109.再従兄妹の小競り合い(じゃれ合い)
「あ、いた。殿下、少しお話が」
始業式から二週間。
放課後にユラエスが教室に来ると、まだ何人かいるため、周りから黄色い声援が聞こえてくる。
筆頭家だし、時期公爵だし、顔も良いから人気だよね。
「来年の生徒会の件で」
「………それ、普通は会長がやることでは?」
「…………今年度の会長は妹の世話を理由にして生徒会にすら顔を出さないので」
だそうですよ、リリアナ。
「その顔を出さない会長からです。『さっさと降ろせ』だそうですよ」
「任期があるから無理でしょ」
「大丈夫です。伯父様たちって言う前例がいます」
たち………え、たち?
「伯父様と第四様、後はおばあ様………と言うか、ハゼルトは生徒会に入れられたら基本的に後輩たちに丸投げして任期待たずに終わりますし、なんなら面倒だと言って途中で学院を止める方もいます」
やりたい放題だね、ハゼルト。
「伯父上たちは」
「陛下たちに三ヶ月で投げたとか」
「ゼクトさんはハゼルトじゃないからね?」
「婿養子……」
「それはリリアナが殿下と婚約した時点で破綻してるから」
まず養子になってないよ。
「好き勝手はしてるよね」
「後ろにハゼルトいますしね」
「ゼクト君とリリーちゃんは互いに甘いし」
話が脱線してワイワイと盛り上がっていると、
「再従妹殿、少し良いかい?」
王太子殿下が来た。珍しい……。
「え、嫌な予感しかしないからやなんですが」
「当たりだね。てことで、今年もだ」
「お兄様ー、代わりに行ってもらえません?」
「一緒になら行ける」
大半を置いてきぼりにして話がされる。
「あのですね。今年も言わせてもらいますが、私は魔術師じゃないんです。これでも人形師って肩書きもあるんです。なんで私が祝詞を読む羽目になるんですか」
「魔術師が読まないから血縁の再従妹殿がやる羽目になってる」
「お兄様」
無言で否定。
「あの人たち私に全部投げるくせにお祭りは行くんですけど」
「侯爵はほら。恋人との時間がね?」
へぇ、そうな…………は!?
「先生の恋人?!」
「お再従兄様、それ一応秘密です」
「あぁ、失言だったね」
「待て、俺も初耳なんだが?」
「黙ってろって言われたからね」
思いっきり言っちゃってるんですが。しかもユラエス知らなかったんかい。
「アディッサ様は特殊な方ですし」
「再従妹殿は種を関係無しに自分に懐くものが好きなだけだろう…………剣を出すな剣を」
「何のことですかね?」
この二人、仲良いの仲悪いの。
「多分、親族の子供だと一番仲良くて一番仲悪いよ」
「矛盾……」
「リリアナが一番懐いてて、フォールトが一番可愛がってる」
「久しぶりに王太子殿下の名前聞いた」
「基本言わないからね」
ユラエスって王太子殿下のこと名前で呼ぶんだ。
「悪い方は?」
「フォールトがリリアナに構いすぎてうざがられてる」
「リリアナは魔法で兄さんとの小競り合いがね」
仲良しがじゃれ合いすぎて喧嘩に発展してるだけか。