132.第二魔術師
「………相変わらずですね」
「君のそれもそうだろう。殺気が隠せていないよ」
「面倒なので出歩かないでください」
「それは君もだろう?」
空気悪っ!
「さて、改めて。自分はファラリアル。彼女に魔法を教え、力を与えた者だ。この子が自分を嫌ってるのは今に始まったことじゃないから気にしないでくれ」
「…………はぁ。ファラリアル第二魔術師様。第一魔術師様からの伝令です。早急に魔塔へお戻りください」
「自分は神官でもあるんだがね。まぁ良いか。君の様子も見れたしね」
じゃあね、と手を振り、ファラリアルさんは消える。
「大丈夫ですか?」
「あ、うん。えと?」
「ファラリアル様は第二魔術師で前第四様と一緒に私に魔法の基礎を教えてくれた方です。第三様よりはマシですが、快楽主義なため関わりたくない魔術師上位です」
「全部同率の間違いだろう」
「前半魔術師だとマシな方だよね」
あ、王太子殿下とカラリエさん。見ないと思ったら今戻ってきたんだ。
「………マリティア、お前謹慎中じゃなかったか?」
「うっ……リリアナぁ!」
図星を突かれてリリアナに泣き付いた。
マリティアさん、謹慎中だったんかい。
「………マリティア様。私に泣き付かれましても」
「マリティア、リリアナは合理主義だから無意味だぞ」
「マリティア様、今度は何をしたんです」
「フォールトの手伝いをしたらとばっちりを受けたのよ」
「勝手にしたんだろう。知らないよ」
王太子殿下は何を手伝わせたの。
リリアナとカラリエさんは呆れたようにため息をついている。
「あ、そうよリリアナ! あなたこれどうするのよ」
「それは第一様に『何もするな』と厳命されています。それと、勝手に見るのは止めた方が良いと言いましたよね」
「それどころじゃないでしょう!」
「マリティア様。何度も言いますが、私は綺麗ではないんです。必要であればあなたでも切ります」
「………っ。分かっ、たわ」
リリアナは笑っているけれど、マリティアさんたちの顔色が悪くなった。マリティアさんは縮こまり、カラリエさんの方へささっと移動する。
「リリアナ、マリティアにそっちの耐性はない」
「失念してました」
「………悪女とはよく言うものだな。これは魔女の類いだろう」
リリアナ、どこで悪女って呼ばれてるの。
「呼び方は何でも良いですよ。どうせ私のこと知って言ってる人なんてほんの一握りなんですから」
「そうでもないだろう。私たちは、お前がどれだけ頑張っているか知っているしな」
「………おねえ様は口が上手いからやりづらいです」
リリアナはカラリエさんにポンポン、と頭を軽く叩かれ、むすっとしている。
「私は事実しか言わんよ。お前が誰よりも生きづらいのも、全て捨ててしまえば誰よりも生きやすいだろうことも、私たちは知ってる。お前にあったはずの道を塞いだのは、無責任な大人たちだ。捨てたいのならば捨ててしまえ。魔術師たちも、お前の言うことならば無理強いはしない。お前を縛ろうなどと、人間にはおこがましいことなんだ」
「カラリエ、喋り過ぎだ。魔術師がまだ監視してる可能性がある」
「高い地位とは面倒だな、リリアナもお前も」
ポツリと呟いたカラリエさんの言葉は幸か不幸か、誰にも聞こえなかった。
第二魔術師は、第一から第四の上位魔術師と呼ばれる、すごい力を持ってる人たちの中だと一番話がしやすいです。だからと言って、通じるかはそのとき次第なので分かりません。一応、大神官の地位にもついていますが、あちこち神殿を回ったり、魔塔に何年も籠って研究してたりしてます。別の国の偉いところの人です(そこが出てくるかは不明)。