13.不思議な令嬢
リリアナ視点。
シリアス感を出してるつもりです。
さて、皆様ごきげんよう。
リリアナ・アデア・シティアルと申します。
今日は、学院で出会った不思議なご令嬢のお話を私の視点でお届け致しましょう。
学院の入学式。迷う人などいないだろう、と思いながらゼクトと学院内を回っていました。
ゼクトは生徒会長(お兄様たちに押し付けられて)ですので、こういうこともします。私は勝手に付いてってますね。
だって、ゼクトは人が困ってても基本無視します。自分に利益が無ければ早々助けないでしょう。
しばらく学院内を歩いていると、ポツンと何故か一人でいるご令嬢を見つけました。
皆様ご存知の通り、この方がアイリス・ディア・カトレア様です。
カトレア様は何故か道に迷ったらしく、会場までご一緒することになりました。
その後、すぐにまた会うことになりましたが。
彼女は伯爵令嬢でありただ一人、Aクラスに入ることになった上位貴族ではない方です(ゼクトもAクラスですが、なにせ身元保証人が私と伯父様なので、問題無いらしいです)。
「………伯爵令嬢、要監視だ」
帰り際に伯父様にそう言われ、驚きました。
正直、彼女のどこに監視する必要性があるのかが、分からなかったからです。しかし、この考えは翌日に塗り替えられます。
「………っ」
「…………あ、す、すいません。つい」
昨日遅くまで伯父様からの頼まれ事を調べていたため、学院に来て寝てしまっていましたが、カトレア様に触れられ目を覚ましました。
これだけなら、別になんともありません。普通の方ならば。
私は、昔から立場上命を狙われることも少なくなく、常に自分の周りを魔力で覆っていました。
それなのに、触れられるまでカトレア様に気付けなかった。
気が緩んでいた?
それはあり得ません。そもそもで、気を緩める要素などありませんでした。
ならば、答えは簡単でしょう。
カトレア様は、私と同等の魔力を保持、もしくは彼と同じ力を持つ者に守護されている。
前者であれば、伯父様は監視ではなく、警戒と言うはずなのでまずあり得ません。なのであるとすれば後者。しかし、
この世に、『彼と同じ力を持つ者』など、存在するのでしょうか。
記憶力は自信があります。だからこそ、彼女が私に触れるまで気付けなかった意味が分かりません。
そう考えていると、ふと一つの知識が出てきました。そして、伯父様の言った意味が分かりました。
彼女は、───である。
それならば、監視と言う命に説明が付きます。あとは、確認です。
幾つか質問をし、それが正しいかを確認します。と言っても、質問事態に意味はあまりありません。
私がしたかったのは、彼女の中の魔力を見ることです。
そして、予想通り彼女の中には、確かにありました。
あぁ、『面白い』。
彼女の中にあるモノを認識できた時、私は確かにそう思いました。
彼女はきっと楽しませてくれる。
彼女と居れば退屈しない。
それは、私の中にあった心の声でしょう。
ハゼルトは退屈を嫌います。
ハゼルトは興味を引くモノを欲します。
己を楽しませてくれる者を常に側に置きたい。己のモノにしたい。と言う身勝手な感情が出てきます。
結局は、私もハゼルトの者なのです。
どれだけ嫌っても、どれだけ否定しても、私は大嫌いなあの人と一緒なのです。
ねぇ、───。
あなたは私に何を求めますか?
あなたは私に何をして欲しいですか?
あなたは私に何をくれますか?
私は、あなたからの──を欲しました。
ねぇ、カトレア様。
あなたと居れば、私のこの、埋まることの無い心を、埋めることはできるでしょうか。