200.派生魔法
「お父さんの魔法って土属性でしょ?」
「いや、俺は『音』。派生魔法だ」
「………派生?」
ティアナ、さすがにそれは知ってようよ。
「おい、こいつマジか」
「オリヴィエ、さすがに分かるよな?」
「主属性から枝分かれしてる魔法属性でしょ。シエルさんたちがそれなんだから分かるよ」
音魔法は風魔法から、氷魔法は水魔法から派生していて、ニーチェル公爵家は派生魔法や支援系の魔法が得意なんだよね。
「おー、偉い偉い」
「バカにし過ぎでしょ! リリアナちゃんといれば嫌でもこんぐらい頭入るよ!」
「いや、普通できないだろあれは」
「まずあれ、派生?」
「また別の枠だろ」
そのうちリリアナが新しい属性とか作りそう。
「リリアナ嬢のは、シエルたちじゃないが考えないのが楽だろうな。魔力規模、魔法に関する知識、想像力。魔法を作り出すに必要なものがどれだけあるか。それによって規模も扱い方も変わるからな」
「………お父さんって、なんでそんな地味に魔法詳しいの?」
「シエルたちに聞いたから」
公爵たちって、先生たちと仲悪いんじゃないの?
「………シエルたちが嫌いなのは命令されることとハゼルトの掟を破ること。その二つさえ守れば基本普通に接してくるし、必要なものも言えばくれる。お前らに渡した魔道具も、基礎は俺だが細かいのはシエルとメルトだ」
「先生がシティアル公爵を毛嫌いしてるのは」
「自分たちの忠告を聞かずに勝手に結婚して、自分たちに預ける契約だったリリアナ嬢をシティアルにおいて勝手に婚約させたからだろうな。ハゼルトの掟には血が出ることを禁じてる部分がいくつかある」
なんか、そんなことを言ってたような。
「………こう考えると私たち」
「親の仕事とかまったく知らねぇな」
「同意……」
「お、興味持ったか? アストロにもそろそろ本格的に引き継ぎしないとだしな。よし、今度暗部いくか!」
「「「絶対やだ」」」
ニーチェル公爵家、本当にどんな役割よ。武官だとしても、暗部はないでしょ。そういうのって、皇弟とかが仕切るんじゃないの? いないからなんだろうけども。
「………何してるんだ、カフニオ。いや、まずなんで子どもたちに混ざって」
「よし、帰るぞ。んじゃ、邪魔して悪かったな。アイリス嬢、そこのバカよろしくな!」
「おい!」
入ってきた公爵を連れて帰っていった。
いや、公爵ユラエスとかとも話したかったのでは?
「…………えぇ…」
一緒に入ってきたリリアナも困惑気味なご様子。
「リリアナちゃん、お帰り」
「………ティアナ、私を無理やり部屋に押し込んだの、忘れてないですからね?」
「主犯はゼクト君とお父さんたちだよ」
「売りやがったこいつ」
「ゼクトとお再従兄様は後で治験体にするので」
主犯で名前言われてない王太子殿下もやられるのか……。いや、嬉々として準備してたけどもね。
「………なぁ、リリアナ」
「? はい」
「お母様は、『病死』だったのか?」
ユラエスの問いに、リリアナは普通に、いつものように。
「……えぇ、そう聞いていますよ」
真偽魔道具の鈴の音は、聞こえなかった。
サブタイトル考えるの疲れてきた書き手です。