102.魔法課題
「…………まぁ、なんとなく理解はできた」
「何故それでここに来たかは謎だが」
えー、はい。あのですねぇ。夏休み後半、てか後一週間で夏休み終わります。それで、まだ魔法実技の課題がですね、残ってまして。それを助けてもらうために神殿に来たんです。
「自分、別に魔法専攻じゃないんだけど」
「他者に教えられる技術はないぞ」
「メルトさんが魔法専攻じゃないのはおかしくない?」
あなた、魔術師ですよね?
「自分とシエルは別に学院で教えてもらうことなんてなかったし、基本サボりだったから」
「進路とかも適当そう」
「実際そう。なんなら、自分とシエルは三年の中期で卒業してる」
なんで?
「その時期か。侯爵夫妻の死は」
「そうそう。ムカついてさー、つい殺っちゃったんだよねー、あははー」
何てこと急に言ってるのこの人。え、侯爵夫妻殺したって。え?
「そのせいで姪っ子殿にも迷惑掛けてるしね。ゼロにとっても、今は動き辛いだろうから」
「そのうち、これも取りたいものだ」
ゼロさんは、頭に付いてる? 浮いてる? 輪っかにそれに付いている魔法陣の描かれた布を引っ張る。取れてないけど。
「それ、何なの?」
「身元を隠すためのだ。魔力で誰か判別する奴もいる。それと、力を制御したり本来のモノを見せなくするためのものでもある」
いろいろ大変なんだなぁ。って、違うから。
「魔法教えてぇ」
「一応聞くが、指定は」
「攻撃魔法。アイリスは火属性指定」
あの人、なんでか知らないけど属性指定までしてきたんだよね。殿下やエルヴィスもだったけど。
「なら面倒だから全員それだな。それ以外に指定はないな?」
「ないです」
「お前たち全員ができるとなると…………」
しばらく考え、メルトさんの方を見る。
「………第四、これらができる魔法が分からん」
「知ってた。ゼロが他人に魔法教えられる訳ないもんね」
「酷い言われようだな」
「自分の魔力と他人の魔力の差を無視してもできる魔法教えられるの?」
「これらの魔力量を知らない」
確かにそれ問題かも。魔力量によって使える魔法決まるし。
「八七、一九六、一七四」
「公爵令嬢よりも伯爵令嬢と平民の方が強いとはどうしたものか」
私たちの魔力量? え、私が一番多いの? てか、どうやって数値化したの?
「平民は守護獣がそれだとしても高いな」
「あの、私名前あるんですけど」
「覚える気がないから無視して良いよ。自分も階級でしか呼ばれないし」
これが通常ってこと? 人の名前覚えようよ。
「馴れ合う気のない奴らの名を覚える気などない。どうせ、お前たちも私が誰か分からぬだろう」
「じゃあ、私たちがゼロちゃんの名前当てられたら名前で呼んでくれる?」
ティアナ、何言ってるの。当てられる自信あるの?
「………余興にはなるか。別に良いぞ」
てことで、魔法課題をしながら、ゼロさんの名前当てゲームが始まった。