193.共有
リリアナ視点となります。とりあえず、長い連続別視点は終わりです(たぶん……)。
「まぁまぁ喋ってるけど、大丈夫なの?」
「平気だよ。再従妹殿がいる限りは」
「どゆこと?」
「私とゼロは視覚や聴覚を好きなときに共有することができます。しようとすれば、相手の伝えたいことも教えられるんですよ」
だからゼロのことを言おうと、それは許可が出ているんです。
「それは、魔法なのですか?」
「魔力は一切使っていません。私たちはこれを『奇術』と呼んでいます。魔力を使わずに起こる奇跡の術です」
「………あ、だから『奇術師』」
「ゼロは嫌ってるけどな、その呼び名」
読み方を直すと『星を騙す者』ですからね。
「北の神殿にいる魔術師はこの国の貴族なのですよね? こちらで知らないのは」
「魔塔の管轄下ですからね。私も報告を上げずに魔塔の方で検査をして偽装して報告を上げていますから、他にもいてもおかしくありませんよ。ナイジェル様とゼクトもそうですし」
「僕たち魔力多いしね」
確かにナイジェル様多いですよね。…………はぁ。
「…なんですか?」
「申し訳ありません。実は」
急に現れた茜色の髪に焔色の瞳の人形、アルファに驚く陛下たちを無視して話を聞きます。
アルファが耳元まで口を近付けてきたので聞いてみます。
「…………え、行かないとダメですか?」
「できれば…」
「そこの人叩き起こして連れていくのは」
「さすがに厳しいかと」
どうしますかね。
「……ゼクト、後はよろしくです。ちょっと、西まで行ってきます」
「随分遠いところだな…」
「誰がこんだけ遠く探せなんて言いましたっけね」
「勝手にやってるだけです」
それを止めろって言ってるんですが? この人形たち、本当に主の言うこと聞かないですね。
もう知るかとさっさと出ていきます。
ここから西の大陸だと、三十分弱ですかね?
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「…………リオ」
「あ、来た来た~」
わざわざアルファを使って呼んだんですから、何かあるんですよね? そうじゃなかったら怒りますよ。
「見て見て~」
「何なんです、か………」
下を見ると、災害ではないと一目瞭然の光景が広がっていました。
「………は?」
「すごいでしょ? 俺を殺そうとしたバカ集団が自爆したの。俺を殺せる訳ないのにね」
すごいとかの問題ではなく、これのエネルギーとなっているのが生命エネルギーや負感情であるということ。溢れんばかりの澱んだ魔力が大気中に漂っています。
「一応結界張ったけど、こんなん?」
「………急いで、片付けますよ」
これが広がれば魔塔でも骨が折れます。早くしないと。
「ルア、できるだけ飲み込んでください。リオは魔力をできるだけ練ってください」
いくらルアでもこんなものを一気には無理。浄化魔法で中和していくしか……。
澱んだ魔力を消せたのはそれから数時間後。広範囲かつ死んだものたちの恨み妬みがあり、作業に支障が出たからでした。