201.真偽魔道具
「……ふふ、ダメですよ。扱いなれていないもので真偽を見ようとするのは。お兄様たちより、それをずっと見ているんですから」
リリアナは、この魔道具があることを知ってた? でも、
「それはあくまで、『発言』を真偽するだけであり、『その者』の真偽を判定することはないですよ。例えそれが『偽』であろろうと、答え方によってそれは『真』と判定される。伯父様が用意した抜け穴ですよ」
先生が作った魔道具をリリアナが知らないはずがない。頭から完全に抜けてた!
「その質問からして、私があの人を殺したのは想像できているのでしょう?」
「っ、リリー!」
「構いませんよ。なんとも思っていませんから。当てたのはニーチェル公爵様ですかね。魔道具を持ってくるのなんてあの人くらいです。………あぁ、そうなるとお父様にバレましたか」
まずいなぁ、と他人事のように呟いている。
「………幻滅しました?」
「えっ…」
「昔からそうなんですよ。『イメージと違う』『それは令嬢の行動じゃない』。そういう人がいるんですよ」
試してみます? と言って、私の方に手を伸ばしてきた。
感じたのは、恐怖。次に出てきたのは、安心だった。
「…私たちのこと、怖がらせようとしてるでしょ」
ピタリとリリアナの動きが止まり、何のことかととぼける。
「声もわざと低くして、魔力で少し空気を重くした。私たちがそれで拒絶すると思ったから?」
「……………」
「リリアナは、自分の意思で人を殺したことは、ないんでしょ?」
手を伸ばしてきたとき、何をされるのかは不安だった。でも、危ない目に合うなんて一ミリも思わなかった。
「夫人のことも、殺したって言ってたけど、私はゼクトの『事故』って言葉を信じる」
リリアナの目は、とても人を殺した目ではないと思うから。
「……本当に、……ですね」
「え……?」
「これで私が本当に攻撃したらどうするつもりで?」
「本当に殺す気なら、最初からやってるでしょ。攻撃してきても、たぶん避けられる」
リリアナは、攻撃してきても手加減する。自分で無意識のうちなのか、別の理由があるからなのかは、分からないけれど。
「だから、それは無駄だよ」
「………ゼクト、準備しておいてください」
「はいはい。もういいのか?」
「これ以上残しておくと厄介ですから。多少暴れても問題ないようにしますよ」
「あっちは?」
「それは魔塔次第です」
リリアナはそう言って部屋を出ていく。
「………あれ、相当お怒りじゃない?」
「止めてくれよほんとに。後処理面倒なんだよ……」
「ユート君たち駆り出されそー」
「「お前のその発言は当たるから止めろ」」
実際に、後日ゼクトも合わせて呼び出しくらったとかいないとか。