11.古き民の末裔
古き民。それは、死の森で他種族と共存していた一族のことを指す。
今から何万年も前。
死の森は、聖域と呼ばれ古き民と他種族が共存していた。
皆平等であり、それはそれは仲良く支え合って生きていたとか。
しかし、ある日忽然と姿を消したのだ。
森に残ったのは、人の言葉を理解できるか分からない魔物たち。
古き民は姿を消し、その原因は未だ謎とされている。
それが古き民。なんだけど………。
「えぇ。なので、ハゼルトは独自の権力を持ってるんです。伯父様が仕事をしてないのに、貴族として認められてるのもそれです」
しれっと自分の伯父をバカにした。
「『我らが森に住まう者。皆等しく命を与えられ、皆等しく生きている。皆等しく、全てが尊き命である。命を守れ。我らが領地を犯す者。我ら森の民と敵対するか。さすればそれは、我らが主との敵対である』まぁ、こんな感じの伝承が幾つかあります」
命は全て同じであり、全てを大切にするべき。
確かにその通りだね。
「あら、でもそれをユラエスは知らないのよね?」
「お兄様は、シティアルの後継者だからでは? ハゼルトは本来取り入れはしても、出しはしないですから」
うーん。身内だからこそ、伝わるもの。
「それは聞いた。ハゼルトの血は人にとって毒にも薬にもなる。そのため、どれだけ望まれても渡してはならない。だったか」
「はい。祖先が他種族と交わっていた、と言う伝えもあり、ハゼルトは他家とは違い上位種族と渡り合えるとも言われています。それを研究と言い、私利私欲のために使われれば大事です」
この前、先生に頼まれたけど断ったのもそれが理由か。
「取り入れはしても出しはしない、って言うのは?」
「そのままの意味です。ハゼルトは、後継者を作るために婚姻をしますが、嫁婿に出すことはありません。普通は」
はぁ、とリリアナがため息をつく。
「お母様は、伯父様達の反対を押し切ってお父様と婚姻したらしいです。本来出るはずの無い血筋を他家に出せばどうなるかを予想すれば、伯父様たちの考えが正しいですが」
「ハゼルトとシティアルが表立って敵意を出すのは無理だからな」
両方とも、筆頭家。
シティアルは全貴族のまとめ役。ハゼルトは魔法に置いて絶対の力を持つ。
そんな二家が激突すれば…………うん。これ以上はちょっと止めよう。
「先生がリリーちゃんを可愛がってるのも後継者だから?」
「いえ、それは凄い簡単でして」
リリアナは、にこりと笑い、
「私がお父様にもお母様にも似ていないからです」
そう言い放つ。