175.大技
「………さっきの魔法でこんなに」
残ってる人誰だ?
「ほっとんど残ってないのヤバいね。最速で終わりそう」
「どうします?」
「ゼクトとオリヴィエが再従妹殿のところに行くはずだから、そこに乗り込む。最悪でも再従妹殿は落としたい」
落とせるかどうかは別として、やっぱり残り組は全員リリアナのところ行くよね。
「行こうか」
リリアナのいる学院屋上の上空、さっきよりも大きい魔法陣が見える。
マジですかぁ。
「急がないとだね」
登っていくと、金属音が複数。
あれ、これもうやり合ってるパターンですか?
屋上に繋がる扉を開けると、リリアナとゼクト、オリヴィエさんの姿が。
「………あ、フォールト君とアイリスちゃん」
「あ、おいバカっ」
目をこっちに移したオリヴィエさんがリリアナに懐に入られ、蹴りを思いっきり入れられる。
「ひぃー、ちょーギリ」
「疲れたんですが」
「そろそろ退場して欲しい。切実に」
「あれやるまでは無理ですかね」
何の魔法か知りたいけど知りたくもない。
「………てか、殿下たちは」
「ティアナと聖女はやったな」
最初からそこと会うのはヤバいでしょ。
「え、なら誰残ってるの……?」
「アストロ様とお義姉様、エルヴィス様と殿下、クロフィム君はまだ残ってますよ」
これで十人。え、少な過ぎでしょ。本当に。
「ここでやるの? 狭くない?」
「「「落としやすい」」」
「一番ダメな理由で場所決めてるじゃん」
そう言いながら、それぞれ武器を構える。
ゼクトとオリヴィエさんは剣、王太子殿下は短剣、リリアナは何故かレザーグローブを片手に着けている。
「やばっ、本気すぎでしょっ」
「そりゃ、久しぶりだし」
「本気出すよね」
「伯父様が全責任を第一様に負わすそうです」
すごいとばっちりがクロムさんにいってる。
「じゃあじゃあ、やりますか」
「しっかり防御魔法強化してよー」
「へーきへーき」
何が平気なのかまったく分からないけれども、一番やっちゃいけない四人(そして私)による戦闘が開始となった。
「……いや、これ本当に勝てる?」
「五人のバトロワきっつ」
なら私入れないでやってくれと言いたいけど、ここに来た時点で無理。リリアナと私は魔法を使い、ゼクトとオリヴィエさん、王太子殿下はそれぞれの武器を使っている。
状況はリリアナの有利。リリアナが着けたあのグローブはリリアナが戦闘時に使うものらしい。どんだけ本気なんだと引くけど、三人もそれぞれ自前の愛用武器らしい。
「…………リリアナちゃん、もしかしてだけどさ? 魔法陣、完成しちゃった?」
何も答えないでにこりと笑うだけ。
絶対完成したじゃん。
「ではでは、本日二発目の大技。やらせていただきます!」