14.事件
「…………」
「………お前ら、二分だけ外出ろ。変なの片付けっから」
「おいおい止めろ。お前とリリアナ嬢に用があるんだよ」
朝、教室に行くと先客がいた(先生とはさっき会った)。
学院の生徒ではない。
この国の近衛騎士団団長、カーティス・クルム・ムフロフ。
ムフロフ侯爵家当主で、この前話に出たオリヴィエさんのお父さん。
「俺と」
「私、ですか?」
「そ。二人」
先生に用は分かるけど、リリアナは何故?
リリアナも分からないようで頭に疑問符を浮かべている。
「シエルだけで問題無いかもだけど、一応ね」
「私、予定があるんですが」
「内容聞いたら、絶対こっち来ると思うよー?」
何があれば行くことになるのか。
「魔法が使われたはずなのに、魔力の痕跡が無いんだよ」
「…………それまた、変なもんが」
「え、なんです。その凄く面白そうなものは」
心なしか、リリアナの目がキラキラしてる。
楽しんでるな、これ。
「殿下たちも来ますか?」
「行っても良いなら是非」
と、言うことで、私たちも行くことに。
****
「随分とだな」
「魔力の痕跡が一切無いとは……」
放課後、ムフロフ侯爵に連れて行ってもらった場所は都の路地裏。
そこには、押し潰されたような人の形を成していないモノがあった。
周りには血が散乱し、内臓も所々ある。
「なぁ、なんで俺まで呼ばれたんだよ」
「お前が居る方が楽だろ」
居るメンバーは、リリアナ、ティアナ、殿下、エルヴィス、ムフロフ侯爵、先生、私、そしてゼクト。
ゼクトは先生に強制連行されたらしい。
「リリー、十分な」
「少ないです!」
「やることあるっつってんだろが」
うぅ、と言いながら、リリアナが調べ始める。
何してるか分からないけど。
「………腐敗はしてない。となると、最近? いえ、それはないですね。そうなると」
「俺らに不利な状況になるな」
「はい、これがいつできたのか。それによって、私たちも動き辛くなります」
??? リリアナとゼクトの会話が分からない。
不利な状況になる?
「………ゼクト、急いで彼女に連絡を」
「了解」
「それと、ゼロサンを急いで捕まえてください。国を出られたら連絡のしようがありません」
ちょーっと、何言ってんのか分からないです、リリアナさん。
ゼロサン、て名前じゃないよね? 呼び方? 名前バレしないように??
「あいつどこ居るのか知らないから時間掛かるぞ」
「一ヶ月以内であれば」
なにやら良く分からない話が展開されていく。
終始蚊帳の外か………。これ、来た意味は?
「伯父様、人払いを。少し強引にやります」
「お前ら、死にたくなきゃ今すぐ下がれ」
え、え??
先生にそう言われ、何も分からずに数歩下がる。
すると、
「────、我が力の元に、悪きモノよ。姿を見せろ」
リリアナが何かの詠唱をすると、死体から黒い何かが出てきた。
「………はぁ、これまた面倒な」
「誰かは知りませんが、これを見つけた以上看過できませんね」