135.無意味な問い
リリアナ視点となります。
会場に戻り、第二様を帰しましたが、また面倒が来ました。何故こうも多いのか。……いえ、理由は分かっているんです。分かってはいるんですが。
「王妃殿下、侯爵閣下。一度下がらせていただきます」
そう言って、急いで外へ出ます。
武器も短剣以外持ってませんが、血が着いているのであまり使いたくありません。
何も持たない私を見て、一斉に来ました。
数は四十。随分多いですが、私は本来多数対多数よりも、一対多数の方がやりやすいです。
「さぁ、狂ったように踊りなさい」
人形師と言うと、人形を作ったりするのを多くの人が思い浮かばせますが、私は形あるものを用いて戦います。
「ぁあああああ!!」
「大勢など、私には無意味です」
操り人、と昔は言ったようです。
それが無機物だろうが有機物だろうが、意思があろうかなかろうが、全てを無視し、意のままに操り統べる。人形師と呼ばれているのは、人形を媒介とし、攻撃する方がリスクも少なく、そうする人が増えたからです。
「こんな私が綺麗な訳ないですよねぇ」
何故人が笑うのかも、何故人が泣くのかも、感情が何かも分からない私は、果たして人と言えるのでしょうか。
性善説と性悪説と言うものがあるそうです。
人は皆善人であると言う性善説。
人は皆悪人であると言う性悪説。
私が見てきたものは、どちらでしょうか。
表は取り繕える。裏では汚い欲や妬み嫉みが入り交じっている。
過ごす環境によって、人とはここまで変わるのでしょうか。
「………一つ問おう。何故、この地を狙う?」
無論、相手は答えない。
負けると言うのに、無駄に力を使い、無害なモノたちを傷付ける。
「すぐに去れ。そうすれば見逃そう」
そう言っても、結局向かってくる。
容赦は不要。全力で。
「………『何故無駄なことをするのか。不必要な使い方をするのか。理解ができない』なぁんて、思ってる?」
全て片付け終わった頃、リオは当たり前のように現れ、私の心を読み、分かっていながらも聞いてきます。
「リリー、いつまでこの無意味な遊びを続けるの?」
「なら逆に問いましょうか。いつまで無意味に生きれば良い?」
答えずとも分かる問い。無意味な問い。
無意味な遊びも、無意味な生も。
終わることのないモノでしかない。
赦されるまで、永遠と。
「悟るのもそこまでにして、戻ってこい。スズランの匂いが会場にまで来てるぞ」
「あーあ、邪魔者が来ちゃった。じゃーね、リリー」
ゼクトが来た瞬間にさっさと行ってしまいます。
「リリー、毒しまえ」
「え………? あ」
使ったモノをしまうのを忘れてました。匂いがしたって言ってたので漏れてましたかね。
「遅いから見に来たが、随分とやったな」
「ルアがいないから消すの面倒なんですよね」
魔法で適当に片付けて会場に戻りますかね。
「リリー、血が着いてるぞ」
「……あぁ、少し着きましたか。この程度なら問題ないですよ」
匂いも消しましたし。
さて、と。
「二学期はほとんど動きがなかったですが」
三学期は、どうなるでしょうね。
あまり未来視は好きではありませんが、少し覗きます。そこに写った光景があまりにも笑えてしまい。
「…………ふっ」
「リリー?」
「あぁ、いえ。なんでもないです」
さぁ、楽しみましょう。
これは最上位種と、無謀にもそれに挑む下位種族のゲーム。圧倒的不利な盤面ではあるものの、それを覆すからこそ、ゲームは楽しい。
「………さて、続きといきましょうか」
愛し子たちを賭けたゲーム。そして、
「このゲームで、あのときの記憶を、もらいましょうか」
それに、答えがあると信じましょう。