それらを全て殲滅するまで約十分。証拠を消すために大規模魔法を撃ったまでは記憶があるものの、魔力を消費し過ぎたためか、気を失った。
****
「……とんでもねぇな」
「君が仕向けたんじゃないのかい?」
隣で全てを見ていた魔界統率者代理を横目に、彼女が作った惨状を見ていた。
約六十万が死亡。両国壊滅で跡形もなく消えている。自然すらも消え失せ、残るのは荒廃した土地のみ。
「俺は基本干渉しない。するのはそうするべきとき、もしくは大切なものが危険になった場合だ」
「…………彼女は君の大切なものだと?」
たった三つの子どもを何万も生きている存在が大切だと言うとは。
「まぁ、妹だし」
「………は?」
「正確には違うがな。覚えてないだろし。その方が幸せだろうから、無理に思い出させる必要もない」
そう言えば、こいつは「原初の概念」と呼ばれる存在だったな。彼女もそれなら、そのときのことか。ただ、概念に家族なんてものあるか?
「勝手に言ってるだけだ。感情もあるから結構奪い合いもあったぞ」
「いらない情報付け足すな」
最上位種族よりも上位の存在たちの色事事情なんて聞きたくないよ。
「とりあえず、彼女は連れて帰るよ」
「不老不死だから多少無理しても死なんが、心の方は人より脆い。気を付けろ」
そう忠告だけして帰ってった。
干渉しないって、あの子を世話してたの知ってるからな? 何が干渉しないだ。一番干渉してるだろ。
そう言いたいが、相手は上位の存在。いくら魔塔の頂点に立ったとしても、俺程度、赤子の手をひねるように簡単に殺せてしまうだろう。
……面倒なことを引き受けたかもしれないな。
「……え、妹いたの?」
「いる」
とうとう君も出てきたか……。




