213.魔法陣
前半アイリス、後半ちょこっとゼロ視点となります。
あれからしばらくして解散。理由としてはリリアナが本格的に寝たから。
ちょっと揺すれば寝ぼけてはいるものの、一応起きている状態だったのが、うんともすんとも言わなくなった。
「………それで、あの?」
「あぁ、カトレア嬢。急にすまない」
何故我が家にカシアさんが?
「ゼロに言われてね。少し、あなたに見せたいものがあるらしい。あの子が来れれば良いんだが、あの姿で外を出ることを禁じられているため、申し訳ない」
ゼロさんが? なんでまた。
カシアさんも詳しいことは聞いてないらしく、ゼロさんのいる北の神殿へ。
「……あぁ、来た?」
「えーと、なんのご用で?」
「少しね。悪いんだけど、これ見てくれるかい?」
ゼロさんに手招きされ、行くとあったのは巨大な………魔法陣? でも、通常の魔法陣よりも複雑な構造のはず。
『娘、下がれ。他者の魔力を奪うものだ』
「は!?」
「安心しろ。発動はしない」
いや、それでも怖いんですが……。
『昔発動させたものだな?』
「………そうだな」
『何故これがここにある』
「移動させた。あそこにあってはバレるだろう」
それで、これをどうしようと?
「これを破壊するのに手こずっていてね。協力してもらいたい」
「私が手伝うより先生たちの方が良くないですか?」
「魔術師たちにバレるのは面倒なんだ。だから」
これのこと隠してるのか。
「あまり迷惑をかけるわけにもいかないだろう。これ以上、あれらが責任を負うのは不本意だ」
「………ゼロさんは、先生たちのこと好き?」
「さぁ? 必要か必要でないかなら、必要なんだろうけれど、好き嫌いは持ち合わせてない」
うーん、リリアナも似たような回答出しそう。
たぶん、好きなんだろうなぁ。迷惑をかけたくないって、大切な人とか好きな人ならそう思うの当然だろうし。
「私は何をすれば?」
「そっちの方から魔力を流してくれ。カシアに補助はさせる」
話を進めることにした。カシアさん、たぶんゼロさんに無理やりやらされてる。普通に今日出勤だと思う。じゃないと早くしてって顔しないと思う。
始めること十数分。徐々に魔法陣に亀裂が入り始めた。
「止めろ。これ以上は魔力切れを起こす。カシア、休ませてやれ」
「……終わり?」
「亀裂さえ入ればゼロが壊せる。すまなかった。ゼロに代わって礼を言うよ」
たった十数分で、ほとんどの魔力を使って立っているのもやっと。これを一人でって、大丈夫なの?
「ゼロにはリオがついてる。ご令嬢、失礼するよ」
「え………ふわぁあ!?」
カシアさん!? いくら動けないからといって人にお姫様抱っこされるのは抵抗あります!
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「………言わなくて良かったのか?」
「必要ないだろう」
姿を出さなかったものの、ずっと側で見ていたユートが出てくる。伯爵令嬢はカシアが送っているため、ここでは二人きりか。
「そんで? 俺に何をお望みで?」
何、ちょっとしたおつかいだ。
「悪いけど、ちょっとだけ魔界に行ってくれない?」
「………しゃーね。約束の日までには終わらせとくよ」
魔術師たち、悪魔たちとの約束の日まで、残り二週間余り。
私は、それが終わっても生きているのだろうか。




