113.再従兄妹
リリアナ視点です。最後の最後に王太子視点となります。
「本当に二学期することないな」
「だからって人の実験室に来ないでください」
我が物顔で堂々と入ってくるお再従兄様を諌めます。
この人はまったく。
「それで、ここが」
お再従兄様は部屋を見渡し、少し苦い顔をします。
「ここが、再従妹殿……リリアナの実験室かい?」
「……随分久しぶりな呼び方ですね」
「猫被りは疲れるんだ。それに」
にこりと、意地の悪い顔をします。
「女神フローリアが守護する国の王太子が転生者ってのは言えないだろ」
「それを私に言ってる時点でなんですけどねぇ」
お再従兄様は、ご家族にも伝えてないそうですが、転生者なのだそうです。元の種族は悪魔で、神魔大戦と呼ばれる大戦期の方だとか。
「まぁ、フローリアなら許しそうだけど」
「面識が?」
「フローリアはこっちの派閥だったからな。結構仲良かった」
神魔大戦、と言うのだから神と悪魔は相容れないと思われがちですが、実際は種族差別が激しい天界派と魔界派、そして他種族共存を掲げる派閥に分かれていたそうです。お再従兄様は他種族共存派でそこそこ高い地位にいたとか。
「そうだ。聖女、嫌な予感するから気を付けろ」
「………それなんですけど、魔塔で面倒になる前に消すかどうかで審議中なんですよね」
「だろうな。あいつ、神核持ってるぞ」
神核、と言うのは何かを司る神や悪魔が持っている自分の存在を示すモノ同然です。それを、人が持っているのはかなり異常でして。
「あり得ない……」
「あるとすれば、俺みたいに転生して神核を持っていたか」
「あ……」
私の持っていた道具を後ろから取っていきます。
邪魔されるのは一番ムカつくのですが。
「リリアナのお探しの『反逆者』じゃないか?」
「………だとすれば、側に置いて飼いますよ」
最上位種とのゲーム。普通に考えれば自殺行為にも程があるそれは。けれど、悪魔側の話が通じる方との対話で。
「まったく。カトラル………今は別の名だっけか。彼は本当に人間が好きだね。いや、リリアナが特別なのかな?」
「そうですね。ほぼ勝ち目のないゲームに、勝利条件を付けてくれましたから」
とてもふざけたゲーム。内容は私がこの国から追放されるかどうかと言うもの。
追放されれば悪魔側が、追放されなければ神側が私やアイリス様を持つ、と言うはた迷惑なもの。だからこそ、直談判(やり方は内緒です)して追加された条件が、その日までに『反逆者』を見つける、と言うもの。何をどう定義し反逆者なのかなどは教えられませんでしたが、候補は絞れてきてますから。
「カトレア嬢に関しても気になるな。何故、彼女が愛し子なのか」
「あぁ、愛し子なのですね」
「神子ではないよ。保証する。そもそもでだしね」
と、なるとアイリス様も完全に除外しましょう。
「………リリアナ、これ何?」
「呪いの効力を抽出した液体です」
「なんてもの作ってるの……」
なんでそこで引くんですか! 魔塔からの正式な(非公式の)依頼です!
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俺が残念なモノを見る目をすると、抗議してきた。
なんでこの子はこう………曲がってるんだろうか。
「………これが」
カトラルの言ってた、超越者、ね。
さて、後約半年。リリアナ………再従妹殿はどの運命を選ぶのかな。
元七大悪魔として、気になる案件ですわな、これは♪︎
王太子も転生者であることが分かった話でした! 他にも転生者候補いたけれど、一番面白いのは王太子だな、と言うことで彼になりました。
リリアナは初めて聞いたときあまり驚いていません(笑)。元々あまり驚いたりしないのと、ハゼルトがヤバすぎてそれでは驚かなくなってます。
カトラルは第三章ではよくて名前しか出ない………と思います。