174.規模おかしいて
闘技が開始され、全生徒が一斉にランダムな場所に飛ばされた。ランダムということは、もちろん同じ場所に飛ばされる人もいる訳で。
「っあ!」
あちこちから脱落者の声がする。
生徒一人一人に張られた防御魔法は一定以上のダメージを受けると場外、観客席まで飛ばされる仕組みになっている。
「………ひゃー、これヤバい」
何人か退場させはしたけど、キツい。
「このちょっとの時間でどんくらい減ったのか」
人数が分かると言われた魔道具を見ると、数は三千程。まだ数分しか経っていないのに、三十人近く減っている。
「これ、内訳見たらすごそう」
さすがに見る機能ないけど。
「………あっ」
「え……」
後ろから闘技中絶対会いたくない人の声。振り向くと、王太子殿下が。
「うわー、ここで会うか」
そう言ってるわりには、声が嬉しそうですよ。
「できればエンカウントしたくなかったなぁ。リヴァイアサンとやり合うのは得策じゃないし」
「できれば下がって欲しいです……」
「そうしたいんだけどね、このままだと全員再従妹殿の格好の的なんだよね」
リリアナの? しかも、全員?
「再従妹殿は一番高い場所である学院屋上に転移。ゼクトは戦いやすい森林エリア、他はまばらだけど、ある程度まとまってる。離れる、もしくは戦闘を開始した途端に再従妹殿の大規模魔法でもれなく退場の可能性が高い」
「………だから、一時休戦してなんとかしよう、と」
「話が早くて助かるよ。こっちは契約上、守護獣が使えない状態でね。勝ち目がないから」
そう言えば、王太子殿下の守護獣見たことない。
「たぶん、もう少しで魔法撃ってくるよ」
そう言った直後、上空からバカみたいな魔力が感知できた。
「………あの、規模おかし過ぎません?」
「やってるね。三十秒もしないうちに降ってくるよ」
空に見えるかなり大きい魔法陣が複数。全部って言わないでどれか一つで他フェイクであって欲しい。
「これ、避けれます?」
「魔法を使ってのごり押しならね。制御装置を着けている状態だとギリギリなんだ。再従妹殿は最大魔力を放って、退場した生徒の魔力の回収をする気だろうね」
悠長なこと言ってる場合じゃないって!
「ちょ、既に落ちてきてるし!」
「ヤバいな。とりあえず、何とか防ごう」
空から無差別に降ってくる魔力の塊(何の魔法か不明)を躱したり防いだり。
約五分後に止まり、人数を確認すると、あれだけいたはずの生徒が残り十人程度まで減っていた。
「………ヤバすぎでしょ」