129.契約
「と言うか、こういうのって話しても」
「問題ない。ハゼルトは基本何しても良いからな」
「そうそう。カラリエは死んでも口割らないの知ってるし」
「お再従兄様は言わないの知ってますし、クロフィム君は言ってもたぶん信じてもらえないので」
「君らさえ何も言わなきゃバレないよ」
クロフィムの信用が無さすぎるの可哀想なんですけど。
「ユラエスは」
「知ってた。他種族と聞いていたし、ハゼルトのことをリリアナにちょくちょく聞いてたからね」
「言わないと脅してくるんです……」
「話させるのに有効な手段を取ってるだけだよ」
ユラエスがリリアナの扱い方を理解してきてる。
「ちなみにユラエス君の契約者とかは」
「秘術の継承権を私が持ってるので無理ですね。契約は秘術の中の一つですから」
「その継承権も、任意か力ずくで奪うからしい」
「姪っ子殿から力ずくは無理だろうね。自分たちも無理だし」
メルトさんたちが無理だとリリアナの任意以外なくない?
「まぁ、契約はしてなくてもお兄様は好かれてますから」
「それは分かるわね。ユラエス君、すごいくらい精霊が側にいるもの」
「そうなんですか?」
「メルトはそんなに好かれてないわよ。メルトが一とするなら、あなたは十くらいかしら」
メルトさんのそれは好かれてないどころではないのでは。
精霊が側にいるってことは、ユラエスは契約者が精霊ってことなのかな?
「メルトは精霊に好かれないわね」
「ひねくれてるからだろ」
「良いんだよ。どうせほとんど会うこともないんだから」
「契約してから一度も契約者と会ったことないんですけど」
「千年以上も前に亡くなったあの人と契約が半分できてるリリアナちゃんがおかしいんじゃないかしら」
「再従妹殿は精霊に好かれているのに何故か悪魔との契約だから不思議だね」
なんでその情報を王太子殿下は当然のように知ってるの。
「なぁ、俺よりフォールトの方が知ってるの腹が立つんだが」
「再従妹殿といる時間を長くしたら良いんじゃないか?」
「お再従兄様は人の持ってる書類や本を漁り見て人が話したみたいに言うので信じない方が良いですよ。私が話した内容なんて二割もないです」
「酷いな、再従妹殿」
「今度毒薬の治験体にしますか」
平気で王太子殿下に毒薬飲ませようとしないで。
「今度のロシアンルーレットが何か決まったぞ」
「九十パーセントの確率で動けなくなるんだけど」
「おいフォールトに当たらなかったら俺らただの巻き添えだぞ」
「理不尽」
「お前たちが迂闊な発言したからだろう。自業自得だ」
あぁ、なんか言ってたね。そんなこと。
「…………んで、話中悪いけど、姪っ子殿」
「私帰って良いですか?」
メルトさんの腕に飛んできた青い鳥を見て、リリアナが逃げようとするけど、ゼクトに阻止される。
「姪っ子殿がいないと自分が祝詞読まされるじゃん」
「伯父様に仕事させてください! 本来の持ち主に仕事返します!!」
「めんどいからパス」
「ここ五年近く人に全部投げてる人が何言ってるんです!?」
リリアナは諦めたのか青い鳥を受け取り、魔法を使っている。終わったのか、鳥を飛ばすと、
「………」
「さすがにそれは手伝うよ。カラリエ」
「なんとかしておく」
謎の会話が成り立ってた。