243.人形
前半リリアナ、後半ちょこっと夫人視点となります。
それから連日。母親に呼ばれては一時間程話して帰ってを繰り返した。
「………疲れた」
「連日これは体力ないリリーにはきついだろな」
もーやだ。人形作る。
「なんでそこで寝ることが出ないのか不思議でしょうがない」
「眠たくはない」
「で、今度はどんなの作ってるの」
「ユイの姉弟、的な?」
「まさかの」
結構似てない?
「似てるけど、ユイは夫人に似せて作ってるからな?」
「まぁ、ね?」
本人じゃないし。
「リリー、なんかそれの片目が宝石埋まってるように見えるんですが」
「人形たちの中に入れてる結晶」
「「アウト」」
ちゃんと他はユイそっくりだし。違うの片目と髪の長さと服装くらいだし?
「リリーの人形が無事増えましたと」
「ちなみに中にもちゃんと」
「あるよ」
基本入れてるから入れない訳ない。
「リリーの常備する人形が一から二に増えた」
「それにしても似すぎでは」
「似せて作ったから、そりゃね」
「いや、似すぎだから。リリーはなんで無駄なところに才能振ってるの」
酷い言われよう。
「酷いねー」
『ねー』
腹話術。結構上手いでしょ。
「リリー、一人で喋ってて悲しくないの?」
『むぅ……』
「それが喋ってるように見えても意味ねぇよ」
「あの人なら誉める気がしない?」
「誉める以外のことしないだろ」
それはそう。
「名前は?」
「………『ユウ』とか?」
「安直」
「ユイの弟設定だから次の文字にしたでしょ」
悪いか。
「もうちょい捻れよ」
「『ユート』」
「それ、絶対取ってきた」
『うるさい』
「酷い……」
別に私の好きに名前付けて良いでしょ。私が作ったんだから。
「そのうち人形が凶器持ってそう」
「持たせてみる?」
「それ、手が滑って何かしらに当たるやつ」
試してみる? と聞くと止めろと言われた。言ったのゼクトなのに。
「リリー、ちょっとその二人持って座って」
「ん」
なんで? と思いながらソファに座って二人を持つと、二人が笑いを堪えている。
「……何」
「いやー、なんと言いますか」
「…………なくはない」
なんだそりゃ。
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「………来たかしら」
連日リリアナたちに私のところに来てもらえば、この子が来ると分かっていてした。リリアナが疲れて寝てしまえば、この子は側を離れて私に警告するだろうから。
『……これ以上、無駄なことをするな』
「あら、無駄とは酷いわね」
お兄様たちの制止を無視して結婚した結果、私は呪いを受けた。
死に至る呪い。
別に死は怖くない。あの人と大切な時間を過ごせた。子どもも産めた。あの人の妻としての責務は果たせてる。
「親が子を愛して、何が悪いの?」
私の家は歪だった。
両親は私を大切にしてくれたけど、お兄様たちを嫌っていた。お兄様たちも、両親を嫌って、私のことも嫌っている。
使用人たちは皆お兄様たちの味方で、私が会うとお兄様たちが辛いからとあまり会わせてくれようとしなかった。
『お前たちの身勝手で、不幸になるのはあの子だ』
「不幸になんてさせない」
私が呪いによって死んでも、リリアナにはゼクトもリオもいる。お兄様たちも。
だからきっと、不幸になんてならない。




