164.契約
「この中からって、何体いると」
「二百近くだね」
絶対選ぶの大変じゃん。
「魔力を周りに回せ。身体中から魔力を放出するんだ」
「放出ですか? 籠めるではなく?」
「自分の魔力を自然に乗せれば相性の良いのが来るんだよ。後は勝手に競争が起きて、一番だったのが契約する」
「契約しないのなら何もしなければ良い。どっちにせよ、子がしばらくは喋っているだろうからな」
リリアナの方を見ると、確かに喋っている。
「最長二日かけてようやくというのも過去にはいたからやるなら早めにしろ」
「二日!?」
「あー、大変だったな。そう言えば……」
フェミルさんだったんだ。どんだけよ。
「悪魔だっけ」
「下位から上位まで揃ってて大変だったな」
精霊じゃないんかい。
こっちでそんなことを話していると、ユラエスが魔力を放出していく。すると、あちこちで精霊が消えたり移動したりしている。
「少し眩しくなるぞ」
「え」
ゼクトが忠告してきた途端、辺りが光る。
光が収まると、ユラエスの近くに、淡い水色に光る精霊がいた。
「………これ、光も入ってね?」
「よし、偽装。帰るよ。カラシャ起こさないとだ」
今夜中! 深夜だから!!
「………とりあえず、子が話に夢中になってるぞ」
「そのうち帰ってくるから無視」
「ユラエス、そのまま契約結べ。精霊に名前を与えれば完了だ」
「名前……」
急に言われても思い付かないでしょ。
しばらく、考え決めたらしい。
「じゃあ、『フェル』で」
「安直」
「性別分からないからそれでしょ」
「子よりはセンスあるから良いのではないか? フェンリルは実際合ってるだろう」
フェミルさん、それはフォローになってない。
「まあ、良いんじゃない?」
「あ、決まりました?」
リリアナ、なんか後ろにくっついてきてるよ。
「あー、やっぱり二属混合種ですか」
後ろのはガン無視ですか、そうですか。
「予想してたのかよ」
「だからこそ言ってなかったんですよ。混合種は誤魔化しが大変ですから。伯父様、お父様たちへの報告はお願いします」
「しゃーね。帰るぞメルト」
「はいはい。じゃあね」
先生とメルトさんは帰り、フェミルさんは、
「ここで見たことは他言無用だ。言えばちとお前たちの家が消えるだけだから、あまり気にすることはないけれどな」
釘を刺して帰っていった。
めっっちゃ気にすることはなんですけど?
「やっばいこと言って帰るじゃん」
「上が全部消えるね」
「言わなきゃ良いから楽だろ。とあるバカは見たら契約とか言う理不尽突きつけてきたぞ。なあ?」
「私は『しばらく入るな』としっかり言ったはずですので自業自得ですね」
いつの話だそれは。
「まあ、そろそろお開きですね」
「よし、五時間は寝れる」
「短くない?」
「いつも二時間ちょい」
それは短すぎ。
そんなこんなで誕生日会は朝から日付が変わるギリギリまで行われた。
公爵はもちろん(何がもちろんなのかは分からないけど)、不在。公爵、ちゃんと屋敷帰ってきてるのかな。
やっとユラエスの誕生日が終わった……。